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プロローグ
『テナシって何ですか?』
とあるQ&Aサイトに投稿されたクエスチョン。
『投稿してる暇があるならネットで調べれば?』
『兵庫の但馬地方で使われてる方言。ヤリイカって意味です』
『そんなことより、どうして俺はモンナシなのか教えてくれ』
『情報少なすぎ。質問させていただく立場を弁えろ』
寄せられたアンサーは、いずれも的外れで薄っぺらなものばかりだった。
誰もが無料で質問し、自由に回答できるそのサイトには、現実社会と同様に、多種多様な人々が集う。
対処法もまた、現実と変わらない。
余計な言葉に惑わされず、相手にしないこと、だ。
そんな凡庸な言葉の海で異彩を放つ回答に〝ベストアンサー〟のメダルが添えられていた。
『両腕を失くし、笑っている子供の霊のことです』
そのアンサーは唯一無二の光芒を纏い、見る者を引き寄せる磁力を秘めていた。