忌避される理由
「現在の青の勢力の支配は95%を超えほとんどの場所は我らの傘下となりました。これもひとえにふたえにメルナさまの活躍によるものが大きいです。流石はメルナさまですね。ああ。ああ。許されるならばこの賞賛の言葉全てを表現したいところではありますが。現状を鑑みて報告を優先します。申し訳ございません。そしてメルナさまの御友人ですが…。いまだに消息はつかめておりません。そして敵勢力の本丸であるDr.WHITEとDr.BLACKの住む場所もわかっていません。ですが。ある重要な事実が判明いたしました。白の街を管理している者の極少数のみが知っている地下を走る通路があるそうです。ええ。ええ。ノエルや御友人はきっとこの通路を通り移動を繰り返していたものかと思われます。ただし。存在を知っている…という程度の情報しかなくどのようにその地下通路へ行けばよいのかなどはわかっていません。残り5%ほどを侵略してからゆっくり地下通路を探すのか現状の人員を総動員して地下通路を探すのかは。メルナさまの判断にお任せします。」
「そうですか。それじゃあ私一人で地下通路を探してきますので他の皆さんは侵略の方をお任せしますね。」
「ええ?少しお待ちを。…ああ。もう行ってしまわれた…。」
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スカラさんから話を聞いた私はすぐに走り出していた。
外に出て1人になり周りに誰もいなくなったところで走りながらコトさんとの通信を始める。
「コトさん。メルナです。」
「メルナさん。どうしましたか。」
コトさんはすぐに通信に応じる。きっと今も待機していたのだろう。
「手掛かりを見つけました。どうやら地下に通路があるらしいです。その通路でミヨさんは移動しているんじゃないでしょうか。」
「なるほど。地下ですか…盲点でしたね。」
「それで私地下へ行ってミヨさんを探そうと思うのですが…今のミヨさんがいる場所はわかりますか?」
「現在の位置ですか…。今どこにいるかはわかりません…。」
「そうですか。では最後にミヨさんを見失った場所を教えて下さい。」
「…なるほど!今すぐに座標をそちらに送ります!」
コトさんが見失っていたのは不思議だったが答えが分かればなんということはない。
地下に移動してしまっていたなら地上をいくら捜索しても見つからないはずだ。
そうこうしているうちにコトさんから座標が送られてきた。
この位置は…。よし。そんなには遠くない。
「地下にいるミヨさんをこちらでも頑張って探してみます!わかったらすぐに連絡します!」
「はい!一刻も早くミヨさんを見つけましょう!」
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どうやら師匠は俺を置いて嬢ちゃんを探しに行ったらしい。
…まあ。今の状態なら師匠が一人で行ったほうが早いわな。
あの師匠は今やとんでもない身体能力になっている。
こないだ稽古をつけてくれと試合をしてみたら速さも力もとんでもねえことになってやがった。
ブランのところから逃げてきたときだってここまで強化されてなかったはずだがくそ重てえブランを担ぎながらでも俺より走るの速かったからな…。
今なら一人で走って探したほうが早いんだろう。
まあこちらはこちらで仕事をこなすだけだ。
師匠が順調に嬢ちゃんを見つけることができれば最悪そのままこの現世から出ていきゃいいんだろうが見つけられたかった時の為にもこちらはこちらで計画を進めておく必要があるだろう。
まあ師匠がいなくともこっちの計画はもはや完全に消化試合だからな。
「さあ。こっちはこっちで仕事すんぞ。残りはどこに攻め込めばいいんだよ。」
「あっはっは。ロクスケはやる気満々だね。なあに残る場所はあとわずかだ。次に攻める場所の目星はついているとも。なあスカラ。」
「…次に我々が目的とする場所は中立の合同拠点である白黒城と呼ばれる場所だ。」
「白黒城?…中立地点に拠点なんてあったのかよ。そんないかにもな場所もっと早くに提案しておくもんじゃねえのかよ。」
「そうは言うが簡単な話じゃなくてねあの場所は特別なのさ。」
「ええ。できるだけあの場所は後回しにしておきたかった…いえ正しくはあの場所に行く必要がないことを願って他の場所から捜索していた。ということになりますね。」
「その白黒城ってのはそんなにも特別な場所なのかよ。」
「特別な場所というか…いや。まあ確かに特別な場所ではあるかな。」
「なんにしても…行けば分かりますよ我々がここまで忌避する理由がね。」
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コトさんの教えてくれた座標についた。
これは…研究施設か。
「ミヨさんがいなくなったのはこの中ですか?」
「はい。細かい座標については案内しますのでそのまま施設に入ってください。案内します。」
コトさんが案内してくれるがままに施設の中を進んでいく。
「その先の部屋ですね。ミヨさんがいなくなったのは…。」
「はい!入りますね!」
私は勢いよくドアを開きコトさんに指定された部屋へと入っていく。
「えっと。何もない部屋ですね。本当にこの部屋で合ってました?」
「ええ。その部屋で間違いないと思います。…そんなにも何もない部屋なんですか?」
「そうですね…ある程度は広いですが…何も置いてない部屋ですね…。」
「その部屋からまっすぐ地下に向かうと…通路がありそうなので何か下に移動できそうな仕掛けなどありましたら…探してみてください。」
「地下に通路はあるんですね?でしたらお任せください。どれくらいの深さにありますか?」
「えっと…20mほどの深さにありますけど…。え?まさか…。」
「わかりました。掘ります。もしも途中で下に向かう為の何かがあっても穴を掘れば見つけられるはずです!」
「…そうですね。手段を選んではいられませんからね。」
「はい!コトさんは引き続きミヨさんの現在地を探ってください。」
「そうですね。地下にいるとわかれば多分もうすぐに見つけられます。急いで見つけますのでこちらへの連絡は定期的にお願いします。」
シャベルとつるはしと堀った石や砂などを回収するための吸引用の機械さえあれば問題ない。
創造端末でそれぞれを用意して掘り進む。
よし、案外すぐに終えられたぞ20分くらいかな。
一応ミヨさんが降りた手段なども探しては見たが全く見つからなかった。
ミヨさんはいったいどうやってこの場所を降りたのだろうか。
「コトさん!地下へとおりました!」
「ああ!メルナさん…見つけましたよ!そこまで遠くはないです!案内しますね!」
「はい!全速力で走りますので案内はよろしくお願いします!」
ああ。ようやくミヨさんに会えるんだ。思えばだいぶ久しぶりな気がする。
いやいや。感傷に浸るのは見つけて出会ってからにしよう。
私は全速力でコトさんが案内する道を駆けていった。