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青色と赤色

「それじゃあ次は支柱を立てようと思うのでコトさんお願いしてもいいですか?」

「わかりました…大きさは設計図の通りでいいですかね?」

「はい。まずはこのサイズの柱を…」


コトさんの『創造』で建物の材料はいくらでも手に入る。

創造端末では作れないような大きな物もコトさんならば作れるらしい。

この人のスキルは…やっぱり私達の中でも頭一つ抜けている。


「ロクスケさん柱の上まで登りたいので足場作ってもらっていいですか?」

「足場作んのはいいけどさ…ヨウメイの『小衛星』だと見えない足場になるし足場だけ作れねえから俺の後ろ登ってくことになんだけど…俺が師匠担いで登ったほうが早くねえ?」

「えー。担がれて上るの恥ずかしいじゃないですか。すぐに消えるわけじゃないんですよね。」

「ああ。数秒は残るよ。じゃあやってみてダメならまた考えるか…。」


トントントンっとロクスケさんが空中を軽やかに登っていく。

センゴクのヨウメイさんという人の六道で空中に足場を作っているらしい。

ロクスケさんが登って行った場所をしっかりと確認しておいて…

「よっ…ほっほっほっ…とぅっ!」

一段とばしくらいがちょうどいいなこれ。


よしっ上までついた。

横に避けたロクスケさんを横目に私は柱の少し上にぴょんと飛び上がる。


鳴らすは単音。音色は黄金色。

「かなづち!」

ハンドベルの先に魔法金属の円筒が生成されて大きな金槌のようになる。

ほとんど重さもないのだが振り回せばそれなりの質量で打ち付けられる魔法金属でアダマスと呼ばれている。


柱を地面に打ち付けるのにはコツが必要だ。

力を込める方向が少しでもずれれば柱は()()()()力が逃げてしまう。

真っすぐ地面に対して垂直に。

「よいっしょおぅ!!」




─────────────────────────────



「ハローハローメルナママ!ご機嫌麗しゅう!いあいあ!そうねさっそく本題行こうね!」

「なるほどなるほど!そういうあれね!それならあれだよ!ひとまず出力上げてみたらいいんじゃないかな!」

「んん?わっかんないかなぁ!要するに!よーするにだよ!メルナママがもうすでに支配してたんでしょ?その人達がまたメルナママに敵対したってことはまあ支配及び洗脳の能力で上から奪い取ったってことになるのさ!ここまではいいよね!そうそう!まあ間違いなく固有(ユニーク)持ってるんでしょうよその侵略者さんとやらはさ!」

「ここまではまあ前提条件!でだよ!」

「なんで支配取られちゃったかって言うと考えられる可能性としてはまあざっくり考えて3つになるわけ!」


「ひとつ!メルナママの能力が無効化された!『魔王』を無効化して自分の能力を通してるだけ!」

「にゃはは!これはまあ可能性としてゼロではないけど言ってみただけって感じ!メルナママの身体能力はちゃんと向上したままだしなんなら前よりも強くなってるわけだから『魔王』が無効化されてるっていう可能性はほぼないと思うよ!」


「ふたつめ!支配してるさらにその上から支配能力を使われて乗っ取られてる!」

「単純な力負けだね!まあメルナママの『魔王』は実は結構優しい能力だかんねー!がっつり支配する系の能力には普通にやってたらまあ負けちゃうのはあるかもしんない!」

「一応Dr.シロクロちゃん的にはこれが大本命かな!それじゃ次の可能性!」


「みっつめ!能力に対してメタを張られてる!」

「相手が何故かメルナママの能力に完璧に対策を練ってきている可能性!からメルナママの『魔王』が逆手に取られてるっていう可能性もなくはないよ!」

「その場合だとこっちの能力がほぼバレてるってことになるね!にゃはは!まあこれが考え得る最悪の可能性だよねえ!ああいやそうじゃないや。」


「最悪のケース4つ目!『想定していないそれ以外』があるね!」

「なーーんにも想定してないわけわかんないこっちの理解を超える存在!それが最悪だよ!」

「こっちの理解を超えた出力とか対策とかそれ以前の新機軸だったり超能力だったり何だったりよくわかんないもの!まあほぼないと思うけどそれがあったらこっちとしても対策が取りようないからね!」

「にゃはは!まあ理解を超えた存在だったらできる事なんて何もないんだから想定すること自体ナンセンスだから気にしなくっていいと思うよ!もしそんなものがあるんだったら…絶対そこに私がいないと耐えらんないからね。」


「だからまあ結論として2の線なんだって決め打ちをして『魔王』の出力を上げることを考えたほうがいいんじゃないかなって話になるわけ!それでだめだったならそれはそれで情報アドバンテージを得られるわけだしそれをもとにまた対策を考えられるんだから爆アドだしねえ!」


「いあいあ!こんなもんかな!ということで私の意見はこれで一応一通り言ったわけだから作業に戻っていい?いいよね?もどります!いあいあ!変なことなんて企んでないってばさ!えへへ!内緒だよん!楽しみにしといてね!そんじゃらばばば!またね!メルナママ!」




─────────────────────────────




空が青い。


空を見上げているとまるでこの世界は平和なんじゃないかと思ってしまう。

私達が作っている『魔王城』も外観だけはもうほぼ完成したと言っていいだろう。

この城の設計には連合国の人達も深くかかわっている。

メリダさんは全体の指揮を執ってくれているしスコットさんとタイムさんは職人ならではの視点で設計の補佐をしてくれている。

ヨハネさんは…何をしているんだろう。よくわからない。


私は城の上に立ってぼんやりとセメントが固まるのを待っている。

「こんなにぼんやりとしていていいんですかねえ。」

「いいんじゃねえの。というか今できる最善が現状ってことだろ。」

「そうだといいんですけど…。」

「はぁ?…まあ焦る気持ちはわかるけどさ。まだあれから1日しかたってねえのにここまで完成したんだ、出来すぎなくらいだろ。」


「そうですね…。ああいや。違うか。この城の事だけではなくて…。」

「あぁん?」

「この現世の為にできる事が…もっと他にもあるんじゃないかって。そう思ってしまって。じっとしていると…落ち着きません。」

「まあ。現状できる事なんてのはほぼねえからなあ。そこいらの奴ら捕まえて縛り上げるくらいはできるが…。今やってることの結果を考えりゃあ、わざわざそんなことする必要もねえだろ。」


「…そうですね。きっとこれが最善の方法でそれ以外に頑張ってもそれは…きっと無駄なことなんでしょう。」

「無駄ってこともねえとは思うけど。あんまり考えすぎねえほうがいいとは思うぜ。結局のところ人生に於いて取れる選択肢っていうのはそんなに多くはねえもんだからさ。」

「選択肢…ですか…。」

「ああ。そりゃあ…侵略者の奴らが企んでることを完全無欠に阻止して今すぐにこの現世の奴らを全員助ける画期的な選択肢っていうのが取れるんだったらいいが、そんなものはねえだろうよ。」


「…それは。そうですね。」

「じゃあ現状困っている奴を助けるか?現状困ってる奴らっていうのはどこのどいつかってのも分からねえ。ほとんどの奴らは支配はされてはいるが…今のところひでえ目にあわされている様子もねえ。」

「そういう人もいないとは限らないじゃあないですか。」

「ああ確かに。いるかもしれねえな。実際どこかにはいるんだろうさ。」


「だったら…。」

「だがどこにいるのかわからねえ奴をどうやって助けるんだ?探しにでも行くのか?今やってる事を…この現世を救うことを放り出してか?」

「…。」

「それとも…全部放り出して帰っちまうか?そういう選択肢だって取れる。俺達はな。」


「でも…それは。」

何も解決はしない。ただ。投げ出すだけだ。ただ。この世界を見殺しにするだけだ。

「ああ。ただの問題の先送りだ。戦うべき相手から逃げるなんてのは俺としても最悪だよ。」

…戦うべき相手か。

「まあ要するにだ。意味のねえ選択肢だったり。状況を悪化させる選択肢だったり。全部を放り出す選択肢だったり。…取るべきじゃあねえ選択肢っていうのはいくらでもある。だけどさ。必要な…選ぶべき選択肢っていうのはそう沢山あるもんじゃねえ。」


「…選ぶべき選択肢ってこと…ですかね。」

「まあおおよそそんな感じではある。だけど『べき』ってのぁ気に入らねえかな。」

…相変わらずめんどくさい男だなあ。

まあいいか。いいたいことはよくわかったし方向性もまあなんとなく決まった。


「そうですか。それじゃあ…私が決めた選択肢を。やると決めたことをやっていくしかないってことですね。」

「まあ。あんまり偉そうに言うようなことじゃないかったかもな。」

「いえ。とても助かりましたよ。ありがとうございます。」


「どういたしまして。まあ…体動かしてねえと不安だっていうんだったら…久しぶりに稽古でもつけてくれよ。」

「稽古…え?もしかして私と戦おうとしてます?いやですよ。」

「はぁ?いいじゃねえか!しばらく全然手合わせしてねえんだからたまにゃあいいだろ!」

「いやいや。ロクスケさんセンゴクでの修行を経てめちゃくちゃ強くなってるじゃないですか。私なんかじゃ全く相手になりませんよ。」

「そっちだって魔法やらなんやらでなんかやたら強くなってんじゃねえかよ!なんだよこないだのよくわかんねえ魔法は!俺が苦戦したサルタヒコやらのダイミョウ達を複数人まとめて倒してただろ!俺としては胸を借りるつもりで手合わせをお願いしてるんですけどいかがですかねえ師匠!」

「ああもう!刀チャキチャキ鳴らしながらこっちに殺気飛ばしてくるのやめてくださいよ!やりませんからね!」


「どうやら。そこにいる二人共。君達はとっても強いようだ。どうだろう?この僕と手合わせお願いできないだろうか?」


「え?」

声のほうに目を向けると。

そこに…何か…赤い人がいた。


「あん?なんだぁ…おめえは。」


「ああ。これは失礼。初対面の相手にいきなりがっついてしまっていてはあまりにも失礼だったね。」

赤い人は小柄で私よりも少しだけ背が低いようだ。

すごく若く見えるけど…態度はあまりにも堂々としている。

髪は赤くてところどころ黒い。服装は真っ赤だ。


「まずは自己紹介をさせていただくとしようか。僕の名前はステラ。ステラ・シリウス・ポラスター・サン・サーカディアン・カステル・ポルクだ。」

「人は僕の事を『勇者』と。そう呼ぶよ。どうか御見知り置きを。」

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