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魔王と哀れなピエロ~前編~

私は2人を連れて拠点である白の街へ帰ってきた。

地下を走っている乗り物はいろいろな場所へ行けるようだがここの白の街へ直通の道もあったようなので操作はお任せして戻ってきた。


2人は警戒していた様子だったが拠点に戻り誰も私達に敵対していない様子をみると安心したようで用意してあげたご飯を一度に平らげた。

後は着替えやお風呂の準備などをしてもらってしばらく経つと2人とも綺麗になって戻ってきた。


お腹いっぱいになってお風呂に入って安心したのか2人は用意したベッドですぐに寝てしまった。


これで少しは元気になってくれるといいんですけど。


さて。一通りやるべき事をやった所でコトさんへの連絡を済ませてしまおう。


「コトさん…メルナです…応答お願いします。」

「はい、こちらコトです。聞こえています。」

「えっと…これからどうしましょうか?」


「そうですね。ひとまずは…様子見でしょうね…。」

「今のまま戻るとまずい感じですか?」

「まずい…というほどの事ではないですが…そう言えばメルナさんには説明してなかったかも知れないですね。」

「えっと…なんでしょう?」


現世(ウツシヨ)から隔世(カクリヨ)への帰還方法ですが。前回メルナさんは記憶を持ち越した状態で帰ってきていますよね?」

「そうですね。特に記憶に問題はなかったかなと思います。」


「実はもう一つ手段として…現世(ウツシヨ)で起こったことの記憶を全て消して現世(ウツシヨ)に行く前の状態に戻す帰還方法があります。」

「じゃあそれを使えば…!」

このまま3人で帰還できるしミヨさんの記憶も元通りだしでいいこと尽くめだ!


「ですが…出来ればこの手段は取りたくはありません。」

「え?なぜですか?いい方法かなって思いましたが…。」


「深い傷になる可能性があるからです。」


「…深い傷…ですか?」

「そうです。例えばメルナさんが現世(ウツシヨ)に向かうぞ!と意気込んで転送されたと思ったら気付いたらそのまま隔世に戻ってきていたらどう思いますか…?」


「えっと…びっくりすると思います。」

「そうですね。びっくりしますよね。しかもその周りにはメルナさんを心配そうに見つめている僕たちがいます。」


「それは…混乱しますね。」

「しかもよくよく話を聞いてみたら自分が記憶を消されるような目にあったと知ってしまいます。どう思いますか?」


「ああ。確かにすごく不安になります。」

「例えば話を聞かせてもらったとして…自分が体験していない事を聞いて大した事じゃなかったから気にしないで。と言われて…どう思いますか?」


「何か大変なことがあったんじゃないかと…そう思います。周りに迷惑をかけて…自分も酷い目にあったんじゃないかなって…悩んじゃうかも知れません。」

なるほど。確かに。

自分の知らない事を周りが覚えているという事実は…どのように作用するのかわからない。

もしかしたら大丈夫なのかもしれないが…。

もし大丈夫じゃなくミヨさんが深い心の傷を負ってしまったら。

コトさんはきっと自分の事のように苦しむだろう。

それは…私もいやだなあ…。


「そうですね。ですから…出来る限りは記憶を持ったまま帰ってきて欲しいと僕は思っています。もちろん…いざとなったら帰還が最優先ですが。」

「はい!ああでも。ひとまず私達でミヨさんの記憶を元に戻す手段を考えてみます。」

そうだ。まだまだ時間はあるのだ。

なんとかしてミヨさんの記憶を取り戻せるように頑張ってみよう。


「メルナさん達にばかり大変な事をさせてしまってすみません…。」

「いえいえ!コトさんも精一杯頑張ってくれていますし。そもそも私もミヨさんに辛い思いはしてほしくないですから!」


よおし。私もこれからもうひと頑張りだ!


「それではまた何か状況に変化があったら報告しますね!」

「はい。よろしくお願いします。くれぐれも無理はしないようにしてくださいね。」

「はい!頑張ります!」


さて。通信を終えたし…2人が起きた時のために美味しいご飯でも作ろうかな。

何を作ろうかなと考えていたら施設内が騒がしい気がする。

…誰か帰ってきたのかな?


そう考えていたらスカラさんが部屋に血相を変えて入ってきた。


「メルナさま!ああ良かったお戻りでしたか!大変なことになりました。」

「ど、どうしたんですか!そんなに慌てて!何かあったんですか?」

「ええ。色々なことが起こりまして…。」

「ではとりあえず結論をお願いします!何があったんですか?」

「では結論を…現在この世界は魔王の群れに滅ぼされようとしています。」

「ま…魔王?えっ私何にもしてないですよ?」

「ええ。もちろんメルナさまとは関係なく。腕が4本ある大きな人型の魔物です。」

えっ??


「斧と杖と剣と槍をそれぞれの手で振り回し街などを破壊し尽くし人を見かけると襲いかかる恐ろしい生き物…いやあれはもはや生き物なのかどうかもわかりません…。」

「えぇ?」


腕が4本ある魔王??本当に存在してたの??というか魔王って群れを作るものなの??

私はあまりの出来事に終始混乱していた。


「ブランとロクスケですが…僕を逃して2人は現在この施設周囲の魔王と交戦中です。」

「ええ?そうなんですか?私も行ってきます!」


「お待ち下さい!僕も行きます!向かいながら情報共有を!」

「はい!急ぎますので担ぎますよ!」

「ええ!もはや慣れたものですとも!」


私はスカラさんを担いでロクスケさん達のいる場所へ向かった。

そしてお互いに知っている情報をかいつまんで報告しあった。


「おう!師匠!こいつらやべえぞ!切っても切っても再生しやがる!」

「ロクスケさん!ブランさん!2人とも無事ですか!?」

「なんとかな!ブランはそろそろバテそうだ!代わってやれ!」

「なに!やっと体があったまってきたところさ!メルナはそこで私の活躍を見ていてればそれでいい!」

「お二人とも無事で何よりです!この魔王…ってなんなんですか?」

「俺たちにもよくわかんねえんだよ!白黒城ってところで悶着してたら気づいたら外はこの魔王だらけになってたからな!…一応聞いとくが師匠は…関係ねえんだよな?」

「あるわけないじゃないですか!全然知りませんよこんなの!」

こんな腕が四本もある凶悪な顔をした魔物が私に関係あるはずがない。

私が関係する要素なんて全くないじゃないか!


2人とも複数の魔王を相手に一歩も引かずに戦っている。

ロクスケさんは刀で何度も両断しているが切った部分は砂になりすぐにくっついてしまう。

ブランさんは主に足技を駆使して動きを止めたり顔を破壊したりしているがこちらも殴った部分は砂になりすぐに再構築されてしまっている。


「足を斬りゃあバランス崩して転ぶし頭を潰しゃあしばらく動かなくはなるんだが…キリがねえな!」

「全く手が4本もあることがこんなにもやっかいだとはね。懐に入るのも一苦労さ。」

「私もお手伝いします!ひとまず奥にいるやつらを攻撃してきます!」


ひょいとジャンプをして二人と魔王の群れを飛び越えて奥で蠢いている魔王たちへと向かう。

「ひとまず色々試してみましょうか。」


まずは杖を取り出す。

近くにいた魔王の頭を殴りその隣にいた魔王の足を杖で薙ぐ。

パァン!と想像以上に脆く殴った場所から砂が飛び散る。

しかし数秒もすれば元通りに治ってしまう。


なるほど。

この感じならなんとかなるかな。

私は荷物から小石を取り出す。

小石とは言っても創造端末で作ったかなり重い特別製の小石だ。


「えいっ。えいっ。えいっ。」

三体に石をぶつける石はそのまま貫通して複数の魔王の胴を貫いていく。

結構な威力でぶつけたからか結構広い範囲が砂になり爆ぜた。

「その砂吹き飛ばしちゃったらどうなるんでしょうね。」

私は左手に装着していた指輪の一つに魔力を込めた。

この指輪についている大粒の深緑色の石は風の魔石である。


()()()()

私はここら一帯の砂をすべて吹き飛ばした。

地面にある分も含めてかなりの量を巻き込み遠くに吹き飛ばした。


「これで再生はできないんじゃないですか?」

「師匠!やるな!残ったのも全部砂にして吹っ飛ばしてやるか!」

「わかりました。それじゃひとまず全員砂にしましょう。」


私たち三人は分担して沢山いた魔王をすべて砂にして吹き飛ばした。

残ったパーツで小さくなりながらも再生しようとしていたがサイズが小さくなればちょっとの衝撃で崩れる木偶人形でしかなかった。

「よし!全部吹っ飛ばしたな!ひとまずこれで安心か。」

ふう。それなりに魔力を使ったから少し疲れたな…。

それにしても…あの魔王は何だったんだろうか。

…いや考えていてもしょうがないか。

ひとまず危機は去ったのだから。


「いえ。いえ。これは…もしかしたらかなりまずいことになったかもしれませんよ。」

スカラさんは青ざめた顔をして遠くを見ている

その視線の先を見ると…遠くで砂が盛り上がっていた。


その砂は広い範囲から徐々に集まっていき…。


こんもりと山のようになっていき…。


砂山はどんどん大きくなり…。


徐々に人の形を作っていき…。


最終的にはかなり巨大な四つ腕の魔王となっていた。

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