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決着

魔王っていうのは想像以上だった。

楽勝でぶっ殺せるわけじゃないとは思ってたがあまりにも強ぇ。

4人がかりで魔法を使わせなけりゃ勝てると思ってたがどうにも話が違った。

杖なんか持ってるから魔法を使うはずだ。魔力を込めて魔法が発動する間にぶった切ればいい。

そう思ってたが近距離の肉弾戦が強すぎる。

戦闘が始まって一瞬でクリフが杖でぶん殴られて吹っ飛ばされた。

いや。あれは吹っ飛んでなければ衝撃で腕がやられていただろう。

動きに無駄がなくて早えから初期動作が見えねえ。

気付いたら目の前にとんでもねえ速さの杖があるもんだから避けるしかねえしぐるんぐるん回しながら杖の先も柄も関係なくぶち当ててくるから手数も多くて防戦一方になるしかねえ。

いくつかよけきれずに刀で捌いたが岩の塊を受け流してるみてえでこれを手や足に食らったら動けなくなるし頭に喰らったら死ぬ。間違いなく死ぬ。

フェイントも織り交ぜてくるからかなり集中しないと避けらんねえんだけどその猛攻すら片手間だったようで気付いたらヤスケとクリフがやられてた。

ヘルメスの様子もおかしいし何か言われて戦意喪失してたからもうこちらに勝ち目がないことはよくわかった。

だけど勝てねえからって戦わねえのはありえねえ。

俺が負けるのはこてんぱんにぶちのめされた時だけだ。


よく考えたら自分より強い相手に挑むってのは久しぶりだ。

勝てねえにしてもぜってえにまけねえ。

いざ、参る。




─────────────────────────────


なんか勝てない気がしてきた。

どうして一騎打ちなんて受けちゃったんだろう。

帰りたくなってきたな。私の家ここだけど。

「そちらに勝ち目はないと思いますので」とか言っちゃったのすごく恥ずかしくなってきた。

もしこれで負けちゃったらめちゃくちゃかっこ悪いじゃん。

不意打ちしたいけどいつでもどうぞといった手前こちらから殴りかかるのも違うよなあ。

コトさんとミヨさんも見てるらしいしあんまり変なことはできない。

そもそも人間とそんなに戦ったことないから強い人とよーいどんで戦ったら勝つ自信はない。

冷蔵庫にケーキあったよな…疲れたしケーキ食べてベッドでゴロゴロしたいな…。


眼帯さんはというと血走った眼でこちらをじっと見て額に汗をかいている。

どうしようかな…。流石にそろそろ我慢できないし殴ってもいいかな…。

なんて考えていたら眼帯さんが腰を落としながら沈み込むようにこちらにまっすぐ向かってきた。

あ。多分これまずいな。と思って剣を構えている方と逆方向に回り込む。

どうやら読んでいたようで目をこちらを向けて…うおあ!

なんか剣をケースから一瞬で取り出して切りかかってきた。

めちゃくちゃ早い。とっさに後ろに飛びのいていなかったら危なかった。

まあ先手は譲ったのであとは適当に殴って気絶してもらい終わりにしよう。

手加減している余裕はないな…。

グルンと一周しながら横薙ぎに杖を振り回す。後ろに避けたので左手に持っていた石を投げる。

剣で受けたので距離を詰めて足元を杖で払う。ぴょんとよけられた。

杖の魔石が付いた方で胸元を突く。よし当たった。眼帯さんの表情が歪む。

眼帯さんはなんと攻撃を受けながらこちらを切ろうとしてきた。

左手で剣を振ろうとする腕をすんでのところで止める。

後ろに下がって距離を取り一息つく。やばいなこの人強すぎる。

これこのままわざと負けたほうがいいのかな…。

いや…相手は剣使ってるし下手に負けたら殺されちゃうな…。

降参するって言ってもたぶんこの人止まらない気がするしなぁ。

…まあ仕方ない。この手は使いたくなかったけどやるしかないか。


─────────────────────────────


何をやっても勝てる気がしねえ。

渾身の居合はあっさり間合いを見切られて何とか当てようと振り回したがかすりもしなかった。

杖振りを何とか躱したら追撃の石が飛んできた。

それも何とか弾いても足元を狙ってくるので飛ぶしかなかった。

そこに更に突きが来たが流石に空中で攻撃されては避けられねえ。

覚悟を決めて一撃を受けながら刀を振り切った。

流石にこれは魔王でも避けられねえだろと思い渾身の力を込めた。

だが。軽く受け止められた。

今の俺が出せる全力の一振りだったがそれはあっさりと止められ距離を取られた。

息も切らさずこちらをじっと不気味に見ている。

これを相手に持久戦をするしかないのか。

こちらの攻撃は全部あたらないしこちらは重い連撃でじりじりと削られていく。

杖での一撃もめちゃくちゃに重たいが石での攻撃も重くこちらはもう両手がしびれている。

呼吸が苦しい。限界を超えて動きすぎたか。

今来られたらまずい。せめて力いっぱい魔王をにらみつけて牽制する。

しかし魔王はにらみつけることすら俺に許してはくれなかった。

目を離さなかったはずの魔王が目の前から消えた。


何が起きた?どこに行った?必死で周りを見渡し魔王の姿を探す。


「リーダー!まずい!」

後ろからヘルメスの声がして振り向いたがもうそのころには勝負はついていた。

「弓矢を奪われた!」

両手両足を射抜かれていた。

「これで勝負ありですね。すいません少し痛いですが我慢してくださいね。」

背中に強い衝撃を感じた。まずい…意識が…。



─────────────────────────────


手足を弓で射抜いたがまだ動きそうだったので杖で電気を流して気絶してもらった。

さて。残るは一人だ。

このエルフには色々言いたいことがある。

「さて。もう一度聞きますね。エルフさん。」

可能な限り威圧するように話しかける。

「私の事をおぼえてないですか?」

温厚な私でも流石に知らない人のふりをされるのだけは許せない。

「どうですか?思い出しましたか?エルフさん…いや。()()()()()()って呼んだ方がよかったですか?」


ヘル坊はそのまま半べそをかいて泡を吹きながら気を失ってしまった。

泣き虫なのは相変わらずなんですねえ。


─────────────────────────────


目を覚ますと縄でぐるぐる巻きに縛られていた。

なんとか首だけを動かして周りを見てみたが他の奴らも同じらしい。ヘルメスは死んだ虫ような眼をして口が半開きの状態だったが全員呼吸はしている。

どうやら無事のようだ。ヘルメスも生きてはいる。



「目を覚ましましたか。体のどこか痛んだりしないですか?」

いや。俺の射抜かれたはずの手足も治っている。

どうやら全員治療までされているらしい。

「どっこも痛くねえよ…。」

「そうですかそれはよかったです。」

…さすがにこれで負けを認めねえのは無理がある。

理想を言えば近接戦闘で勝負をつけたかったがこっちはそもそも4人がかりで襲い掛かってる。

武器を奪われたとはいえヘルメスは傷一つ負っちゃいなかったし自分の得意な武器で攻撃してくるのを卑怯だとは言えねえ。

これ以上ないくらいに完敗だ。

「俺の負けだ。何でも言うことを聞く。」

「ほう?」

「だから仲間だけは見逃してやってくれねえかな。」

みっともねえのはわかってる。全員殺されても文句は言えねえ。

だけど巻き込んじまった仲間だけは俺が守らねえといけねえ。

みっともなかろうが惨めだろうが男らしくなかろうがこいつらだけは何とか生かしてやりてえ。

「今何でも言うことを聞くと言いましたか?」

「ああいった。男に二言はねえ。俺にできることなら何でもやる。」

「ああよかった。話が早くって助かります。」

どうやら仲間は生かしてくれるらしい。それなら俺は火あぶりだろうが拷問だろうが何でも受け入れる。


「それじゃあえっと…。タタラ・ロクスケさんでしたっけ。そこにいる…ヘルメスさんからお名前聞かせてもらいました。」


「…ロクスケさん。私の代わりに魔王になりませんか?」

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