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雷鳴

がらぁんがらぁん

音が鳴り響く。

サルタヒコさんは目を丸くしてこちらを見ている。

ミドウさんは二の太刀三の太刀を浴びせようと静かに刀を振るい続ける。


グィネヴィアさんの言葉を思い出せ。

心を静かに。

全身で鳴らせ。


鳴らすは単音。音色は紫。

「らいめい」




─────────────────────────────



「ああそうだ。ほら。これ作っておいたよ。持ってきな。」

グィネヴィアさんは思い出したように何かを取り出し私に差し出してくる。

「…えっと。これなんですか?」

「このあいだメルナが壊した樂器(ムジカ)の代わりだよ。」

…えっと。ああ思い出した。

魔法学校で支給された練習用のハンドベルがあったのだが…『魔王』の力で増えた魔力を試そうとしたときに壊れてしまったんだった。

「たしかに魔法学校で支給されたのを壊しましたけど…私が使ってたのはこんなに大きくなかったですよ?」

「そりゃそうだろうよ…。そもそもなんで壊れたかわかってんのかいあんた?あんな壊れ方なかなかするもんじゃないんだよ。」

「…といいますと?」

「魔力の流し過ぎで壊れたんだよ。じゃなけりゃあんなひしゃげて砕けたりはしないさ。」

あれはそういうことだったのか。

「うっ…。それはごめんなさい。…最近魔力量の調節がうまくできてなかったから壊れちゃったんですね…。」

「謝んなくていいんだよ。魔力が多いのはいいことだ。…普通はその歳でそんなにも増えるもんじゃないんだけど。…まあその為にこれ作ったんだからさ。持ってきなよ。」

「あの。これ前に私が使ってたものより…めちゃくちゃ大きいんですけど…。」

「ああ。子供用のハンドベルじゃ魔力容量が足りないってんだから特注で作ったからね。こんぐらいじゃないとメルナの魔力に耐えきれないと思ってさ。」

「こんな立派な物を作っていただいて大変ありがたいんですけど…。え?グィネヴィアさんが作ったんですか?」

「ああ。伊達に長く生きてないってことさ。自分で言うのもなんだがあたしは一応ギルドでは指折りの職人だよ。魔法銀(ミスリル)世界樹(ユグドラシル)を使って作った特別製さ。表面には呪言霊(ルーン)で魔力を通しやすくしてあるからね。これだけやってダメなら他の何使って作っても無駄さね。あっはっは。」

「えええ?そんな貴重なものを使って…手間暇かけて…子供用の入門樂器を作ったんですか?さすがにそれはもったいないですよ…!」

「ガタガタうっさいねえ!このあたしが手ずから作ったんだからあんたは大人しく言うこと聞いて使ってりゃいいんだよ!もう作っちまったんだから四の五の言わずに持ってきな!」

「…こんなの使ってるところ見られたら絶対からかわれるじゃないですかぁ。グィネヴィアさんが自分で使ってくださいよぅ。」

「生憎あたしはもういくつも一級品の樂器(ムジカ)もってるからわざわざ子供用のハンドベルを使う必要はないんだよ。」

「私だってグィネヴィアさんが使ってるようなかっこいい奴がいいですよぅ。」

「しょうがないだろ!他の樂器(ムジカ)をあんたが全然使えないのが悪いんじゃないか!」

「うぅ。」

「それに…。単純だからこその利点っていうのもあるだろうさ。あんたほどの出力でこいつを使えばそんじょそこらの武器やら兵器やらよりもよっぽど恐ろしいはずだよ。」

「そんなもんですかねえ。…まあこれからまた本格的に戦いが始まるわけですからね。…まあ、ある程度は練習しておきます。」

「わかればよろしい。とりあえずここで一回試してみといてくれよ。あたしとしても自分が作った樂器(ムジカ)がどんなもんなのか見ておきたいからさ。」

「そうですか…わかりました。」


その後「そうじゃあないだろう!そんな鳴らし方じゃあうちの子は任せられないよ!」と急に張り切りだしたグィネヴィアさんにみっちり9時間ほど指導していただき私は巨匠グィネヴィアによる傑作『鐘楼(グランドベル)(ディストーション)』を最低限鳴らすことができるようになったのであった。




─────────────────────────────



「さてと。まずは一人、ですね。」

私としては二人とも一度で気絶してもらいたかったところだがサルタヒコさんは無事の様だった。

ミドウさんは私の杖からの直撃を受けたので多少は六道で防御をしたのかもしれないが一撃で気絶してくれた。


「な…なにを…した…!」

どうやらサルタヒコさんも無事では済まなかったらしく足元がふらついている。

手に握りこんだ魔石は…流石にどこかに捨てたようで手には何も持っていなかった。


この状態だと追いかけては来れないと思うけど…。どうしようかな。

「ロクスケさん。そっちはどうですか?」

「あぁ?もう終わったのかよ。流石にカネズミ相手にそんなにすぐは無理だぞ。こいつの鎖かなり厄介なんだよ。」

「…なるほど。鎖ですか。」

「あいつの鎖伸ばしたり縮めたり繋がったり切り離したりやりたい放題だからな。切ってもすぐ繋がんだよ。いろんな場所に引っ掛けて伸ばしてくっから本人がどこにいるのかもよくわかんねえ。このまま時間稼がれたら他の奴らも来ちまうから急いで処理しないといけないんだけど…どうすっかな。」

四方八方から襲い掛かる鎖を相手にしながらロクスケさんは話す。

鎖はがじゃらじゃらと色々な方向から丸で蛇のように伸びてくる。

まっすぐロクスケさんに伸びていった鎖はロクスケさんに刀ではじかれる。

ロクスケさんを捕まえようと伸びてきた鎖がぴんと張った瞬間ロクスケさんは鎖を切ろうと切りつけるが刀が当たった瞬間あたりで鎖は急に伸びてたわみ切られるのを回避したように見える。

…確かに厄介そうだ。

居場所が分かればロクスケさんはまっすぐに向かって行ってカネズミさん本人を切りつけられるだろうがどこにいるのかがわからないまま下手に突っ込んでいって時間を浪費するわけにもいかない。

かと言って放置をしようにも鎖を使って私達の事を追跡し続けるだろう。


あれ?

ああいやそうか。

どこにいるかはわからなくっても鎖でつながっているのか…!


がらぁんがらぁん

がらぁんがらぁん

がらぁんがらぁん

がらぁんがらぁん


私は左手に持った鐘を鳴らしなら杖の先を鎖へと突きつける。

「何をするつもりでござるか!させはしない!」

サルタヒコさんはまだ向かってくる。


私はとっさに鐘を持ち替えて魔石を数個取り出しサルタヒコさんに投げた。

サルタヒコさんは驚いた表情をしたものの、よけきれないと判断したのか魔石をまたしても両手でつかんで握りこんだ。

よし。今回はさっきに比べて魔力も空気に大量に溶け込んでいるし何とかなるだろう。

出来る限り沢山の力を込めて…!

鳴らすは単音。音色は紫。


「らいめい」

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