歓迎される魔王様
山奥のロイデン村。
魔王様は先行する魔王軍に合流。
ボグ―!
道中で魔王様に逆らった悪党を退治。
気分よくロイド山まで。
「いかがなされましたか魔王様? 」
「疲れたわ。まったくイライラする。本当にイライラするな」
「おい魔王様がご機嫌斜めだぞ」
「もうお年だからな。疲れてるんだろう」
「どおりで最近怒りっぽい訳だ」
コソコソと悪口を言う情けない奴ら。使えない上に余計なお喋りばかり。
これは魔王軍には置いてはおけない。制裁の対象だな。
最近この魔王様が甘いだとかふざけたことを抜かす生意気な連中が増えた。
確かに以前よりは人間性が増しただろうよ。だって元々は人間だから。
「どうしたお前たち? 例の実は見つかったのか? 」
「いえまだです。申し訳ありません。お許しください魔王様」
そうやって口だけでいつまでも魔王様を舐めてると酷い目に遭う。
もっと恐れて敬えばこんなことにはならなかったのにな。
悪いがこれも運命だと思って諦めてくれ。
「消えろ! 目障りだ! 」
どうも最近元々の魔王様に影響されて我慢ができないと言うか厳しくなっている。
「うわああ! 魔王様! 」
魔王様を舐めるとこう言うことになる。
身をもって体験しただろうからもう次はないと思いたい。
「いいかお前ら! この魔王様を舐めていると大変な目に遭うぞ。
気を引き締めて取り掛かるがいい! 」
奴らはロイド山を越えどこか遠いところへ飛ばされてしまった。
もう戻って来ることはないだろう。
ついに山奥のロイデン村へ到着。
「いらっしゃいませ。我がロイデン村へようこそ」
我々の存在を知ってか知らずか歓迎を受ける。
どう言うことだ? 何かの手違い?
魔王様なんだぞ? 魔王軍なのだぞ? モンスターはそれはそれは怖い化け物。
それなのにこいつらと来たら村を挙げて大歓迎。
魔王様としては嬉しくないはずがない。うん気分がいい。
モンスターの失態は許されることではないがここは切り替えるとしよう。
「ボグー! 」
「魔王様…… 」
一応は歓迎を込めて踊りの宴が催される。
観光客には歓迎の儀を披露するそう。
「それでどのようなご要件ですかな? 」
ロイデン村の村長は髭を蓄えた人のよさそうな爺さん。
うん。これなら簡単に手懐けるに違いない。
どうであれこんな山奥の村に来るのは久しぶりだと大喜び。
丁度いい。魔王軍だけでは足りない。
不老不死の実探しに協力してもらおうかな。
挨拶を終えさっそく人探しの協力を求める。
「あなたは何をする人? 」
小さな子供を抱えた女が心配そうに聞く。
大きさや見た目に喋り方などに違和感を感じたのだろう。
ふふふ…… 当然の反応だろうな。恐怖せよ。
魔王様を舐めるな。恐れ戦き崇めよ。それが魔王様の力。
人間ごときにこの魔王様が屈するはずがない。
ははは! あははは!
おっとつい興奮してしまう。
「失礼。我々はこの世界を支配しようとする魔王様だ。
何か文句があるならいつでもどうぞ」
自己紹介を済ます。まあこれくらいはいいだろう。少しぐらい余裕をかますのは。
「へへい! それは恐れ多いことです」
ふふふ…… 馬鹿め。ヒーローか何かと勘違いしているのか?
ただこの世界を恐怖に陥れる者に過ぎないのだが。
「ほれ皆来なさいな」
そう言うとすぐに元気な子供たちが駆けてくる。
「よろしくねおじさん」
「いやそうじゃなくて…… 」
ダメだ話にならない。困ったな。
副村長宅にお邪魔することに。
しかし例の男にしろ不老不死の実にしろ聞いたこともないと突っぱねる。
「待ってくれ! この際不老不死の実は置いておく。
それで不審な人物とかおかしな奴とかは見なかったか?
最近急に変わったとか性格がガラッと変わった奴が周りにいなかったか? 」
今はどうしてもあの男を探さなくてはならない。
そうしなければここはもちろんこの世界そのものが終わってしまう。
大変ヘビーな展開。
「おかしな奴? 」
「ああそうだ。この村にもいるんだろう? 」
「悪いが村の者は売れないね」
どことなく片言に聞こえるのは気のせいだろうか?
当然教えられないと突っぱねる。しかしこれは村の存続にも関わること。
ここはいっそのことすべてをありのままに話すべきだろうか?
もう時間もないし。ぐずぐずしていると本当に消滅してしまう。
いやさすがに魔王様ではいくら言ったところで聞きやしないか。
これが勇者ノアやアーノ姫ならな。
仕方ない。違う手で行こう。
「おいふざけるな! 魔王様がお困りになってるだろうが? 」
「うるさい! 言えないものは言えないんだよ」
「この…… 」
手下もロイデン村の者も大人しくはしていない。
しかし誰も心当たり無いのか首を振るばかり。これは一体どいうことだろうか?
まあ今はこれくらいにしておくか。
副村長に宿泊場所を紹介してもらうことに。
その頃すぐ近くのアーノ姫。
「どうだい居心地は? 」
そう魔女が尋ねるがただ眠れるだけでは物足りない。
「それよりも魔王様たちはどうしてる? 」
「それがまだ例の男と接触できてない様子」
小さな村だから簡単だと思ったのに意外にも難しい。
「どうしよう? 」
「焦るのはよくありません。さあここはじっくり行きましょう。
魔女に諭されるが…… 待てと言っても時間が残されていない。
「ねえこちらも違うことをしようか」
即ち不老不死の実探し。
この村あるいはこの山のどこかにあると言われてる。
結局魔女のお手伝いをすることに。
続く




