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魔王が生まれた日 ~後編~

神はまず天と地とを創造された。

そして色々あって自分の姿に似せた人を男女に分けて作った。

他にもいろいろやって全部終わるまで6日間かかったのでその後の1日をお休みの日にした。

だいたいそんな感じだった。


3日間かけて7つ全部の集落に人を作り終えた。

第一の氏族 森林の民森人族(エルフ)

第二の氏族 炭鉱の民鉱人族(ドワーフ)

第三の氏族 草原の民獣人族(ワーアニマル)

第四の氏族 荒野の民鬼人族(オーク)

第五の氏族 放浪の民妖人族(シルフ)

第六の氏族 海洋の民魚人族(マーマン)

第七の氏族 大地の民人間族(ヒューマン)


コトさんミヨさんに似せた人間族を作ろうと思っていたのを最後まで忘れていたので第七の氏族は適当な場所にパパッと作ってしまった。

草原でも荒野でもない大地って何だろう。

まあいいか。


住みやすい場所は他の人たちに譲ったので私は山の上に簡単な小屋を建てて住むことにした。

ひとまず整地だけはある程度済ませたけどまだまだ狭いし広げていかないといけないな。

山を削ると石や砂なども大量に手に入るので立派な建材になる。

コトさん達が作っていた『農場』も作りたいけど他の人に見られたらまずいと思うし広さが必要だなあ。

神様が住んでるってなるわけだし立派な建物を建てよう。

創造端末はある程度の広さの家は作れるようだけど私が作りたい大きさの建物は流石に無理みたいなので自分で作らなければいけない。

小屋でのんびりとベッドに寝転んで色々と考えているうちにだんだんと眠くなってきた。

6日間結構ぶっ通しで働いたので思ったよりも疲れているようだ。


「まあ今日はこのまま寝ちゃおうかな…。」

ひとまず食べるものはあるし人類の皆も最低限しばらく生きていける程度に色々教えてあげてある。

ぼんやりと他にもいろいろ考えているうちに私は眠りについた。






─────────────────────────────


「コトさんコトさんメルナさんはどうなりましたかね?」

「ひとまず世界を加速させてるのでメルナさんから連絡が来るか世界の転換期が来るまでは何もできないですからねえ」

「なるほど~。今どれくらい時間が経ったか確認とかってできないんですか?」

「それなら端末からできますよ…みてみましょうか。」

「みましょうみましょう」

「えっと…えっ?もう50年たってますよ???」





─────────────────────────────



ついに念願だった家が完成した。

山の上部を切り崩しながら石を集め創造端末で作った道具などを駆使しながら立派なお城が出来上がった。

…建物が出来上がる時の達成感は何物にも代えがたい。

お城が出来上がったのでお祝いに色々な集落を回って家具をそろえることにしよう。

お金は…これくらいあれば足りるかな?

念のために多めに持って行く事にする。

お金は最初の頃に創造端末で作りみんなに配ったので私はいくらでも作れる。


私は近くにある人間族の集落に向かった。

おお。規模が大きい商売区域(マーケット)ができている。色々な種族のお店が出ている。

この規模の商業区域(マーケット)ならここだけでかなり揃いそうだ。

森人族(エルフ)が作ったテーブルに椅子はいかがかね!上質な木を使っているよ!」

鉱人族(ドワーフ)が作った武器に鍛冶道具に食器など一級品ばかりを取りそろえているよ!」

獣人族(ワーアニマル)やモンスターの毛を使った織物や糸はどうだい?安くしておくよ!」

それぞれ種族の特性を活かしたものを作り生計を立てているようだ。

売っている商人は色んな種族がいるが人間族(ヒューマン)が一番多いように見える。

まあ人間族(ヒューマン)の集落だし当たり前か。


妖人族(シルフ)特製の魔石を使った数々の逸品だよ!エルフのおねーさん似合いそうだね?どうだい?」

兎の獣人族(ワーアニマル)の女性商人が話しかけてきた。見た感じまだ少し幼さもあるので10歳かそこらだろう。

「うわぁ、すっごくきれいですねぇ。このセットの指輪とネックレスは欲しいですね…。魔石を使った調度品はありますか?」

「お。おねーさんお目が高いね!これとこれはセットで金貨5枚の所を3枚におまけだ!魔石を使った調度品は珍しいけどこの火の魔石を使ったランプはどうだい?魔力を込めると一晩は明るいよ!」

「では全部下さい。ランプはいくつありますか?」

「10個あるが…ランプは一個金貨2枚だから合計金貨23枚だぞ?払えるのかい?」

「ではキリよく金貨25枚でお渡ししますね。あとで馬車で取りに来るのでその時にお金と交換でいいです?」

「うわーお姉さん金持ちなんだなあ!それじゃ絶対また後で来ておくれよ!待ってるからね!」

コロコロと可愛く笑うウサ子さん(仮)に私まで笑顔になってしまう。他のお店でもいくつか目星をつけているのであとでまとめて購入しよう。

うふふ。私の作った世界はすごいなあ。


一通り買い物を済ませたので馬車に乗って私の城がある山の(ふもと)を目指す。

うふふ…。買い過ぎちゃったな…!馬車もいいのが売っていてよかった。

視察もかねてのお買い物だったけど集落には活気にあふれていたし色んな建物ができていたしすごく順調に発展してきている。

卵から生まれた第一世代の寿命は50年ほどでありもうそろそろみんな役目を終えている時期なので私の事も誰も知らない。

旅人に見えるようにたまに見かける旅のエルフを参考に服をあらかじめ作っておいてよかった。

そんな知らない旅人相手でも親切な人が多かったのもきっとみんな幸せに暮らしているからなんだろう。

そういえばそろそろコトさん達への連絡もしておこう。

最初はいい報告にするって決めていたのだ。

お城に帰って手に入れた素敵な家具たちを部屋に配置し終わったら連絡をしよう。

久しぶりのコトさんとミヨさんとの会話は楽しみだなあ。




─────────────────────────────


ミヨさんと二人でせんべいを食べていると端末に着信が入った。

「おー。メルナさんから連絡来ましたねぇ。」

「ですね…なんかちょっと応答するの怖いですが…」

「きっといい報告ですよ!」

「そうですよね…!一応経過時間を確認してからっと…。」

「えっと…100年経過してからの連絡?になるのかな?」

100年も連絡してこないのは…流石にちょっと怖いよな…。



─────────────────────────────


コトさん達への連絡は一旦後回しにすることにした。

帰り道に商人と出会ったので話をしていて噂を耳にしたのだがどうやら各地で災害が起こっておりそれを引き起こしている魔王という悪い人がいるらしい。

連絡をするにしても魔王の件を片付けてからでいいだろう。

そんな悪い人がいるなら正直放ってはおけない。

創造端末の転送機能で荷物はお城に送っておいて情報収集のために色々な集落を見て回ることにした。


それぞれの集落を回っていろんな人から話を聞いてみたが…どうにも様子がおかしい。

魔王たる人物を実際に見た人が一人もいないのだ。

しかも話を聞いてみる限り魔王が引き起こした災害はどれも台風や山火事や大雨や竜巻など自然災害としか思えないほどの規模と内容なのである。

私が知る限り天候を変えるレベルの魔法というものはないはずだし話を統合すると短い期間にとんでもない距離を移動しながら各地に火をつけて回っていることになる。


これはどういう事だと思って色々な集落を回っていたらある日鬼人族(オーク)の少年からとんでもない話を聞いてしまった。

「昔うちのじっさまが話していたんだが何でも作れるし何でもできるすごい人がいたらしいんだわな」

「その人が手を一振りすれば風が吹き大地が割れて草木はすぐに燃えて消し炭になったというこった」

「ある日村をとんでもない嵐が襲ったんだわ」

「空はピカピカ光るし風はごうごうと吹くしとんでもない量の雨が降ってきた」

「こんなことできるのはあの人しかいねえってうちのじっさまが言うもんでなるほどあの人は魔王なんだなと」

「それからも村をいろんなわざわいが襲ってきたからみんな魔王はこええこええってなってんだよ」

「他の種族の人にも聞いたらみんな心当たりあるらしくってこんないろんな場所をめちゃくちゃにするのはやっぱり魔王はとんでもない力を持ってるんだなってなみんな言ってるわ」

「魔王っていうのはおそろしいわなあ」

「おねーさんもそう思うだろ?」

「いやあ…。本当に恐ろしいですねえその魔王っていう人は…。」

「だろ?おいらぁ将来魔王をたたっ切ってやんだ!」

「それはすごいですねえ…がんばってください…。」

…なんということでしょう。

いつの間にか私は魔王になっていて色んな自然災害は全部私のせいになっていたのです。


そこから50年は必死に頑張った。

頑張ったがどうにもならなかった。

嵐や山火事を防ごうにも私にそんなことができるはずがない。

たまに集落に顔を出して情報収集をしつつ魔王って実は悪い人じゃないんじゃないかといい噂を流そうと頑張ったりもした。

だが私一人の意見でもはやどれだけいるかもわからない人達の印象を覆すことなどできるわけもない。

なんとか私=魔王であるとばれないようにあそこの高い山は危険だから近寄らないようにと警告していたらあそこの山には魔王が住んでいて危険だから近寄らないようにという噂にいつの間にか変わっていた。なんでだよおおおお!


幸い場所がばれていてもあの険しい山の上まで来るのは難しかったようでしばらくは誰も来れなかった。

しかし私は人類の成長をなめていた。

50年たった今人類は険しい道を超える方法を編み出し落ちたら決して助からないほど深くて広い谷に橋をかけて岩壁をつかむこともできないほど切り立った崖を上りついには上までたどり着く4人組が現れた。


応接間の椅子に座り精神を落ち着けるために果実酒を飲みながら必死で考える。

考えたがもうすぐそこまで来ているようで門の外から話し合う声が聞こえてくる。

話し合いというよりかは怒鳴りあっているので話している内容はまる聞こえだ。

これはもうどうしようもないのでコトさんへ連絡することにした。

…最初はいい報告にするって決めてたんだけどなあ…。




─────────────────────────────


「ということで私魔王って呼ばれてるらしくて」

いつだって想像をはるかに上回ってくるなあ…もう慣れてはきたけどさすがに面白すぎる。

「私…どうしたらいいんですかね…?」

ただまあメルナさんにもできないことはあるんだなあと当たり前のことを知って安心する。

「そうですねえ…」

だから一生懸命に頭を働かせて最適な答えを考える

「えーっともう時間がないんですよね?」

「そうなんですよ…。もう門の前にいて…。」

「じゃあ追い返すこともできないですよね…」

ならばこれしかないんじゃないかな

「じゃあメルナさん」

「はい!何か方法があるんですか??」

「ひとまず魔王としてその人たちと戦ってください」

「え?」

「勝っても負けてもいいですが殺さないように気を付けてくださいね」

「それはそうですが…えっ?勝ったらまずくないですか??」

「それはまあ大丈夫です。とりあえず終わったらまた連絡してください。」

「まって…いや…ええ…?」

「こちらからミヨさんと二人で映像を見て応援していますので頑張ってくださいね」

魔王メルナの戦いが!今始まる!

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