今ってどういう状況なんでしょうかね。
「なあなあメルナちゃんメルナちゃんこれってどうすればええのん?メルナちゃんの言うたとおりにやろう思ったんやけれどな。」
「えっと…それはですね…」
三国が統一されて食事会を開くことになり全員分の料理を作ろうと意気込んでいた私だったが流石に私一人で三国の沢山の人達に御馳走を振舞うというのは無理があったためある程度料理ができる人を三国それぞれから集めて作ってもらう事になった。
そもそもが私にはこの現世の人たち全員に美味しいご飯を食べてほしいという目的があったのだ。
私が作れる料理をこの現世の誰でも作れるようになってもらいたかったので、この「みんなでおいしいご飯を作ってみんなでおいしいご飯を食べようの会」は私の目的を果たすために非常に都合がよかった。
みんな最初は異世界の見知らぬ料理に戸惑っていたものの実際に自分で作っていくうちにどんどんレシピを自分のものにしていった。
「わあ!メルナちゃんの言うとおりにしたらほんまにすっごくおいしくなったなあ!メルナちゃんはほんにすごいなあ!」
「いえいえ。みなさんとっても優秀で呑み込みが早いからですよ。」
この現世では驚くほど料理は発展していなかった。
そもそも食料がほとんどなかったので調理というのも最低限煮たり焼いたりするか保存食を作るための塩漬けや燻製などがほとんどであり、おいしく食べるための料理というのはほとんどなかった。
…みんな戦ってばかりいたので戦闘技術や武器開発は発展しても料理などの娯楽の開発にかける労力はなかったのだろう。
美味しい料理って絶対に必要なものだと思うんだけどな。
…まあでも生きる事、死なない事よりも大切なことはないってことなんだろうね。
人々が争った結果自分以外の人達が死んでしまった私は何とも言えない気持ちになってしまう。
いやいや。
今はそんなことを考えている場合ではない。
他人に料理を教えるというのは私自身あまり経験がなかったこともあってかなり大変な作業だ。
ギルドの人達は以前から多少ではあるけどお願いされて料理を教えたことはあるのでセンゴクや連合国の人達に主に教えることになる。
「マスターメルナ。助けてください。緊急事態です。」
そう考えていたら丁度話しかけられた。
えっとこの人は…。
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「マスターメルナ。助けてください。緊急事態です。」
「まずは現状の整理をさせていただきます。ロクスケさん。コト様。もし食い違う情報や補足していただけるのでしたら適宜報告をお願いいたします。」
「ヨハネは可能な限りしゃべらずこちらが質問をしたことにだけ返答をしてください。」
「そうですね。いつも通りにお願いいたします。」
「まずはマスターメルナ。ロクスケさん。お二人ともセンゴクから無事逃亡いただけたようでなによりです。」
「現状は惨憺たるものです。」
「連合国は英雄連合に完全に支配されました。」
「はい。」
「無事であったのは私メリダとそこにいるヨハネそしてスコットとタイムのみです。」
「いえ。無事であるという表現は正確ではないのかもしれません。」
「彼らの言葉を借りるのならば。」
「我々は新時代の落後者であると。」
「そう私達は順応することができなかった人類だと。」
「そう言われました。」
「この考え方はセンゴクやギルドなど他の国へも広がっているらしく今や連合国に限らないほとんどの国民が英雄連合による支配を受けています。」
「私はてっきり侵略者と戦うためにマスターメルナによる統一が始まったのかと思っていたのですが。」
「そこにいるヨハネがこれはおかしいと大声でわめきだしましたので。」
「即座にコト様へとコンタクトを取り確認したところマスターメルナは関与していないという事実が判明したため。5人で連合国より這う這うの体で逃げだしたと。」
「そういうことになります。」
「そして本来であれば助けを求めるために我々3人でギルドへ向かうつもりであったのですが。」
「ヨハネが血相を変えてセンゴクへ最速で向かったのでまあ適当に放置して私達2人はギルドへ向かったのです。」
「なぜセンゴクへと一緒に来なかったのかですか。」
「失礼ながら私も詳しくは存じ上げてないのですがそこのヨハネがそうしろと命令をなされたので。」
「そうしなければ世界が終わると言われまして。」
「工場長の命令に従いました。」
「そして私達2人はギルドへと向かい…そこも同じような惨状であったことが確認できました。」
「しかしながら…どうやら内乱が起こっていたようでして。」
「いえ。あれはもはや災害というべきでしょうか。」
「とてもじゃありませんが捜索を行えるような状況ではなくひとまずマスターメルナ達と合流することを優先しコト様と一緒にギルドを離脱してこの場へとやってきたという事です。」
「私達から話せる内容はこれくらいのものですね。では…今度はそちらのお話を聞かせていただきましょう。」
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こちらからの報告を済ませだいたいの状況は把握できたと思う。
わかっていはいたが現状はひどいものだった。
最悪と言ってもいい。
ここまで私達はこの国の人達をひとまとめにすることに尽力してきた。
3人がそれぞれの国でそれぞれに頑張り信用を勝ち取ることで各国の意志を統一することができたと思っていた。
あんなにみんなで一生懸命頑張って。
コトさんは連合国でのにほとんどが無駄になった。
「センゴクも完全に敵対したと言っていいだろうなぁ。」
「そこのヨハネが変なこと言ったから話聞かせてもらおうと思ったら…有無を言わさずに襲い掛かってきた。」
「あれは完全に殺すつもりだったぜ。」
「そいつが気に食わなかったっていうにしても話もさせねぇでただただ殺すっていうのはおかしい。」
「異常だ。」
「あいつらは確かに血の気が多い連中だったがあそこまで話を聞かねえ奴らじゃなかった。」
「…なにか原因があるんだろうな。」
連合国とセンゴクはほとんどの人物が私達と敵対しておりギルドでは大規模な戦争が始まっているらしい。
侵略者はもうこの『ジハード』への侵攻を始めているが私達はその全容を把握することすらできていない。
こちらに残された戦力は隔世から来た私達3人と連合国のヨハネさん達4人の合計7人しかいない。
「その上で気になるのが…。あのハガネって奴だな。俺と師匠とで会った…多分あいつも『侵略者』なんだろうが。」
「そんなに強いとも思えねえ奴だったが…戦ったらろくでもねえことになると思って逃げてきた。」
「あれは強いとか弱いとかじゃなくやばい奴だ。」
「なあ。大将。俺達が戦おうとしている相手っていうのは…侵略者っていうのはいったい何なんだ?」
「高い技術力を持った兵器を使う強え奴らなのかと思っていたが…どうやら話が違うみたいじゃねえか。」
「いや。悪い責めてるわけじゃねえよ。異常事態を予測しろっていうのがまあ無理な話だ。」
「俺が言いたいのは。」
「結局のところどうすんのか。何をすんのかって話だな。」
ロクスケさんは、いつも通りの飄々とした態度でどっしりと座り込みコトさんを見ている。
そしてコトさんは考え込んでいたが…やがて言葉を選びながら話し始めた。
「敵は…。」
「『固有』…でしょうね。この短期間でこの規模となると…普通の人間にできる範疇を超えています。高い科学力で以て何かを行っているということにしては…僕達が無事でいる理由に説明がつかない。」
「『侵略者』達は少なくとも2人以上の…『固有』を持った集団であると予測されます。」
「現状…状況は…最悪に思えます。」
「沢山いた味方は今やほとんどおらず敵に回り。その上敵勢力の状況をほぼ全く把握できていない。」
「勝ち目なんて到底ないんじゃないかと。僕も何度も思いました。」
「なるほどなぁ。あきらめんのかぁ?何もしないで降参かぁ?」
「いいえ。戦います。」
そうコトさんは言い切った。
そして…なぜかとても複雑そうな表情をしていた。
「なぜなら。絶対に勝てると。そう確信を持った人がこちらの陣営には…いますので。」
そういいながら、コトさんは。
まっすぐにヨハネさんを指さした。
「ああ!僕の言うことを聞いていれば絶対にこの戦いに勝利できるとも!あっはっは!任せておきたまえ!大船に乗ったつもりで君たちは僕という船長の手となり足となり働くがいいさ!」
えぇ…?