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逃避行

 オープンしたばかりの喫茶店に突如襲来する辞めたはずの戦隊メンバー。

逃げても逃げてもついてくるメンバーから逃れるためにグリーンが選んだ逃亡先は…?

 やっと始められると思ったスローライフが一瞬にして崩れ去る。オープンして3日目。開店と同時に元メンバー全員がやってきた…。


 開口一番レッドが話しかけてきた。

 「なんだ、水くさいなグリーン。喫茶店をやるなら、声をかけてくれれば良いのに!」

 「……いやぁ、ついうっかりしてたよ…。」

 (なぜバレた?しかしこいつ相変わらずウザいな…。)


 美人だけど性格が悪すぎて全然彼氏ができないピンク姉さんもレッドの意見に賛同する。

 「そうよ!グリーンはただでさえ、引っ込み思案で商売っ気がないんだから。私たちがいないと何もできないんだから、遠慮なんかしちゃダメよ!メッ!!」

 (なぜバレた?それと、何抜かしてんだ、このアマ…。)


 ブラックも不気味な笑みを浮かべながら、話しかけてきた。

 「し、新商品開発はお任せあれ…ヒヒヒ。」

 (なぜバレた?こいつ、キモっ!)


 ブルーは既に勝手にコーヒーを入れて飲み出している。


 「おい、キッチンに勝手に入るな!」


 「どうせ誰も居ないんだから良いじゃん。」


 (なぜ、バレた?こいつは通報しよう……通報?ま、まさか!?)


 グリーンは、司令に電話をかけた。すると司令から突きつけられた事実にグリーンは愕然とした。

 「すまない、グリーン。じ、実は、お前が戦隊を辞めて、3日で暇を持て余した連中のせいで、職員の8割が辞表を提出したんだ…。施設の45%は損壊し、他国との紛争問題が既に18件発生しているんだ…。かく言う私も昨日、重度の胃潰瘍で吐血し、緊急搬送されて、今は病院のベッドの上だ。あいつら一体何なんだ…。」


 「マジかよ…。」


 「この事態を受け、日本ヒーロー連盟は本日付けで、あの怪物達の管理をグリーン君に一任することを全会一致で可決した。頼む!もはや奴らを止められるのは、君しかいないんだ。」

 「まるでラスボスですね…。」

 あまりの惨状に呆れるグリーン。


 「か、金ならいくらでも払う!ほしい額を言ってくれ、その額を払うから!……ね、た、頼むよぉ~。」


 グリーンが文句を言っていると、司令は今閃きました、みたいなテンションで勝手に話を進めだした。

 「そ、そういえば、そっちの方に環境破壊する悪徳企業がいたんだった。結構武装しているみたいだし…もともとは別の戦隊にやらせようと思ってたんだけど、なんか手強そうだしなぁ-。そうだ!それを君たちで倒してよ!半年もののストーリーにしようと思ってたんだけど、急な話で大変だろうから、一年かけてやっていいから…。いいんじゃない?自然を守るエコロジーヒーロー!主役はもちろん、グリーン君だ!あははっ…頼んだよー!」


ブチッ


 なんと新シーズンが勝手にスタートした。


(あー、お人好しの自分が嫌になる…。)


 その後、今度こそ絶対に辞めることを条件に環境破壊をする悪徳企業と戦うことを了承してしまう。もちろん主役はレッドだ。


 (レッドが主役を譲るわけがないし、別に主役やりたくないし、というか戦隊やりたくないから、どうでも良いんだけど…あー、みんな嫌いだ!!)


 そして一年の月日が過ぎた……


 …色々あったが、しっかり一年で終わらせた…。


「今度こそ辞める!」


 しかし当然、メンバーは森の喫茶店に居座っている…。でも、そんなのは織り込み済みだ。グリーンは、本部との打ち合わせがあるといい、こっそり抜け出し、いざ海外へ。


 抜かりはない。何故ならこの日のために数ヶ月かけて、逃亡計画を立てていたのだ。行き先は、絶対にバレないように今度は秘境にした。


 そしてアマゾンの奥地で再び喫茶店を作った。メンバーから逃げることだけを考えすぎた…確実に未開の地だが、それでもいい。それに連盟の主要スポンサーは、日本のテレビ局だ。最近、予算が厳しいらしいし、海外まではやってこれないだろう…。


 今度こそ、ようやく夢のスローライフを始めるんだ!!


「しかし、こんなところに一体誰がコーヒーを飲みに来るんだろうか…。」


 ……


 いた…


 再びメンバー襲来。オープンして僅か15分後だ。


 なぜバレた…?


 グリーンが訝しんでいると、ブラックが笑顔で教えてくれた。

 「なんか、逃げたそうにしてたから、発信機つけておいたよ。」シラッと言った。相変わらず犯罪行為をしてくれるいかれっぷり。

(ははっ、ブラックは変わらないなぁ、って何和んでんだ、俺!…クソ!この馬鹿どもが発信機なんて高度なもの扱えると思ってなかった…不覚。)


 グリーンが脳内ボケツッコミしていると、レッドが話しかけてきた。

「感謝してくれよ!こんな秘境を訪れる奴らなんて、俺たちしかいないぜ!!なあ、親友!!ひょっとして俺たちへのサプライズかぁ?」

 レッドと喋っていたら、蕁麻疹が出始めた…

 「違うわよ…。グリーンは私たちとグローバルな鬼ごっこがしたかっただけよ…。ほんっといつまで経っても幼稚なんだから!!今回だけだからね!!プンプン」

 (プンプンって、ピンク姉さん、あなたこの中で一番年上ですよ…。)


 「そうだぞ、グリーン!司令も心配してたぞ。『あいつ疲れているみたいだから、お前達頼んだぞ!』ってな。部下思いの良い上司を持ったな!もちろん俺たちもだけどなっ!はははっ!あ、これ司令からの指示書だぞ。」


 (司令をヴィラン認定しよう…。)

 指示書によると、次のヴィランは、アマゾンの悪の古代帝国らしい…。何とか交渉して、新シーズンは半年にして貰った。全く信用はしていないが、今回で最後だ、と約束もしてきた。



 そして新シーズンが強制的にスタートした。大手のネット配信サービスと契約したことで、今回の海外シリーズ第1弾「脅威!アマゾン古代帝国編」が始まったらしい。おのれグローバル企業!!

 (シリーズ第1弾?司令の野郎、続ける気だな…クソッ!)


 この戦隊は、一人一人の戦闘能力がチート級なので、本気を出してしまうと、一日でどんな組織でも壊滅させることが出来る。しかし番組の関係で、ダラダラと半年、一年と戦い続けているのである。

 しかし今回はアマゾンで良かった。連中は観光気分全開で南米を楽しんでいる。(せいぜい楽しんでおけ!お陰でこっちは研究に集中できる。ふふふっ…)


……


 そして半年後、敵の本拠地である古代遺跡をラスボスと一緒に大爆発させて、「脅威!アマゾン古代帝国編」は無事終了した。それと同時にグリーンの次なる逃亡準備も完了したのである。


 他のメンバーが南米旅行を満喫している間、グリーンは、次の逃亡の準備をしていた。


 次はどこに逃げようか…色々と考えた。

① 南極。あいつら飛べるから、ダメだ。

② 南の無人島。喫茶店開いても客がいないし、恐らく連中の衛星でバレるからダメだ。

③ 宇宙。下手すると宇宙人とか出てきて、宇宙戦争になりかねない。星が一杯あるから、キリが無いからダメだ…。


 この世界にもはや連中から逃げる術はないのか…。そう絶望している時、昔よく観た主人公が異世界でスローライフを満喫するアニメのことを思い出した。


 (そうだ!異世界だ!異世界ならさすがのあいつらも着いてはこれないだろう!あの深夜アニメのように、異世界でスローライフを満喫するんだ!)


 科学者でもあるグリーンは、天才的頭脳とメンバーから離れたい強い思いで、半年間、寝食を忘れ、研究を続けた。そしてついに異世界転移装置を発明した!

 異世界転移は数回の実験で成功。送ったネズミも生きたまま帰還した。だが、帰還のためのエネルギー消費が膨大すぎるため、人間の大きさを転移させることはできない。つまり片道切符しか作れないということだ。でも迷いは一切ない。

 (あいつらとはもう二度とごめんだ!特に司令なんてこの前、週刊誌にオペレーターと不倫してるところをすっぱ抜かれてたじゃないか!!あんな連中知ったことか!!)


 しかしさすが慎重な性格のグリーン。言葉が通じないと困るので、翻訳マシーンも作った。さらに資産は割と普遍性が高い金に換えた。食料や服もたくさん持った。これで問題なし!


 「異世界にいざ出発!!」


 こうしてグリーンは、スローライフを目指して異世界へ旅立ったのである。

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