とあるVtuberのマネージャーの苦難?の日々
ご覧くださりありがとうございます。
こちらは以前投稿した作品のマネージャー視点の話となっており、一応前回のを読んでいなくとも読める様に書いては見ましたが、まだ描き始めたばかりなので誤字脱字や文脈がおかしいとこがあるかもしれませんがご了承ください。
~騒動1日目~
どうも初めまして、私は“堆肥”と申します。
もちろんこれは本名ではありません。
これは某動画配信サイトにて活動している個人勢Vtuberのマネージャーとしての名前です。これが本名であったら、親になんでこんな名前にしたか小一時間……いえ、納得できるまで何度も説明させたうえで説教してその後改名手続きを申請しに行きますね。
世の中キラキラネームなんてのが増えてきてますが、親にもらったその名がどうしても嫌な素直に家庭裁判所にでも行って改名しますね。私の場合はですが。
まぁ、そんな私ですが大絶賛ピンチに陥っています。
正確には私ではなく、私がマネージャーをしているVtuberの“スいカ”なのですが。
どんなピンチかといいますと、配信開始時間になっても配信を始めないんです。
はい、あのお馬鹿はやらかしました。すっぽかしたんです。
せっかくリスナーの皆さんが待機しているのに配信をすっぽかすなんて、配信者としての自覚足りないのでは?と、思ってしまいますね。
以前は風邪でもインフルでも、はてはコロナでも配信を敢行していて、慌ててスいカの家に止めに行ったほどです。もちろん最初は電話でやめるよう言って、それでも聞かないから実力行使でした。
そんなスいカが電話にも出ず、SNSなどのあらゆる連絡手段で連絡を取っても反応が一切なくかれこれ30分ほどOPが流れています。
さすがにリスナーも心配してる人が増えてきているので早急に何とかしたいのですが何も出来ずにいます。
いえ、一つだけあるのですがそれは何と言いますか、その、最終手段なので本来ならやりたくない手段なのです。
ですが、もうそんなことも言っていられないですね。
現在進行形でチャンネル登録者が減り始めており、コメントにも心配するコメントの中にちらほらと非難のコメントが出てきています。
なので、仕方ないですが最終手段を使うしかありません。ひっっっっじょぉぉぉぉおに執りたくない手段ですがもう背に腹は代えられません。
そうして、私こと堆肥はとある装置のスイッチを入れてからヘッドセットを装着してOP画面を切り替え話し始めました。
「どうも、皆さんお待たせして大変申し訳ありません。
普段裏方に徹しているマネージャーの堆肥です」
画面を切り替えそう私が話し始めながら、何かあった時の為にと用意しておいた私の立ち絵を画面に映す操作をした。
『画面が変わった!』『おっ、ようやく始まったか』『事故配信観に来ましたw』『登録者減少乙www』などとさまざまなコメントが流れてきました。その中にはいわゆるアンチと言われるコメントがありましたが、無視します。
こういう輩は反応すると喜び、またより一層奮起するので無視するのが一番です。以前も荒らし行為をしに来る人が居ましたが、リスナーの皆さんがすぐに私に報告してくれたり、通報をする、コメントに一切反応しないなどの行動を誰かがやろうと言う前に各自行動されすぐさま消えていったのを覚えています。
ほんとになんであのお馬鹿のリスナーはこんなに礼儀正しいんでしょうか?しかも何故か多分野に精通してる人が多く、誰かが困ったことになると他のリスナーがアドバイスをすぐにしたり、すぐに調べに行ったりと行動力もあります。
もう一度言いますが、なんであのお馬鹿のリスナーは礼儀正しいんでしょうか。そしてなんて頼りになるんでしょうか。
ほんとに謎です。
と、そんな事よりも今回の事態とかをお話ししないと。あとせっかく来てもらっているのでスいカの代わりと言っては何ですが、配信予定の事を私で申し訳ないけど代行すると言う事を伝えないと。
「えー、実はスいカとですね今連絡が付きません。おそらくスマホの充電をし忘れたか、体調を崩して寝込んで居るかだと思うのですがまぁ、大丈夫だと思います。
なんせ、コロナに罹っていても配信をしようとしたくらいなので心配するだけ損かなと思ってます」
私がそこまで説明するとコメントには『堆肥様じゃー!!』『皆の者崇めよぉ~!!』『ははぁ~』『ハハァー』『ははぁー』『ハハァ―』etcといつもの私がコメントした時の流れが映し出されており、その異様なコメントに対して先ほどまでいたアンチは恐れをなしたのか一切見る事が無くなりました。
これはおそらく、逃げましたね。まぁ、こんな異様な光景を見れば皆さん逃げますね。
え?私ですか?悪い気はしませんが、何も知らずにこの光景を見たら逃げる自信はあります。だって、誰が何か言う訳でもなくこの流れが自然とできていたんですよ?今は慣れましたが、最初のころは驚きと笑いが半々で少しの恐怖による逃走欲が少しありましたね。
「皆さんいつもありがとうございます。えー、今説明した通り連絡が付かないんです。一応スいカが住んでるのはすぐ近所なので、この配信が終了し次第様子を見に行こうとは思ってますが問題がありまして、鍵がありません。」
そう私が改めて言うと、『心配っちゃ心配だけど風邪だろうとインフルだろうと配信してたからねー』や『朝方まで起きてて今頃爆睡してたりして』、『今すぐ見に行った方が良いのでは?』『急病で苦しんでたりしてないと良いけど』などの体調不良で配信していたことを知っている人は心配しながらもやらかしていたことを思い出し、それらを知らない人は純粋に心配する声を上げていた。
そんなコメントを見ながら私は話をつづけた。
「今すぐ見に行くと言うのが本当は良いんですが、実は合鍵がスいカの実家にありまして先ほど連絡したら今家族みんなで旅行に出かけているらしく、合鍵を受け取れるのが明日の昼過ぎ以降みたいなんですよ。なので、枠も取っていたのでこうして代役でこの夜の配信と場合によっては明日のお昼の配信をしていこうと言う訳です」
そう説明すると、リスナーの皆さんは理解してくれた。ほんとに協力的でいつも助かりますね。
「身バレ防止の為に、声に関してはボイスチェンジャーを使用しておりますので多少聞き取りづらいかもしれませんがあらかじめご了承ください。
アカウントに関しては、マネジメントするにあたっていろいろとやることがあったために共有しておりましたので今こうして配信出来ているわけです」
そこまで説明すると何故か歓喜のコメントで溢れた。
いや、なぜか私の人気がある事は知ってましたがここまでとは思っても居ませんでした。なので、ちょっと引いてます。えぇ、ちょっとですよ?がっつりではありません。
「えっと、この時間の配信予定はあぁ、アーマーバースト9の対戦企画でしたね。
では、これから部屋を作りますのでいつものように先着順でお願いします。
機体に関してはネタでもガチでも何でも構いません。私はネタはないのでガチ機体で行きます」
そうして、時間にして2時間半ほどリスナーさん達との対戦を楽しんで配信は無事終わりました。
~騒動2日目~
はい、昨日に続いて本日のお昼の配信も代役での配信を行ってきました堆肥です。
えぇ、あのお馬鹿さんは結局連絡が取れませんでした。
え?怒ってる?いえいえ、ちっとも、これぽっちも怒っていませんよ。
いえ、嘘です。私は怒ってます。ただ、配信中にリスナーさん達と一緒にスいカに対するお仕置きは何が良いか話しており復活した際にやるお仕置きが決まっているので気分は最高にいいです。
えぇ、怒っていましたが今は気分がいいです。なので怒っていません。
~◇~◆~◇~
「まったく、あのお馬鹿さんはどこに行ったのかしら。電話しても出ないしSNSアプリ全部で連絡しても全部未読とか無いわー」
室内を見渡しながら、そう私は独り言をついついつぶやいていました。
そうです、私は今あのお馬鹿こと、スいカの部屋に居ます。
えぇ、あの後スいカの実家に行き訳を話したらすぐに合鍵を渡してくれました。
特に理由を聞かれることもなくです。昔からの家族同士の付き合いが長いとこんな時はスムーズに動けて助かりますね。少し怖いところもありますが。
まぁ、そんな訳でスいカの住んでるオートロック付きのアパートの部屋に来たのですが……はい、ものの見事に居ませんね。さては怒られることを察知して逃げたか?
そう思いながら、私は室内を見渡しますが室内は荒らされた形跡も争った形跡もなくベランダに繋がる掃き出し窓はしっかりと施錠してあります。
……うん、わかりませんね。プロでもなんでもないずぶの素人が見ただけで事件かどうかなんてわかるはずもありません。
あと、以前もこんな感じで二家族(スいカの家族と私の家族)巻き込んだ盛大な家出をやらかしている(2日後に何もなかったかのように帰宅。その際警察に失踪届を出しておりいろいろとあった)ので警察にすぐに捜索願を出すわけにもいきません。(おそらく今回も少ししたら戻ってくると思われる)
こんな時、前科持ちは信用ないですね。
「寝込んでるかと思ってたけど、ベッドはもぬけの殻ね。ベッドの中も冷たいから今すぐいなくなったわけではないと。
まったくあの子はどこに行ったのかしら。ん?……あっ、携帯こんなとこにある。
携帯も持たずにどこ行ったのかしら。とりあえず、近場を探してみて今日一日探してみてそれでもだめならあの子の親御さんにもう一度連絡して探してみて、それで見つからないようなら警察に行って捜索願出してみるしかないか。動いてくれるといいけど。
はぁー、昨日の配信と朝の配信は急遽ボイスチェンジャー使って何とかしてみたけど、さすがに夜の配信は中止と言う旨の告知出しておくか……理由は…スいカの体調不良のためお休みってことにするか……先の二つの配信は枠をすでにとっていた為代理でやりましたが、貧乳スいカの体調不良のため本日の夜の配信は誠に勝手ながら中止とさせていただきます。楽しみにされていたリスナーの皆様には申し訳ございません。っとこれで告知に流して工作完了っと。
さて、あのお馬鹿を探しに行くか」
部屋で独り言を言いながらSNSでの工作をし、私は近所を探し回ろうと思い部屋を後にしようとし何かを蹴った。
私は慌てて蹴ったものが何なのかを確認するために視線を落とした。
「ん?なんでこんなところにピーマンが転がってるの?野菜なんだからちゃんとチルドに入れておかないと駄目じゃない。
にしても、さっき何か不快なこと言われてたような気がしたけどすぐにすっきりもしたな。なんだっただろう?」
蹴る直前に何か不快な感じがしたけど今はその不快な感じがしない。むしろすっきりしたような気さえする。
そんな何とも言えない不思議な感じがしつつ、私はあの貧乳のお馬鹿が放り投げたと思われる袋に入ったピーマンを冷蔵庫のチルド室に入れ部屋を後にした。
~騒動3日目~
「やっぱり居ないか。
部屋の様子も変わりないし、ポストに入れておいた手紙もそのままだったしどこに行ったんだか」
はい、どうも堆肥です。
本日もスいカの部屋に来ています。なんで平日の真昼間にスいカの部屋に居るかと言いますと、有給消化で休みだからです。
実はこう見えて私も社会人なので仕事があるんですが、この前上司に「肥山さん、あなた有給がたまり過ぎていて上層部に消費させろってせっつかれちゃってさ、悪いんだけど来週有給消化に当ててくれない?確か今抱えてる仕事なかったよね?」と言われてしまいました。なので、今週は1週間まるまる休みとなってます。
上司も上にせっつかれているようなので強く言えないんですよね。と言うか、上層部からせっつかれている姿がとてもかわいそうでした。
と言うのも、実はこの上司、部下全員(私を含め9人)の仕事状況を正確に把握し、そのうえで部下全員が毎日定時で帰れるように仕事の調整もしている仕事がめちゃくちゃ出来る人で、部下全員からとても好かれています。
え?私ですか?私は尊敬はしています。好いているかであれば普通です。好いても居なければ嫌いでもありません。なので普通です。
そんな訳で今週は休みです。まぁ、あのお馬鹿探すのでちょうどよかったと言えばそれまでなんですけどね。
「にしても汚い部屋ね。少し掃除してから親御さんに連絡とって今日も捜索しますか」
はい、部屋に来て何か手掛かりでもあればと思ってきましたがあまりの汚さについつい文句が出てしまいました。
だってそうでしょ、床には洗濯済みかどうかも分からない衣類が散乱してその間にからのペットボトルがあるんです。
昨日は急いでいたので気にしませんでしたが、とてもではないですが我慢できません、掃除をします。まず床に落ちてる衣類は全部洗濯機に入れて洗濯。乾燥機能もあるので乾燥もさせましょう。
そして、洗い物がたまっているのでそれらも洗います。「いつも言ってるのに何でもかんでもため込んで、せめて洗ってない衣類は洗濯籠に入れて、洗ってない食器には水を入れておけって言ってるのに……」ブツブツとその後も独り言を言いながら洗い物をし、その後ベットを綺麗に整えて窓を開け放ち空気の入れ替えをしながら掃除機をかけます。
そうして掃除をする事2時間。かなり綺麗な状態になりました。はい、満足です。
掃除と言う予定外の事をしていましたが、当初の予定通り何かないかと探しもしていたのでいいでしょう。
まぁ、結果として何も得ることは無かったので昨日より少しだけ足を延ばして3駅先まで探してみますか。
それで見つからないなら親御さんに連絡して、警察は2日後かな?
そう思いながら私はスいカの部屋を後にしました。その際何か居る気がしましたが、多分気のせいでしょう。
~騒動4日目~
今日も今日とて朝からコンビニによってからスいカの部屋に向かいます。
以前も居なくなったと思ったら急に何の前触れもなく戻ってきたことがあるので、確認しに行くに越したことはありません。
にしても、親御さんの対応はすごかったなと思うしかないですね。
なにせ、「え?何あの娘またいなくなったの?そう………まぁ、そううち帰ってくると思うしそこまで慌てる事もないんじゃない?」って言ってましたからね。
さすがにそれはどうなのかと思い言うと、「大丈夫よ、あの娘なんだかんだで運がいいしふらっと戻って来るわよ。それでも心配ならそうね………3日後ぐらいに警察に届けを出しましょうか」と言ってましたからね。
この放任スタイルだからあの様になったのだろうか。
そこら辺はなんだかんだで長い付き合いだがいまだにわからず、うちの親はもう考えないようにしているらしい。
まぁ、放任主義を除けばとてもいい人達で町内会の行事では積極的に動いてくれているらしく、結構頼りになる人たちなのだ。
そんな事を思いながら部屋の鍵を開けると中から何かが踊っているような音が聞こえ、私は警戒しながら部屋の中に入っていった。するとそこには今回の騒動の原因となった人物が踊っていた。それも全裸で………何この状況…いや、マジで。
「おいそこの変態お馬鹿、今すぐその変な踊りやめろ」
しばらく様子を見ていたが一向に踊りをやめないので私は声をかけた。
この時の声は自分でも驚くくらい低い声が出ていましたね。
そうして、声をかけられた全裸で踊っていた人物であるスいカは油の切れた機械、もしくは壊れかけのブリキの玩具の様にぎこちない動きでこちらに振り返った。
その振り返った顔には恐怖が張り付いたようなひきつった顔をしており、こちらがなにか言う前に素早く私の前に来て無言で正座を始めた。
そんなスいカを見ながら私は話しかけた。
「おい、変態お馬鹿。今までどこに居たか素直に言いなさい。
何も隠さず素直に言わないとお仕置きが増えるからね」
そう言うとスいカはお仕置きと言う言葉にビクッと反応しながらも3日間の説明を始めた。
~◇~◆~◇~
スいカからの説明を聞き終え、私は近くにあった椅子に座り来る途中で寄ったコンビニで買ったお気に入りのレモンドリンクを取り出し一口飲んでから声を発した。
「で、そんな戯言誰か信じると思うの?
何も隠さず素直にいいなさ言っていったわよね?なんでそんな嘘ってわかりきるようなこと言うのかな?なにそんなに言えないようなことなの?」
私としては、つとめて冷静に声を出したつもりだがどうやら無理だったらしい。
スいカの様子を見るどうやら切れる寸前であるらしい反応だった。この娘とは長い付き合いだからキレる前動作はすぐにわかると以前豪語していた。
実際、この娘の前だとキレることはそんなにない。むしろそうなる前にいつもこの娘は謝罪を始めるからだ。
喧嘩らしい喧嘩もよく考えるとした事が無い。
そんなことを考えているとスいカが必死に説明を始めた。その必死な様子を見るとどうにも先ほどの話が嘘ではないという事が伝わってきた。
その後30分ほどかけて必死に説明され私はその様子から嘘ではないことを確信した。いや、確信させられたと言うところだった。
「と言う訳でして、本当にさっき言った通りの事なんです。どうか信じてください」
「………まぁ、いいでしょう。この部屋に私しかいなかったはずなのに掃除したことやポストに入れた手紙がそのままだったのに手紙の事を知っていた事といい、しまいにはピーマンとかの出しっぱなしになっていたものをしまったことまで知っているなら一応信じましょう」
「ありがとうございます」
私が信じると言うとスいカは立ち上がり腰を90度曲げて綺麗なお辞儀をしながら感謝の言葉を口にしていた。
私はそんなスいカの言葉を聞きながら、今後の配信予定を頭の中でくみ上げていた。主にお仕置き配信の予定をだが。
そうしてある程度予定を頭の中で組み終え、気づいたら今思って居ることを口にしていた。
「まぁ、全裸で変な踊りをしていたから頭の病院に行かないといけないかと思ったけど、言動がいつも通りだし多分言っていたことが事実なんだろうと思うわ。
実際、リスナーの中には気を失って気づいたら三途の川らしき場所に居て、光に向かって必死に逃げたら気を取り戻したって人も居たし。
他にも結構いろんな心霊体験したって人達も居た。
それに世界的に見てもそんな怪事件とか結構あるみたいだからそんな経験あっても不思議じゃないわね」
この前の代役で配信した時にリスナーさんたちから聞いた話をするとスいカは「私そんなこと知らないんだけど!」と言いたげな顔をして驚いていた。
長年の付き合いでわかる。
この顔からして、おそらく今考えているのは臨死体験は誰が体験したことなのか聞こうとか他にもどんな心霊体験もとい、不思議体験してるのか聞こうって事なんだろうという事が読み取れた。
あっ、今度は自分の今の格好を思い出して羞恥心に苛まれ(さいなまれ)固まった。
ほんと見ていて飽きないわね。だからこそマネージャーを引き受けたんだけど本人には言えない事ね。
などを考えながら見つめていた。当のスいカ本人はそんな風に考えられ見られているという事に気づかず一人悶え謎の踊りをしようとしていた。
その様子を見て私は明日からの事を軽く伝えた。
「まぁ、こんだけ元気なら明日から配信しても大丈夫そうだし、お仕置き配信として例の企画もうやっちゃうか。多分リスナーのみんなも期待しているし、新しく来てくれてた人にもスいカがどんな人物か分かりやすいからいいわね」
そう言うと、謎の踊りを始めようとしていたスいカはピタリと動きを止め言葉の真意を確かめるように聞いてきた。
「あのー、ヒーちゃん?そのお仕置き配信とは一体何でしょうか?そして、例の企画とは一体なんでございましょうか?」
そう恐る恐る聞いてくるスいカに私はとびっきりの笑顔でこう答えた。
「当日までの内緒♡」
そう言って、私は残っていたレモンドリンクを飲み干し椅子から立ち上がってスいカに一言「帰るね」と言い来た時よりも軽い足取りで玄関に向かった。
その途中である事を思い出して、振り返りスいカに伝えた。
「会社には体調不良で休む旨を私から伝えておいたから安心して。一応私が連絡取れなくって見に行ったらすごい熱を出して倒れてたって事にしておいたから。
後、親御さんには自分から連絡入れておいてね。昨日探すのを手伝ってもらったから。言葉にはしてなかったし、いつも通りの放任主義みたいなこと言ってたけど、心配してたよ。
それと、無事帰ってこれてよかったね。今日はもう風呂にでも入って寝てな。
また明日の夕方に打合せに来るよ」
そう言い残し、私は今度こそスいカの部屋を後にしました。
その帰り道、スーパーなどを梯子して必要な物を買いそろえることを忘れずに。
~後日談~
「こんばん~、みんな心配かけてごめんねー。
いやー、まさかあの後あんなに熱が出ると思わなくってこんなことになるとは思わなかったよぉー。
あっ、この声に関しては今顔の映り込み防止の為に覆面マスクしててちょっと喋りづらくって変になってるだけだから、体調自体はもう完全回復だよー」
そう言って、私がマネージャーのしているスいカが配信を始めた。
あの奇妙な踊りをしてるスいカを見た翌日に話して決めた設定を間違える事無く喋っていて人暗視出来ますね。
あの翌日の話し合いでスいカは急な高熱で寝込んでおり何もアクション出来なかったって言う事になりました。素直に転生失敗してましたなんて言える訳がないですからね。
そして、コメント欄はいつものリスナーの温かいコメントや心配してたコメントで溢れかえっております。
まぁ一部は私が代役で配信した時に登録してくださった方たちも居ますが。
スいカ自身初めて見るリスナーなので、初めましてとあいさつを交わしたりしておおむねいい感じで配信を始めてなんだかんだで10分が過ぎたころようやく本題に入ったようです。
「えーっと、今日は手元を移しながらの配信になりますね。詳しい内容とか私一切知らないんだけど何やるんだろう?サムネとかも一切見るの禁止ってマネージャーのヒーちゃんに言われてて本当に知らないんだよね」
そうスいカが言うとコメント欄には『あれなのか』『あれなんですね』『これは良い悲鳴?が聞けそうな予感』とかが流れてきて、スいカがいい感じに困惑しています。
「え?なになに、みんな知ってるの?まさか知らないの私だけ?」
ほんといい感じで困惑してますね。これはそろそろ行ってもいいでしょう。
「リスナーに聞かなくとも何やるかはこれを見たらわかります」
そう言いながらあるものを持ってスいカの方に向かいます。
声をかけた事でスいカがこちらを向くと私の持っているものが目に入りちょっと震え始めました。
私が持っていたもの。それはスいカが嫌いな野菜、山のように盛られた茹でたブロッコリーです。
「ヒーちゃん何そのブロッコリーの山は!?」
そう言ってスいカは椅子から落ちそうになってました。
私はそんなの様子のスいカに笑みを浮かべながら近寄って行き、カメラを向けてるテーブルの上にブロッコリーの山を置きました。
「スいカは忘れてるかもしれませんが私言いましたよね?お仕置き配信するって。
これはそのお仕置き配信の内容ですよ」
そこまで言って、カメラの位置調整をしながら私はリスナーに挨拶をした。
「皆さんこんばんは、どうもマネージャーの堆肥です。今回もこの前同様ボイスチェンジャーを使ってのアナウンス等を行っていきますがご了承ください。あと、今カメラの位置調整等をしましたが大丈夫でしょうか?」
『『『『『堆肥様!お疲れ様です』』』』』『『『『『カメラ位置大丈夫です!』』』』』
その光景を観つつスいカは部屋からの脱出をしようとしますが無駄です。なにせ玄関にはしっかりと鍵をかけチェーンまでしてますから。
なので、出ようとしても時間がかかります。
さらにダメ押しでこの言葉を送りましょう。そうすればおとなしく席に着くはずですから。
「スいカ、逃げてもいいですけどそうした場合お仕置きが追加されていくだけですよ。それでもならどうぞ逃げてください。
あぁ、今逃げるなら次回この倍の量のブロッコリーになるとだけ伝えておきますね」
そう言われて、スいカはおとなしく席に着きブロッコリーの山に挑むことにしたようです。
「あぁぁぁぁぁぁ、この感触が!このもしゃもしゃ感がぁぁぁぁぁ」
そんな絶叫が2時間ほど流れる配信となったが、なぜか登録者が増えてましたね。不思議です。
そして無事食べ終わったのを確認するとすぐ次の準備に取り掛かりました。
「食べ終わりましたね。では2時間後からホラーゲーム3本クリアするまでの耐久配信ですよ。ちゃんと終わるまで配信続けてもらいますから、逃げようなんて考えないでください。
時間に関しては大規模連休のおかげでたくさんありますから安心してください。
あと夜食に関しても準備してありますよ。逆ロシアンたこ焼きですが。
あたりのたこ焼き、つまり普通のたこ焼きは30個中6個ありますよ。材料はとてもいいものを使ってますからこちらも安心してくださいね。残り24個は激辛だったり激アマだったりとさまざまですが」
「…………いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、どっちも安心できないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
~更なら後日談~
スいカのとある配信にて。
『ウホッ、どうも皆の者久しぶりだね。みんなの兄貴参上だよ!w』
そのコメントを見た時スいカはすぐに反応した。
「あっ、兄貴じゃないですか!最近配信に来てくれないから寂しかったよぉー。
お仕事でも忙しかったの?」
そう、この人はスいカの配信の常連さんでチャットランを盛り上げたりしてくれるし、よくスパチャを投げてくれたりギフトを送ったりしてくれてるいい人です。
『兄貴じゃないですか!お久しぶりです』『兄貴の熱望してたお仕置きホラー配信来なかったから何かあったのかと心配してたよ』『最近こないから心配してたよ』
コメント欄にも兄貴を心配するコメントで溢れかえっていた。
『¥5,000:なに、ちょっと異世界に行っていたんだよ。無事向こうでやるべきことやって、こうして帰ってきたのさ』
そう言いながらスパチャをポンと投げてきたりするのは、兄貴のいつもの行動でリスナー達はナイスパとコメントやスタンプをしながら、兄貴の冗談を聞き流していた。
そんな中、私はスいカに聞いた話を思い出し、まさかねと思いながらこの配信を見る事しかできませんでした。
のちにスいカに確認したらうっすらと兄貴の声を謎の空間で聞いたような気がすると言ってましたが確証はないので二人で黙って置こうという事になりました。
お読みいただきありがとうございました。
軽い人物紹介をここにて書いておこうと思います。また登場人物はモデルになった人がおりますがあくまでモデルなので実際の人物とはだいぶかけ離れています。
それと、臨死体験については実際に作者が体験したことをもとに書いてます。
スいカ:前作の主人公的個人勢Vtuber。深く物事を考えず脊髄反射でしゃべったりいます。一応漢検は持っているけど漢字が読めない事が多くその度にリスナーに助けてもらってる。主にゲーム廃止をしたり雑談配信をしている。
マネージャー堆肥:今作の主人公。スいカのサポートなどいろいろと一人でやっている女性。スいカとは幼馴染であり昔から振り回されてきたが、本人もなんだかんだで楽しんでいる。
兄貴:スいカの古参のリスナーでどちらもいける業の者。スいカと入れ替わるようにして勇者召喚された。その際に神を食べ、異世界では魔王とかも食べ平和に導いた。なお戻って来てからは異世界でさんざんやって満足したのかおとなしくしている。