素質は生かされなければならない
ノブレスオブリーシュという言葉をご存知だろうか。
高貴なるものには責任や義務が生じるという意味合いの言葉らしい。
まさしく私のためにあるような言葉だろう。
私はすべてを背負うために生まれてきた。
私はすべてを助けるために生まれてきた。
私はすべてを守護るために生まれてきた。
そう、私は最早個人ではなく人類という構成物の一部であると言える。
個であることに喜びは感じない。
全であることにこそ喜びを覚える。
この世界にはなぜか世界よりも自分自身を優先するという愚を犯す人がいる。
自分以外の数多くの沢山の人間よりも自分一人を優先するというのは全く持って理解しがたい行動原理だ。
なぜ自分一人が為に他の1000人を不幸にできるのか。
なぜ他の1000人の為に自分が不幸になることを望めないのか。
なぜ他の一人が幸せになるために自ら不幸をつかみ取ることができないのか。
世界が幸せになるというのは実はそんなに難しいことではない。
一人が1000人の…いや一人が2人以上の為になることを望んでする。
それを全員一人残らず行えばそれだけで世界は幸せになれるのである。
なぜ。そんな簡単なことができないのか。
なぜ。わざわざ他人よりも自分を優先してしまうのか。
なぜ。どうしても他人を優先できないというのならそのまま死を選べないのか。
だってそうだろう?
他人を不幸にするだけの個人など世界が必要としないのだから。
世界が必要としていない個人をなぜ世界がわざわざ救う必要はないのだから。
高貴であり。力を持ち。実行する機会を得られた。
私は世界のマイナスを消していく義務がある。
マイナスを消してプラスを増やすことでしか人類は幸せになれないのだから。
私はこれからの人生を全てかける。
世界の為に世界のマイナスを全て消すことに。
さて。どうやら目的地へはあと少しで到着するようだ。
それでは計画通りに、あの星を滅ぼすことにしよう。
さあ戦争を始めようか。
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ミヨちゃんと二人でボードゲームで遊び始めてもう結構な時間が経過した。
色んなゲームで遊んだけど中でも私はチェスが大変に気に入った。
何せ白と黒だからね!欲を言えば将棋のように相手の駒が使えれば私一人で白と黒両方使えたからそのほうがよかったけどそううまくはいかないみたいだね。
いまだにミヨちゃんには一度も勝てていない。
定石や戦法を教えてくれながらやってるから私は最初に比べるとかなり強くなっているはずだが全く勝てていない。
たまあになんか勝てそうなタイミングがあるからそこを全力で突破しようとするんだけどそこの突破は大抵いつも許されることはなくそのまま僅差で負ける。
ほとんどの勝負は僅差でぎりぎりのところで負けるので「このまま続ければ勝てる!!」と思って何度も挑むんだけれど全然勝つことができない。
…どうやらミヨちゃんは相当に性格がわるぅーーいようだ。
これだけやってわかったことはどうやらこのゲームは一か所を集中して見るのではなくって全体をぼんやりとみて雰囲気やニュアンスをつかみ取る必要があるらしいということだった。
「王手ですよシロクロさん。」
「ふぬぅ」
そしてこのチェックというのがあまりにも厄介だ。
対応をしなければ死ぬしかないという一手を打たれるとそれへの対応を強制されることになる。
目の前の出来事への対処と全体を俯瞰しての調整の両方が必要になるということだ。
「うむむぅ…。これで…どうだ…?」
「うふふ。これで詰みです。また私の勝ちですね。」
「ぐぉーーーっそっちかぁーーーー!まぁーけぇーまぁーしぃーたぁー!」
私はその場で頭を抱えて後ろにドスンと倒れる。
「ううむ。勝てぬのう。」
「また私の勝ちですね。」
「『鑑定』の固有…やはりかなり厄介であるか…!」
「うふふ。そうかもしれませんね。シロクロさんも大変お強いですがまだ私のほうが強いみたいです。」
「ぬぅ…ああそうか!わかったぞ!私も固有を使って戦うべきだったか!」
「えっ?そんなことできるんですか?」
出来そうか出来なさそうかで言えば出来なさそうではある。
そもそも私自分のこの固有っていうのが何なのかいまだによくわかっていないしねえ。
『狂想』だったっけか。我ながらよくわかんねえ固有だよなあ。
ただまあ実際に存在している以上発動をしようと思えば発動はきっとできるんだろう。
今までやったことはないし発動したからどうなるのかっていうのはよくわからないけど
「私はもうきっとこれ以上ミヨちゃんに負け続けることに耐えられない!」
「すなわち強制発動!いでよ!『狂想』!」
…使い方はよくわからないけどきっと強く想い願うことで何かが起きるんだろう。
まずはその第一歩として『狂想』を発動してやるんだと心の中で強く想い願う。
ああ。頭の中が段々と。みょんみょんうにょうにょギュインギュインとしてきた。
「ああ。そうかそうだった。思い出したし思いついたぞ。時間ももうないしこのまま思考をまっすぐに進めよう。」
「ふぅぉぁああああああ!全身全霊!やってやるぜぇぇぇえええええ!」
私は目の前にあるボードゲームについては完全に忘却し一つの結論に達した。
「よおしよおしよおし!答えは駒だったわけだ!いざゆかん!白黒熊ナイト!」