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追跡

ロイド山。

アーノ姫追跡中。


ゆっくり歩き相手の動きをよく見る。

これらのことは前回までの追跡劇で自然と身に付いたもの。

絶対に近づき過ぎない。いきなり振り返られたらお終いですからね。

今のところこちらに気づいてる様子は見られませんがいつどうなることか。


緊張するなあ…… 

前を行くモンスターの後をこっそり。

九合目を超えついにロイド山の頂上へとたどり着いた。

ただここで気を抜いて叫んだり騒げばたちまち見つかってしまう。

だから気づかれないように慎重に。


前を行くモンスターがちょっとでも止まったり不審な行動を取れば隠れる。

当然頂上付近には隠れるようなところはありませんがそれでも伏せればどうにか。

魔女の協力を得られればもう少しマシな方法が見つかるんでしょうけど。

消極的な魔女は当てにできずに我慢するしかない。


「ああん? 何か視線を感じるんだよな」

そう言っていきなり振り向くものだから逃げようも隠れようもない。

そんな時はもう伏せるしかない。

こんな格好は恥ずかしくて民には見せられません。

でも伏せるのが一番効果的。


「へへへ…… やっぱり気のせいじゃないか」

「おかしいな。まあいいや」

どうやら追っ手はまだ気づいてない。

でもなぜか後ろを気にする素振り。

危険な展開。もう少しじっとしてましょう。



その頃宮殿近く。

我々は宮殿警護隊ではなくただの国王により招集された魔王討伐隊。

だから国王の許しさえもらえれば比較的自由に行動できる。

とは言えなかなか集団で抜け出せるものではない。

今回は偶然が重なった部分が大きくうまく行った。


「ではそろそろ馬車にでも乗るかな」

そう言うとなぜか嫌な顔をする者が。

「隊長。どちらへ向かうおつもりで? 」

「どこって…… どうせ暇だから遠出しようかなと」

この勇者の体になってから村と宮殿とメイドの田舎と洞窟ぐらいで…… 

そう言えば結構出掛けたな。これからどこへ行くかは多数決でも採るかな。


「ではどこかへ行きたい者は? 多数決で選ぼうと思う」

馬車に乗って寒い地方でも灼熱地獄でも。どこへでも。

一日ぐらいゆっくりしたっていい。一泊ぐらいしたっていい。

今は戦いのことを忘れて楽しもう。


「そうだ。故郷に帰ると言うのはどうでしょう? 」

多数決を採るが三名のみ。

「どうやら却下のようだな」


「それでは隊長の田舎にご招待は? 」

適当なことを。それはさすがに無理。

故郷に戻れば皆に紹介しなければならない。

だがこの世界に来て一か月も経過してない。それではほとんど何も分からない。

滞在したのは出発の日ぐらいなものだ。


「それは無理だな。大人数で押しかけても迷惑だろう?

それに村は遠い。今からではとても今日中に着かない。

どうにか適当な言い訳が思いついた。

「よし他には? 」

「そうだ。皆で釣りをするのはどうでしょう? 」

釣り好きの男が提案。そこに漁師の息子が賛同する。

「お前らなあ…… もっと派手なものがいいのでは? 」

「だったら占いハウスで…… 」

「却下! 」

ブシュ―が有名でよく当たる占い師を知ってるとかで乗り気。

ただ賛同者は一名だけ。

自分としてもさすがに占いはいいや。面倒なだけだからな。


「あの…… 狩りなどいかがでしょう? 」

うおおお!

全員の目の色が変わる。

「いやしかし猟銃などどこにもないし…… 」

第一危ないし釣りと大差ないだろう? 

暗くなってからでは難易度も危険度も大幅に上昇する。

それが分からない奴らではないと信じたいが。

「それでしたら宮殿のどこかにあるかと」

うわ…… 乗り気だ。これは乗り気だぞ。


「待ってくれ皆! 狩りと言ってもモンスター狩りだ」

とんでもないことを言いだす。

さすがにそんな危険なことはさせられない。多数決を採るまでもなく却下。

でもそろそろどうするか決めないと一日中ただ散歩することになってしまう。

うーん。これは決めきれないぞ。もうこの際何でもいいんだけどな。


「隊長! 広場に行って祭りを見に行きませんか」

「祭り? やってたのか? 」

「はい。三日前からこの近くの広場で行われる地域のお祭りです」

ようやく面白そうなのに当たった。

これくらいがちょうどいいな。ブシュ―もいることだしな。


「よしでは広場に行こう! 」

「おう! 」

こうして暇つぶしに広場へ行くことになった。


「さあ行きましょう」

そう言って腕を絡める幼馴染。何て大胆な。

「おい! やめろって! 」

「もう恥ずかしがらないの」

無理やりくっついてくる困った幼馴染。これでは目立ってしょうがない。

まあいいか。どうせ今ぐらいは……



その頃ロイデン村。

魔王軍の後を付け山奥のロイデン村までやって来ました。

さあ彼らの動きを観察することにしましょうか。


「ほらこっちに! 」

魔女に無理やり腕を掴まれて引っ張られていく。

「きゃあ! ちょっと…… 」

「いいからここは従ってください」

必死の魔女。何かあるに違いない。


魔王軍たちの追跡を断念して村の外れにある一軒家まで連れて来られた。

「もしかして初めてではないの? 」

魔女で元々は妖精だったと適当なことを言うお助けキャラ。

それが暴走して新たな人格が生まれた。

どうしてこうなったかこの際どうでもいい。

ただ彼女がボクを守ってくれるかどうかに掛かってる。


「ボケっとしない! 後方を確認しなかったんですか? 」

「後方ってまさか? 」

「そうですよ。もう間もなく魔王様がやってきます。もし出会いでもしたら…… 」

そう魔王様と出会えば世界そのものが崩壊してしまう。

嬉しいとか悲しいとか怖いとかではない。

ただ自動的に世界が終ってしまう。

どうやら消滅の危機を逃れたらしい。

ただ依然その脅威にさらされているが。


ボクは魔王軍の後を付けるのに必死で後ろまで気にしていなかった。

後ろを疎かにするなど情けない。ですが姫様ですからこれも仕方ないこと。

魔女がお供してくれたことを素直に感謝しましょう。


道のりがほぼ一つしかないのなら魔王は同じ道を通ってくるはずだ。

「それでここって訳ね? 」

「はい。姫には悪いですが緊急事態ですので」

こうして村から外れた廃屋と化した一軒家に。

さあひとまずこれからのことをゆっくり考えるとしましょうか。


                続く

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