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さあ手を取り闘いましょう

「わはは。メルナねーさんロクスケねーさん。元気そーでなによりだ。リンドウもいんね。なんかうちの村やばそーな感じだわね。ひとまずみんなに逃げろって言ったるからよっぽどだいじょーぶだと思うんだけどね。」

燃える村を少し離れた位置から見ていた私達に不意に話しかけてくる人物がいた。

小柄で特徴のない顔をしたダイミョウの一人であるカネズミさんがそこに立っていた。


「カネズミさん!無事ですか!何があったんですか?」

「わはは。無事よ無事。前情報なく急に敵が攻めてきたもんだからみんなパーっと逃げちゃったのよ。うちの村の人達さ。逃げ足早いし多分みんなちゃんと逃げれてると思うわね。」

「まあ。カネズミなら無事だろうとは思ったけどまさか全員無事とはね。」

リンドウさんはホッとした様子だ。…彼は人が傷つく様子を見るのをいやがる。

ひとまずみんなが無事で本当に良かった。


「おれらもまあ逃げとこか。ひとまずこっから離れた方がいいわよね。わはは。」

カネズミさんはわははと笑いながら村から離れていくので私たちも彼を追いかけるように走り出す。


「敵襲かぁ。いきなり攻めてきたなぁ。カネズミ、相手はどんな奴だった?」

「んー。そうね。遠目でちらっと見たけどなんかでっかくって黒かったなあ。部下みたいなのいっぱい連れてたしまあ家とかはまた作れるからってまずは逃げたんだわ。情報収集すんにもこうも殺す気満々で来る相手に逃げ遅れちゃかなりまずいかんね。」

「あっはっは。お前らしいな。お前なら敵の大将に気付かれずに色々探れたんじゃねえの?」

「わはは。ロクスケにーさん。そうは言うけど万が一にでも見つかっちまって死んじまうのがいちばんの喪失だろうさ。いや。死なずに色々聞き出されちゃうんが一番まずいか。なにせおれぁ情報吐かなきゃ殺すぞって脅されたら痛いのやだなってきっとすぐに全部吐いちゃうかんな。」

ロクスケさんとカネズミさんは2人して呑気に笑っている。

…戦争が始まったというのにこれだけ自然体でいられる


「違えねえ。まあ何にしてもお前もお前の村の奴らも無事なら良かったよ。ひとまず総本山にでも戻るか。他の奴らもいるだろうし。」

「そうだなあ。ただ敵さんもいっぱいいるだろうからなあ。」

「まあ確かに集まってるだろうな。ただ敵に結構やばい強さの奴らがいるみたいだからそいつらに一対一であたるのはさすがのお前でもまずいだろ。」

「それもそっかねえ。わはは。それじゃ4人で行くとしようか。ま、この3人と一緒にいんのが下手すりゃいちばん安全だわね。」

そうして。私達4人はセンゴクの総本山へと向かって走り出した。




─────────────────────────────


「逃げられたか。」


「おやおや。アスラ様。こんなところまで来ていらしたんですか。」

ハガネはこちらを向きハッとしたような素振りを見せ恭しく首を垂れた。

顔も甲冑で隠れているので表情はわからないがにやにやと笑っているのだろうということはわかる。

「失態だな。目の前にいて何故逃した。貴様なら追えただろう。」

「いえいえ。ワガハイといたしましても追跡をしたいのは山々だったのですが…なにせ両腕もこのように落とされた状態でありましてなぁ。」

ハガネは呵呵と笑いながら朗らかに話す。

見れば確かに両腕は肘から先がなくなっている。

「貴様にとっては大した問題ではないだろう。」

「なにをおっしゃいます。腕が落ちてしまったら拾わなくてはならないでしょう?失くしてしまったら大変なことです。」

「もういい。疾く後を追え。奴らが向かったのはあの城だろう。…貴様の失態以外は概ね計画通りに進んでいる。」

「計画通りですか。大変に結構。ではご命令通り急ぐとしますかなあ。」

ハガネはのんびりと自分から切り落とされた腕に近付きぐぐっと背筋を伸ばしたかと思うと器用に足元の腕を真上に蹴り上げた。

「よよよっと。よしよし。はっはっはこれで元通りですな。では向かうとしますかな。」

まるで何事もなかったかのようにスッと腕をくっつけて元通りの姿になったかと思えばそのままのそのそと歩き出し上をじっと見つめてそのまま消えた。


全く以て気味が悪い男だ。

あくまでも任務であるためにこのような奴等と行動を共にしているが全員が全員異常な性格…いや。異常な性質をしているのではっきり言って不快な感情を押し殺す日々だ。

どうして私はこのような屑共と一緒に行動をしないといけないのか。


まあ考えていても仕方がない。

結局のところ今の自分にできる最善を尽くし続けるしかないのだ。

たとえ宛がわれた人員が全く他人の言うことを聞かない屑とカスばかりだったとしても計画が失敗すればそれは私の責任となる。


ならばある程度の不確定要素を全ての見込みそのうえで計画を完遂していくしかないだろう。

全く不愉快この上ないが仕方があるまい。


さて。次はラクネのもとへ行くとしよう。




─────────────────────────────


ロクスケさんは戦闘において逃げるということを殆どしない。

そもそもがとっても強い人であるので逃げる必要がないという場面が多いことも理由の一つでもあるのだが。

ロクスケさんは自分より格上との戦いを悦び愉しむ傾向にある。


私と初めて会った時も勝ち目がないと理解しながらも真っ向から挑んできたしセンゴクでは自分より圧倒的に格上の存在であるゲントクさんや他のダイミョウ達を相手にして連日連夜負け続けていたらしい。


そんなロクスケさんが。今回現れたハガネと名乗る不気味な存在を相手にした時には一目散に逃げを選択した。

正直なところそんなに強いとは思えない敵だったにも拘わらずだ。


…流石の私でもそれが異常事態であるということは理解できた。


ロクスケさんはこの短期間で驚くほどに強くなった。

色々な六道の技術を身に着けたというのもあるがそれらを全く使わなかったとしても以前とは比べ物にならないほどに強くなっている。

以前からハチャメチャに強かったが技のキレも身のこなしもこの現世に来る前より圧倒的に洗練されている。

きっと今の私など足元にも及ばないほどの強さだろう。

短期間であそこまで以上に強くなるには様々な経験を積み色々なことを考え数多くの敗北の中から貪欲に何かを学び続けていたのだろう。


その経験からあのハガネと名乗る敵をみて逃亡を判断した。

たった一人を相手にだ。

いや、もしかしたらそもそもあの場に敵が一人だというわけでもなかったのかもしれない。

…私達が戦う相手というのはいったい何者なのだろうか。


そもそも以前に隔世でコトさん達と見た侵略者とは全く様子が違う。


ああ。わからないことだらけで混乱してきた。

そもそもが私は今きっと冷静でないのだろう。

…ロクスケさんを見習ってきっと私も色々な経験を経て成長をしないといけないのかもしれない。


いや。私もこの現世に来て様々な経験を積んである程度は強くなったつもりではあるのだけど。

単純な戦闘力の強さではない。

…ロクスケさんのような強さを手に入れていく必要があるのだと思う。


「よしよっし!そろそろつくころだ。なにごともなくつきそうで何よりだわな。わはは。」

…特にカネズミさんを始めとしたダイミョウの人達から学ぶことは多そうだ。

何しろ沢山の死線を駆け抜けてきた経験豊富な戦士達だ。


今だってかなり危機的な状況のはずだがカネズミさんやリンドウさんから動揺は感じられない。

きっとロクスケさんは彼らと行動を共にして沢山の物を得たのだろう。

…いや私も別にギルドで遊んでいたわけではないのだけど。

基本的には戦わず…自分の得意な料理や農耕ばかりに力を入れていたのがきっとよくないのだろう。


私は。もっと強くならなければいけない。

『魔王』という能力が強いだけではだめなのだ。

私自身も強くなり…私の中の『魔王』を受け入れて全力で利用する。

そして『魔王』以外のあらゆるものも利用して。全力を尽くす。

きっとそれくらいの度量を持たなければいけないのだろう。


強くなければ何も守ることはできないのだから。


「よし。ついたな。お。もう全員揃ってんのか。ダイミョウがこんだけそろえばまあひとまずこの場はどうとでもなるか。」

私達がセンゴクの拠点につくとセンゴクの戦力は拠点に集められていた。

どうやら他のダイミョウ達には集合命令がでていたらしく全員が駆けつけてきたらしい。


「…。おぉ。知らない人も結構いるなあ。」

…あらためてこれだけ強い人たちが揃っているのを見ると少しだけ気後れしてしまう。

だがそうも言ってられない。

私達はこれから肩を並べて戦わなければならないのだ。

ついこの間までは強大な敵であったけれども彼らは今や強大な味方なのだ。

一緒に戦う私も気後れしてはいられない。


「やぁやぁ。ロクスケにメルナちゃん。待ってたよ。話は聞いたよ。3人については残念だったねえ。」

ゲントクさんが優しい口調で話しかけてくれる。

しかし仲間をやられたこともあってかその表情は戦闘におもむく真剣な表情だ。

「遂に本格的な戦闘が始まるんだねえ。がはは。身震いするよ。勝てるかどうかわからない戦闘に挑むときが一番生きているって感じがする。がはは。いや違うな。これから挑むのは楽しむための闘いじゃあない。勝ち取るための闘いだ。」


ゲントクさんは私の目をまっすぐに見ながらこちらに手を差し出す。


「このボク、ゲントクを始めとした戦闘集団センゴクの全員は団結し。強大な敵と全力で闘うことを約束しよう。よろしく頼むよ。」


…私も覚悟を決めなくてはいけない。

もう既に戦闘は始まっているのだ。

まずはこの手を取りしっかりとセンゴクのみんなと協力をして敵と戦わなければいけない。

「ええ。こちらこそ…よろしくお願いします。」



「ちょっと待ったぁ!!ちょっと待ってくれ!!」


突然の大声。

驚いて声のしたほうを見る。

するとそこには…え?ヨハネさん?

ボロボロの服で体中が汚れあちこちに傷やケガをしているヨハネさんが肩で息をして息も絶え絶えといった様子でこちらを見ていた。


「頼む!待ってくれ!その手を取らないでくれ!その手を取ってしまったら…この世界は終わってしまう!」


多忙につき更新が遅れまして申し訳ない…!年が明けましたら…なんとか…!

エタるのはしないです…!何とか書き切りますので…!


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