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雨と魔王と山間の城

雨が降っている。

普段は乾燥しがちなこの国で。

連日連夜降り続いている。

もう降り始めて3日になるだろうか。


室内にいてもわかるほどに激しい雨だ。

外に出れば数メートル先も見えない程だろう。

こんな激しい雨の中を出歩く人もおらずセンゴクの町は雨の降り続く音だけが聞こえていた。


街の近くには山があった。

その山は複数の山が重なってできたような山だった。

麓からは見えないような山と山の合間にひっそりと城が立っていた。


その城は真新しく。

最近できたばかりのような城であった。

近くの町に住む人でも、その城の存在を知る人はいないだろう。


「あなた。いったいどういうつもりですか?こんなところに閉じ込めて。」

「…あなた達は敗北したんですよ。」

「…あなたに負けたつもりはありません。…まさかこんな屈辱を受けるとは。」

「屈辱だなんてとんでもない。あなた達のためを思ってですよ。」

「完全に策にはまりそのうえで一対一で打倒され更に施しを受ける。…これ以上の屈辱がありますか?せめて一思いに殺してもらったほうがありがたいくらいですよ。」

「…そう言わずに…仲良くしませんか?」

「ああ。そうか。ここ数日町をにぎわせている噂…あなたの事だったのですね。」

「噂…ですか。なんの噂ですか?」

「ギルドの魔法使いに王が現れたという噂ですよ。」

「王…?ですか?」

「王は王でも…魔王ですよ。ギルドの魔女だけではなく魔王が現れたという…あなたが…そうなんですか?」


そう。私である。

いや…魔王では…ないのだが…。一応…。

「おうおう。この方をどなたと心得やがる!こちらにおわす方こそが世界を統べるまさしく魔王!メルナさまだぞ!」

「…わたくしは…こんな意味の分からない奴に負けたのですか…。」

「あっはっは!そうだな!ミドウ!お前は俺と一対一の真剣勝負をして負けたんだ。現状を嘆くくらいは許してやってもいいが敗者は敗者らしく大人しくしてな。」

「…おまえは…本当にあのロクスケなのですか?まるで別人のような身のこなしではありませんか。」

「ま。俺も成長しているってことさ。お前を相手にここまでやれるとは思っちゃいなかったがな。」

「一つ。質問をさせてください。…私は何人目ですか。」

「おう。7人目だな。他の奴らもこの城にいるよ。まあしばらくしたらある程度自由にはさせてやるからもうちょっとだけ我慢しておいてくれや。」

「はっきりと言っておきましょう。敗北はしたもののわたくしはあなた達に協力する気は全くない。」

「そうかい。それじゃあ協力してくれる気になったらいつでもいいから声をかけてくれや。」




─────────────────────────────


「ああ。メルナさま。おはようございます。あなた様の耳に入れておきたい情報というものがありまして…お時間いただいてもいいですか?」

「情報ですか…。それはどのような情報ですか?」

「わたくしたちの総大将。ゲントクについてです。」

「…いいんですか?そんな簡単に話してしまって…。」

「もちろんです。…あの人の場合。むしろそのほうが喜ぶという可能性すらあります。」

「自分の情報をばらされて喜ぶんですか…?…変な人ですねえ。」

「そうなんですよ。あの人は自分よりも強大な敵の存在を何よりも喜びます。」

「それでは遠慮なく聞かせていただくことにしますが…。まずはミドウさん本人について聞かせてもらってもいいですか?」

「はい。もちろん。喜んで。」



─────────────────────────────


「いやあ。まさか我々ダイミョウが全員ロクスケ殿一人に負けるとは思いもしなかったでござるよ。」

「お前ら本当に全員強すぎるからな…。俺が勝ちはしたもののあくまでも大抵の相手には運よく勝てたとしか思ねえからなあ。あらためてお前ら全員バケモンだよ。」

「ぬはは。そのバケモノあいてに一歩も引かずに全員を一対一で打ち負かしたロクスケ殿にだけはいわれたくないでござるよ。」


「そうだな。あとはゲントクさえ捕縛できれば俺たちの完全勝利か…サルタヒコ。お前が知っている情報も全部教えておいてくれ。」


こうして私は…この現世でも魔王として降臨する羽目になってしまった。

…どうして私はどこにいっても最終的には魔王であるということになってしまうのだろうか。

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