逃亡者と追跡者
「さあ二人とも!乗りたまえ!グレゴリーは3人くらいまでなら多分乗れる!」
白煙の中ヨハネさんの嬉しそうな声がする方へと向かう。
ぐれごりーと呼んでいる物が何なのかよくわかっていなかったがどうやら四足歩行の機械がぐれごりーさん?なのかな。
私とロクスケさんが乗り込んだ瞬間にぐれごりーさんは走り出したようでグンとうしろへ引っ張られる。
こんな何も見えない上に訳の分からない状況で放り出されてしまっては困るので必死でぐれごりーさんにしがみつく。
近くでよく見ればぐれごりーさんは馬のような見た目をしている。
足の先にはタイヤのようなものがついていて背中には複数人乗っても大丈夫なように鞍のようなものがついている。
「おお!速いですね!」
「しっかりと捕まっていたまえ!安全運転とはいかないようだ!」
「あっはっは。これで逃げ切れるといいんだけどなぁ!」
そしてぐれごりーさんに乗った私達は煙を抜けた。
ああ。何も見えなくて不安だったがちゃんとヨハネさんとロクスケさんが乗り込んでいる。
「どこへ!どこへ向かうんですか!」
しばらく走り続け周りに人の気配もしなかったのでヨハネさんに聞く。
「ひとまず仲間と合流しよう!君達2人と合流できたのは大変に心強いがコト君を始めとした他の人達とも合流しておきたい!」
おお。さっきまでの泣きそうな表情はどこへやら。
ヨハネさんの表情は自信に満ちていてさっきまでとは別人のようだ。
安全だと思った時の自信はすごいなこの人。
「ははは!3人乗りでも全く問題ないようだ!このまま一気に離れるぞぅ!」
何かの音が聞こえる。
じゃらり
うしろから…鎖が伸びてきた。
「そかそか。それにもう1人…いやあと3人くらいは乗れんかね?わはは。」
鎖はそのままグレゴリーさんの首の周りをぐるぐると絡みつき…あれ?つながった?
先のほうがつながって首を隙間なく巻き付き外そうにもなかなか外せないようになっている。
「おいおいお前かよカネズミ!あはは!お前ひとりならまあ許可は出せるが3人ってのは欲張りすぎじゃねえかな!」
「ぎゃあ!なんだこれは!ろくすけさぁん!なにこれ!たすけてぇ!」
先ほどまでの自信は一瞬で表情から抜け落ち恥も外聞もなくヨハネさんが叫ぶ。
…ロクスケさんはなぜかとても生き生きとしている。
この男は強い相手と戦えるのが楽しくてしょうがないんだろう。
「わはは。ついてきてんのがおれだけじゃあないのよ。鼠だけじゃなくって猿と蛇も仲間に加える度量はねえかな。わはは。」
「仲間ってんならゲントク裏切ってこっちにつくってことか?あいつら裏切れるってんなら話聞いてやってもいいけどよ。っと!」
急に死角から女性が飛び出してきてロクスケさんに斬りかかった。
「それはありえませんね。あなた達が。その男を差し出せば。今ならまだ関係の修復を視野に入れることができると。そう理解してください。」
「相変わらずだなミドウ!そうか目が見えねえお前にとっちゃさっきの煙も何の意味もねえってことか。」
「意味がないのはあなた達の行動なにもかもですよ。煙に関しては感覚を邪魔されるので鬱陶しいことこの上ありません。私を苛立たせるという目的があったのならば素晴らしい成果を上げたと誇ってもよいですね。ああ。許されるならばあなたたち三人ともの首を切り落としてやりたい。」
「なにぃ!この女の人!すごくこわいよぉ!ろくすけさぁん!めるなさぁん!」
「あー…結構やべえかもな。鼠に蛇はこいつらだろうけど猿って…」
じゃらり
鎖が音を立てたかと思って目を向けると鎖はピンと上へ伸びておりつかんでいる何者かが私達の頭上を飛び越え私達の進む方向に着地して私達を待ち構えるように向き直り両手を広げた。
「あっはっは。追いついたでござる!ひとまずそのおもちゃを握りつぶさせていただこうか!」
「やっぱりお前かサルタヒコ!ああこりゃまずいな!師匠!手ぇ抜いてたらそいつ殺されちまうぞ!」
「ぎゃーーーーー!やだぁーーーーー!」
「ヨハネさん!落ち着いて!順番に対処をして行きましょう!」
現状把握をしよう。
目の前にサルタヒコさん。
後ろから追いかけてきているミドウさん。
そして…あれ?
カネズミさんはどこにいる?
じゃらり
またどこかから伸びてきた鎖がぐれごりーさんの首の鎖とつながる。
「おはなししよか。ひとまずおれとしちゃ邪魔だしそのおもちゃ壊すかね。わはは。」
カネズミさんがグンと力を込めて鎖の先のぐれごりーさんを壊そうとするのとロクスケさんが鎖を切りつけるのが同時だった。
ああ。完全に囲まれている。
3人はそれぞれ位置を調節して私達を取り囲むような位置に立っていた。
カネズミさんが動いたのを見てミドウさんが腰に刀を構えてこちらへ突っ込んでくる。
私は杖でミドウさんの刀を受け止める。
ミドウさんが得意とする居合だ。
速さも威力もとんでもなく受け止めるので精一杯だ。
視界の端でサルタヒコさんもこちらへ突っ込んできている。
私はミドウさんの攻撃を受け流しながら空いた手でサルタヒコさんへ石をいくつか投げる。
うわ全部キャッチされた。
サルタヒコさんからは見えにくい位置から投げたはずなのにこともなげに全ての石はサルタヒコさんの手の中にあった。
「カネズミさんを任せます!」
「おう!任せろ!」
急がなければ他の人達も到着してしまう。
この3人でもかなりキツいのにここに更に他のダイミョウやゲントクさんが来てしまえば流石にヨハネさんを守りきることはできない。
…そもそも私達は何でゲントクさん達と敵対しヨハネさんを守っているのか。
現状は訳が分からない状況のまま進んでいる。
なぜか私とゲントクさんが手を取り合って戦おうとしていたのを全力で以て止めに来たヨハネさん。
そんなヨハネさんを何故か即座に全力で以て殺そうとするゲントクさん達。
わからない事ばっかりだ。
そもそもがなぜヨハネさんは私達が手を取ろうとしたことを止めに来たのか。
なぜヨハネさんをゲントクさんは有無も言わさず殺そうとしているのか。
ロクスケさんは即座にセンゴクと対立することを選んだのか…。
多分ロクスケさんは強い相手と戦えればなんでもいいんだろうなあ。
いや。今は考えていてもしょうがない。
センゴクの人達がヨハネさんを殺そうとしている以上今は彼を守るしかない。
私にはヨハネさんが話を聞くまでもなく殺していい相手だとはとても思えない。
がらぁんがらぁん
がらぁんがらぁん
サルタヒコさんとミドウさん達を相手に私も出し惜しみをしている場合ではない。
私も本気で戦う時が来たようだ。
毎日更新のコツが思い出せません。
頑張って勘を取り戻していくしかないですね。