森を焼く魔王
ギルドに来てしばらく経つけれども。
この現世の食糧問題は思った以上に深刻だった。
「グィネヴィアさぁん…。食料これだけしかないんですかあ?これだけで全員分の食事賄うの難しいですよ…。」
「それでもかき集めてきた大切な食糧だからねえ。…あたしとしてもみんなにおいしいものお腹いっぱい食べて欲しいけどさ。」
この現世の人達は常にお腹を減らしている。
最初は食べていない部分だったりみんなが食べていない食べれられる食材をうまく活用すればなんとかなると思っていたのだけど…。
それらをフルに活用してなんなら私が魔物を大量に狩ってきてなお、全員がお腹いっぱいになるには全然足りていない。
そもそも魔物も周囲の狩りやすい魔物はほとんどが狩り尽くされてしまっているので毎回ある程度の量を確保する為には結構な労力を使ってしまっている。
たまに大物が取れた時にはみんなで大喜びでその全てを食べ尽くすが全員がお腹いっぱいに食べるにはそれでも足りない。
農耕を試そうにもどうやらこの現世には育てられるような食べられる植物はほとんどないらしく苦労してその植物を植えたところで育ち切る前に魔物にほとんど食べられてしまうらしい。
聞いたところによると『連合国』では多少農耕もしているらしいがかかる手間と取れる量を考えると効率は悪く人材と機械が豊富な『連合国』ならまだしも、ギルドではとても真似できるようなものではないらしい。
「と言う事なんだよシロクロちゃん…みんながお腹いっぱいになる方法はないかなあ。」
「ママ…あのね…怒らないで聞いて欲しいんだけどね…!」
「え…どうしたのシロクロちゃん。わけもなく怒ったりはしませんよ?」
「その現世の食糧不足ね…私が原因なんだよ…!」
「…………どういうことですか?」
「あのね…説明すると長くなるんだけどね…!」
そしてシロクロちゃんは科学の発展の為に必要な事だったと言うことを説明してくれた。
…難しくて私にはよく分からない所もあったけど、多分必要な事だったんだろうと言うことはこの現世の文明の発達を見ればなんとなくわかる。
コトさんやロクスケさんの話を聞いていてもよくわかるが、それぞれ方向性は違ってもこの現世の人達は今までの現世の人達とは比べ物にならないほど高い戦闘技術を有している。
このギルドにいる人達は私の知らない魔法をたくさん知っていてグィネヴィアさんなんかは戦場に出れば広範囲に恐ろしくなるほどの被害をだすらしい。
ロクスケさんはセンゴクの軍隊に入りそこの人達に片っ端から喧嘩を売っているらしいが(本人が言うには稽古をつけてもらっているらしい)今の所ほとんど負けているらしい。
あの戦闘狂がまともに勝てない相手ばかりと言うのはそれだけで異常な戦闘力を持っているのがわかる。
コトさんの連合国は個人の戦闘力が抜き出ている人はほとんどいないらしいが統率力は他の陣営とは比べ物にならない程優れているらしいし様々な兵器を持った人達はやはり脅威らしく雑兵でもかなり戦闘力が高いらしい。
「それで…なんとかする手段はないですかね…?なんとか沢山食べ物を確保する手段が…出来ればこの現世の人達だけでできるような手段があるといいんですけど…。」
「ん?ああそれか!それに関しては全然どうにでもできるよ!農業ができればいいんだよね?」
シロクロちゃんが提案したのは焼畑農業だった。
しかしこの世界の植物は普通に焼いたのではむしろ作物を育てるのに不向きな土壌になるらしく必要な手順を踏む必要があるらしい。
まずは一帯の植物を特別な精製水で浄化する必要があるらしいのだ。
浄化は時間がかかるものではなく必要な精製水はそう多くはないのだがこの手順を踏むかどうか精製水を用意できるかどうかで全く結果が違ったものになるんだとか。
…なんでそんな手順が必要なのかは聞かなかったけど多分シロクロちゃんの計画の一部だったんだろう。
方法さえわかればあとは実行するだけだ。
「グィネヴィアさん。作物を育てる手段がわかりました。森を農場にする許可をください。」
「ええ?なんだい突然。言わなかったかい?この大地で何かを育てるなんて…。」
「いえ。問題なくできる手段を見つけたので後は許可だけもらえましたら。」
「…まあ…無駄だとは思うけどそういうんだったら遊ばせてる土地くらいは提供するさ。」
「ありがとうございます。それでは早速取り掛かりますね。」