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修羅場

引き続き魔王様のターン。

女神様の命により危険を承知でロイデン村へ向かうことに。 

今まで姫たちに遭遇しないよう細心の注意を払ってたのになぜこんなことに?

自ら危険な方へ飛び込もうとする厄介な癖がある。

すべて分かった上であえて挑戦する。それが魔王様の生き様。

魔王様はそれくらい派手でワイルドでなければならない。

隠れたり籠っていては魔王様のプライドに傷がつく。


何だかんだ言ってこれもすべて女神様の命令。

魔王様に姿を変えても思いは変わらない。

何としても姫と出会わずにミッションをクリアする。

魔王様と姫様とは言え決して出会ってはならない二人。

それが運命。運命と分かっていながらどこかで反抗しようとする。


今難しい立ち場に置かれている。

女神様の言う運命の日まで何としても堪えねば。

会えるその時を思い描いて今は我慢だ。

漠然と会ったり交わったりと言うがどこまで近づけるかは気になるところ。


ふふふ…… 考えれば魔王様が世界の消滅に立ち向かうなどおかしな話だ。

ただそれも運命の日が来るまでの辛抱。

その日になれば本来の魔王様の力を存分に見せつけることになるだろう。

もう間もなく。このイカレタ世界の消滅の日は近い。


あれ? いつの間にか魔王様本来の思考となった自分がいる。

どうしちまったんだろう? これはとても恐ろしいことだ。

己を失いつつある。



宮殿。

行く…… でも行けば逃れられない。巻き込まれてしまう。

行かない…… ほぼ主人公のボクが行かなくてどうする?

どっちなんだ? どっちを選択すればいい?


「もうさっきからブツブツ。そんなに私と一緒に居るのが嫌な訳? 」

幼馴染だと言うのに俺のことを何も理解してない。

もう本当に嫌になるぜ。なぜ分かってくれない?


ボクも同じか。

何が好きか? 村でどんな生活をしてきたか?

それさえ知らない。ボクは彼女に関して何も知らない。

それは当然のことでボクと彼女は会って間もない。

幼馴染と言ってるが彼女のことを知らなくて当たり前。


そもそも住む世界が違う。

彼女はこのイカレタ異世界の住人で俺は現実世界からやって来たおかしな奴。

もちろんイカレタ世界だからそこまでの凝った設定ではないだろうが。

だが村の幼馴染はボクには手に余る。

できるなら村に帰したいが彼女は言うことを聞かない。


「どうしたの? ほら難しい顔をしないで散歩を楽しみましょう。

あなたが大出世して隊長にまでなって幼馴染として鼻が高い。

村もあなたを勇者として称えている」

うーん。それはとても光栄なことだがまだボクはそれと言った実績を残してない。

剣の腕を見込まれたのでも統率力を評価されたのでもない。

ただ確実な情報を持っていたからに過ぎない。


「もうここまで来れば誰もいないでしょう」

「どうしたんだ? 様子がおかしいぞブシュ―? 」

「もうまだそんなこと言ってるのあなた? 」

笑ったと思ったらいきなり抱き着いてくる。

うわ興奮すると自動的に変化するってのに。

あれ? おかしいぞ変化がない。これは一体どうなっている?

「どうしたの? いつもあんなに恥ずかしがってるのに」

彼女もどことなく気づき始めている。

疑いが核心に変わる前に何とか手を打たなければ。


「おい何をする? 苦しいだろ! 」

突き放す。

非情な人間を演じる。冷酷に見えたに違ない。

さあこれ以上は危険だ。

「ボクは国王様に用があるから戻るよ」

「もう意気地なしなんだから。かわいい…… 」

からかい始める幼馴染。

「ホラ行きますよ旦那様」

そう言って馴れ馴れしく腕を掴んでくる。

あーあどうしていつもこうなるんだろう?


「ブシュ―。ボクはもう君を愛せない…… 」

彼女を傷つけたくはなかったがはっきり言おう。

「まさか別れるつもり? 」

ブシュ―は驚いて涙を流そうとする。でもなかなか出ないので睨むことに。

「だってボクたち相性がよくない。だからもう別れよう」

うわ…… 言ってしまった。ついに禁断のワードを。


「ふざけんな! 」

そう言って思いっきり頬を叩く。

そうこれでいい。これで…… ヒリヒリするなもう。

「別れない! 絶対別れない! 」

まずい。これはとんでもない修羅場になった。どうしたらいい?

そもそもボクたち付き合ってない。だから本来別れるも何もない。

でもブシュ―は聞き分けが悪いからはっきり言葉にしないと。


どのみちもう間もなく運命が決する。そうなったらブシュ―とは別れることに。

ちょっと早いがこれもけじめ。ズルズルと関係を引きずるのはお互い不幸なだけ。

いつの間にか別れ話となったが後悔してない。

ボクにはアーノ姫がいる。辛くはない。



その頃姫様一行は。

ロイド山登山中。

「疲れた…… 」

「ほらわがままを言わずに。もう少しで頂上が見えるから」

さっきからもう少しもう少しと言うけれどちっとも進んだ気がしない。

登りだからか足が進んでいかない。

そもそも姫が登山などしますか? してもハイキングでしょう。

これは本格的な山登り。

ガラスの靴が重くて重くて足が動かない。

泥がついて真っ白に輝いていた靴が見るも無残。


「本当にもうダメ。ここからは一歩だって歩けない」

疲れと暑さとのどの渇きで己を失う。

「お願い! あなたは優秀な魔女でしょう? 」

このただの杖以外のお助けアイテムがあれば。

「しかし姫…… 」

「お願い! この通り! 」

頭を下げる。

「もうそこまで言うなら。しょうがないねえ」

ため息を吐いて取り出す。

まったくどれだけ粘ればいいのでしょうか?

魔女は渋々とっておきの品を用意する。

何だか大したものではない気がする。


「どうだい? これで快適でしょう? 」

「もう! 」

魔女は満足らしいがこれでは後で疲れるだけ。

もっと楽なものがよかったな……

でも文句は言ってられないもんな。


疲れ知らずでスイスイ山を登っていく。

九合目に差し掛かったところで何かが迫って来る。

鳥? 違う!

もっと大きなもの。

翼を広げてやって来たのはまさかのモンスター?


                  続く

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