きっとこれから大変なことになるんでしょうね
「勇者とは!皆の思いを背負って立つもの!」
「勇者とは!光り輝く運命を背負いしもの!」
「勇者とは!悪を必ず打ち倒すもの!」
「悪の魔王よ!貴様は確かに強い!打ち倒すことは困難であろう!」
「だが!私は勇者だ!貴様のような打ち倒すべき困難を乗り越えてこその勇者であろう!」
「この七色に輝く剣は!貴様を打ち滅ぼす正義の剣だ!」
「さあ!全力をだすがよい!こちらも全力で持ってお相手しよう!」
「この光の勇者である『☆★☆★☆★☆』が貴様を打ち滅ぼしてくれるとも!!」
目の前のいろんな意味でまぶしい人はどうやら勇者らしい。
悪の魔王である私を打ち滅ぼさんとキラキラとしている。
…確かに今回は言い訳のしようもないほどに『魔王』の力に頼ってはいるが…。
んー。
納得いかないよなぁ…。
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みんなで夜の食事を終えて私は自分の個室に戻った。
一応隔世にきてすぐだし慣れない環境だからなぁとシロクロちゃんに一緒に寝るかどうか聞いたが自分の個室で寝るらしい。
…いいもん。ママひとりで寝るもん。
それからしばらくして、カンナイホーソーでコトさんから今回の現世が終わりを迎えた事が告げられた。
人はいつかは死んでしまうし世界はいつか滅びてしまうもの。
そう思いながらもやっぱり少しだけ寂しいなと感じてしまう。
きっと私は贅沢なのだろう。
色んな現世に色んな人がいて、みんなと仲良くしたいと思うしそれらみんなと出来れば別れたくはない。
でも、そんな事はどうしたってできっこない。
頭ではわかっているしちゃんと納得もしている。
それでも、求めてしまう。願ってしまう。
みんながずっと生きていてみんながずっと私と一緒に楽しく過ごせないかなって。
…でも以前に比べれば私の周りはとても賑やかでとても楽しくなった。
コトさんミヨさんはとてもいい人達だしロクスケさんはなんだかんだで頼りになる。
そして何より今回の冒険ではなんと私に娘ができた。
私は。私の人生にはこれから先そう言う事とは無縁だと思っていた。
きっかけはその場の勢いだったけど、こうしていなければシロクロちゃんはこの場に居なかったのかなと思うと、あの時に私が育てると言って本当に良かったと思う。
ただ。これから先も色々な危険な事が起こる可能性はある。
その時に、私はシロクロちゃんを守ってあげられるだろうか。
例えば前回の時のミヨさんのように。敵に攫われたとして私は冷静でいられるだろうか。
…少なくとも次の隔世では私はずっとシロクロちゃんの側にいることにしよう。
そう決心した私はお布団の中へ入り。
また明日から始まるであろう冒険に備えて眠ることにした。
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メルナママは急に部屋に来て一緒に寝るかどうか聞いて来ちゃったからびっくりしたよ!
どうやら私と一緒に寝たかったらしくって呼びに来たみたい!
メルナママは甘えん坊だからなぁ!いい加減子離れしてもいいとおもうんだけどねえ!
いったい私の事をいくつだと思ってるんだろう!メルナママには困ったものだね!
それにしても音もたてずにスッと部屋に入ってきたときには心臓飛び出るかと思っちゃった!
もしかして私の計画がバレたのかと思っちゃったからね!
メルナママは鋭いんだか鈍いんだかわかんないから動きが読めないにゃあ。
こっちもどう対応していいのかわかんないから行動に一貫性が欲しい!
にゅふふ!ナニハトモアレ!楽しみだなぁ楽しみだなぁ!
案の定私が居た世界はすぐに終わりを迎えたみたいできっともう新しい世界が生まれているんだろう!
あの世界もいろいろあって最初のうちは楽しかったんだけどすぐに飽きちゃったんだよねえ!
結局のところブライトママが一人で作りあげた世界だから構成する要素が少なくって物足りないんだよねえ!
個人の限界っていうのがあってそれの体現があの世界なんだろうねえ!
いあいあ!愚痴ってもしょうがないし後ろを見ても仕方ない!
だってこれから私も世界を創るんだもの!
それにしてもなんにしても世界を作るって言うのはあんまりにもスケールでかくてドキドキワクワクしちゃうよ!
どんな世界が生まれたら楽しいかなあ!色々考えちゃうよなあ!楽しい世界がいいよなあ!
楽しさっていうのはやっぱり自分自身で作りたいっていうのはもちろんあるし色んな人がいろんな思いで作り上げていくこともやっぱり必要だと思うんだよね!
趣味に全力の世界を創るかそれとも悦楽主義者だらけの世界を創るかいっそのことすべてを破綻寸前まで振り切った世界っていうのも楽しそうよねえ!
いあいあ!でもでもメルナママは宇宙からの侵略者を倒せる世界を作らないとって言ってた!
思い出した!そうだった!侵略者を倒す世界だ!
そうなるとどうあるべきかな!あれはこうあったほうがいいしあれはこうしておくべきだろう!
ああ!これはこうしておくべきだね!あっちはどうしておこうか!
世界を創るってすごいなあ!ああ!すごいなあすごいなあ!
ああ!ああ!いあ!いあ!やばいやばい!楽しくなって来たぁ!
例えばこれをこうしたとしてもどうなるかはわからない!
結果が分からないこそ実験は楽しいんだよねえ!
創造端末もこれなんなんだよぅ!
なんでも作れるって!なんでもってなんだよぉおぅ!
人も創って物も創って何もかもを創って!!
ああぁぁぁあ!
やっちゃうか。
情報収集とシミュレーションだけのつもりだったけどもうこんなの我慢できるわけがない。
もう後先考えないで先の事をひたすらに考えちゃおう。
先の先の先の先の先の先の先の先の先の先の先の先の先の先の先を考えて。全部やっちゃおう。
結果がどうなるかはわからないけどやっちゃおう。
あれをこうしてそれをこうしてこれをああしてあっこをああしてここをああしてそこをああして。
こうなるからそうしてそうなるからああしてああなるからこうして。
捏ねて捏ねて捏ねて捏ねて。
混ぜて混ぜて混ぜて混ぜて。
伸ばして練って伸ばして練って。
あは。
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「みなさん!緊急事態です!起きて集まってください!」
ふぁお。
え?もう朝なの?んん?まだこんな時間?
えっ?いったい何なの?
緊急事態?この隔世で?
急いで身なりを整えてからコトさんの指定した部屋へ集まると私以外の人はもう集まっていた。
…いや。シロクロちゃんがいないな。まだ寝ているのかな。
「お集まりいただいてありがとうございます。みなさん。…えっと何から話そうかな。」
「えっと…コトさん。まだシロクロちゃんが来ていませんが…。」
「はい…ではそこから話しましょうか。端的に言いますと」
「シロクロさんが一人で隔世から現世へと移動して…やりたい放題やっています。」
「ああなんだ。シロクロちゃんは居るんですね。」
よかったよかった。シロクロちゃんがいなくなって大変なのかと思ったが…。
うん?あれ?何かおかしくない?
「…え?今シロクロちゃんは現世にいるんですか?なんで?」
「詳しくはわかりませんが…シロクロさんは今すごく楽しそうに…世界をめちゃくちゃにしていますね…。」