頑張った後に食べる甘いものはとっても美味しいんですよ。
ぼくがここに来てから1週間が経った。
何回か帰ろうかなって力を使おうとしたけどなんでか使えなくなっていた。
ただまあここにいると毎日毎日美味しいものがお腹いっぱい食べられるから帰れないならまあしばらくはしょうがないかなって思ってる。
用事が済んだら帰してくれるってロクスケは言ってたしまあ大丈夫だろう。たぶん。
今ぼくはエルフのメルナおねーちゃんやドワーフのザッパや巨人のトルーケンとか色んな人達と一緒に『のーさぎょー』っていうのをやっている。
働かざるもの食うべからずとメルナおねーちゃんに言われて仕方なくやってみたけど思ったよりも楽しかったので毎日頑張ってる。
『のーさぎょー』が終わったらみんなでおやつを食べるんだけどそれがすっごく美味しいからみんな頑張ってるんだと思う。
ギルドの奴らはみんな魔法を使うって知ってたけどメルナおねーちゃんは美味しいものを作る魔法が使えるんだと思う。
「魔法じゃないですよ」っておねーちゃんは言ってたけど。
あんなにも美味しいのは絶対に魔法に間違いない。
ぼくがこれまでセンゴクで食べてたのはカチカチになるまで干したしょっぱい干し肉とかだった。
たまーにゲントクとか大人達が取ってきた新鮮な魔物の肉を焼いて食べたのもまあまあ美味しかったけどこっちで色んな美味しいものを食べた後だとわざわざ食べたいとは思えない。
「さて。それじゃあ作業もひと段落したことですしおやつの時間にしましょうか。」
「うぉおおおおお!!」
「いぇあぁぁぁあ!!」
「がぁあああああ!!」
何故かおやつの時間になるとギルドの奴らは雄叫びをあげる。
「やぁあああああ!!」
ぼくも面白いので一緒になって雄叫びを上げている。
「ふふふ。今日はプリンを作りましたのでみなさん手を洗って来てください。」
「「「プリンぁああぃぇああああぁああ!!!!」」」
プリンと聞いてギルドの奴らもぼくも半狂乱になってさらに大きい雄叫びを上げる。
手を洗っておやつを食べるために広場に行くとテーブルとたくさんの椅子と何故か食べる気満々で座っている魔女がいた。
「グィネヴィアだー!またいる!『のーさぎょー』してないのにまたおやつを食べる気なのか!この魔女め!」
「あらあらシンクン。みんなで農作業をしてたのかい?それは大変だったねえ。実はあたしも大変な仕事をずっとしていてさぁ。へとへとなのさ。疲れたからここで休憩していただけなんだけれど…もしかしてみんなでなにか美味しいものでも食べるのかい?それならあたしも仲間に入れてくれよう。大変な仕事をしたのはあたしもあんたも同じだろう?」
「そうやっていっつもおやつの時間になるとくるじゃんか!騙されないぞ!」
「そうだそうだ!おやつ食べてえなら農作業しろぉー!」
「おやつだけ食べに来てんじゃねっぞー!年の割に大人げねえぞー!」
「そうだそうだー!」
「るっせえんだよおめぇらよぉ!あぁん?いいだろぉがぁ!あたしが誰の為に仕事してると思ってんだあぁん?あと年の話したの誰だぁ!関係ねえだろうが年齢はよぉ!」
「…グィネヴィアさんまた嗅ぎ付けてきたんですか?」
「おぉ?今日はプリンかい?うふふ。あたしの分もあるんだろう?メルナが作るお菓子はいっつも美味しいからついつい今日も来ちゃったのさ。」
「まあいくつか余分には用意してありますけど…余ったものは頑張った人へのご褒美にと考えていたのですが…。」
「それじゃあ一番頑張ってるあたしがもらうのが筋ってもんだねえ!さあみんなで食べようじゃないか!」
そうしてみんなで大騒ぎしながらプリンを食べる。
メルナおねーちゃんが作ったプリンはトロトロで甘くて『のーさぎょー』で疲れた体にしみこんでいくみたいに美味しかった。
…ギルドには見た目が怖い種族の人達や不気味な服装をした種族の人達が沢山いるんだけどみんなメルナおねーちゃんが作ったおやつを食べているときはニコニコしながら食べていた。
…やっぱりメルナおねーちゃんが作るおやつは魔法なんだと思う。
だってそうじゃなかったらこんなにみんながニコニコ幸せそうに笑わないだろう。