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『紅』色に染まる空

夕暮れ時。

勇者・ノアのターン。

特に何をすることもなく宮殿でのんびり過ごす。

国王との約束である姫との再会は機会を見て秘密裏に。

今は姫も魔王様もお出かけ中だから暇でしょうがない。

旅行に出かけるわけにも行かない。当然ロイデン村訪問は危険が伴うからな。

ただのんびりボケーっとしてるだけ。それはそれで退屈で仕方がない。

忙し過ぎるのも嫌だけど退屈過ぎるのも体にはよくない。

どちらであれ程度が過ぎれば嫌になるものか。


「ああ隊長。そこにいらしたんですか? 皆で出かけることになったんですが」

「今からか? それは聞いてないが…… 」

「隊長もいかがですか? ここにいてもどうせ敵は向かってこない。

逆に我々が下手に手を出すと悪化するだけ。もちろん無理にとは」

ここで隊長のボクが行かねば奴らは暴走し人様に迷惑を掛けるだろう。

何と言ってもこいつらは勇者・ノアと同様ただの田舎者だからな。

弾けると後が大変。勝手な行動はさせられない。


「どうします隊長? 」

「ああ支度が終わり次第行くよ」

まさか呑気にロイド山にハイキングに行くつもりではないだろうな? 

目的地を聞かずにいい加減に返事してしまった。

これでロイド山だったらシャレにならない。


我々魔王討伐隊は国王直々に招集された部隊。

防衛部隊ではないので宮殿内に留まる必要がない。

ただ魔王軍が動きを見せたら待機は命じられるだろうが。

留守番のクマルでは勝手にこけてはくれても攻撃してくることはない。

魔王様がいないのを幸いにと好き勝手に振る舞っていそう。

そうと言うだけで想像でしかないが。

ではそろそろブシュ―を探すとしますか。


「おーい! どこだ? 」

さすがに謁見の間にはいないだろう。

そうすると恐らく…… ほらいた。中庭で夕陽を眺めている。

幼馴染はもうこの生活に飽きてしまったらしい。

だったら帰ればいいのに留まるんだよな。

別れ話がこじれ現在ブシュ―とは微妙な関係に。


「どうした? 出掛けるがお前はどうする? 」

「あなた…… この夕日を見て。紅色に染まって素敵」

どうやらあれだけはっきり言われたのに堪えてないらしい。

どう言う精神構造してるんだ? まあこちらとしては助かるんだが。

「それを言うなら茜色に染まる空だろ。うん? どれどれ」

二人で同じ空を見上げる。


これは関係修復のチャンス? と言っても元々ボクの我がままだからな。

どうせもう少しでこの世界は消滅する。もし阻止できてもその時ボクはいない。

消えたかアーノ姫と結ばれたかのどちらかだろう。

うーん。不吉な空模様。まるでボクたちの未来を暗示しているかのよう。


「村に帰ろうよ? 村に帰ってのんびり二人で暮らしましょう」

そう言って頬を紅く染める。ボクまで巻き添えにするつもりらしい。

「ボクはもう…… その気はない。だから一人で帰ってくれないか」

薄情に思われるかもしれないがこれしかないと思っている。

ボクにつき合ったところでいいことは一つもない。


「もう! 分かったわ。さあ行きましょう」

こうして何だかよく分からないが皆で出かけることに。



その頃魔王様は。

「よしここからは歩きだな」

何も魔王様直々に出向くこともないのだが奴らには任せておけない。

不老不死の実を見つけるのがこの旅の目標。

目指すは山奥のロイデン村。そこにいるもう一人のイレギュラーな存在。

女神様は愚か者と呼んでいたな。

その愚か者をどうにかして排除しなければならない。

まあ村は大きくないのだからすぐに見つかるだろう。

後は姫と鉢合わせしないこと。

それだけ気をつけていればいい。造作もないことだ。


「おい疲れた! 何とかしろ! 」

「またですか? そう言われましても魔王様に翼がないのでどうにもなりません」

同行のモンスターは呆れた表情。

「まさかこの魔王様が間違ってるとでも? 」

こういう時は魔王様だと楽でいい。

理不尽に叱りつけてストレス解消にもなるからな。

「早くしろ! 魔王様は気が短いのを知ってるだろう? 」

無茶を言ってみる。理不尽と無茶で手下を追い詰めるのが魔王様の真骨頂。

悪趣味だが止められない。


「ですが歩いて頂かないと」

それでも無理なものは無理だと突っぱねる手下。

そんなことは重々承知の上で無理難題を言っているだけ。

どうやら他に手はないらしい。これくらいにしてやろう。

やり過ぎればいくら従順なしもべでも機嫌を損ねるからな。

魔王様とは言え守るべき一線はある。

過去にはいろいろ酷いことをしたはずだ。生憎覚えてないが。

今こそ反省を…… ははは! するはずがなかろう!


「分かった。よしだったらこの魔王様をどうにか運んでくれ」

ただの登山ではなく魔王様を連れての山登り。苦労が絶えない。

「よし後ろのお前! この魔王様を抱き抱える栄誉を与える」

一匹のモンスターにすべてを負担させる。


「しかし魔王様…… 」

何か文句があるらしい。とても信じられないが反論するようだ。

「いいから文句を言わずに運べ! 魔王様は疲れている」

できるできないは聞いてない。ただ頷くだけでいい。簡単ではないか?

「ですが魔王様。恐れながら魔王様を抱えての移動は厳しいかと」

どうにか大変だと分かってもらおうと必死だがそうはさせない。


「いいから黙って運べ! もう我慢の限界だ! 」

駄々をこねる。情けないことにこれでは魔王様失格では?

「とは言え重すぎて抱き抱えては浮上できませんよ」

「誰が泣き言を言えと? それでもこの魔王軍の一員か? 」

追い詰める。そしてどんどん嫌がることを。

「分かりました。空中は諦めて仰せの通りに」


こうして快適な登山旅を満喫する。


               続く

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