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たとえば世界が滅んだとしてもずっと

スカラの阿呆は俺が死ぬだとかどうとか言ってたがこんなぬるい戦場で俺が死ぬわけねえだろうが。

この世界にはどうやらまともな飛び道具はないらしい。

なんつーか、この世界の発展の仕方ってのはすげえ歪だよな。

機械だったり人工生物だったり建築技術だったり舗装された道だったり通信技術だったりはすげえ発展している。

ただそれ以外は言っちゃ悪いがかなりお粗末なもんだ。

特に戦闘関連は機械兵っつーのと白い獣はそれなりに強えしたまーにブランみてえにそれなりに強えのはいるがそれだけだ。

まともに戦って師匠どころか帯刀した俺に勝てる奴は今んとこ1人もいなかったし複数人かかってもまあ無理だろう。


一応スカラの阿呆は俺が敵の大将と一対一になるように策を立てているらしく強えのが徒党を組んで襲いかかってくる事は今んとこねえ。

慎重になんのもわかっけどもっと雑に強えのにぶつけてくれても構わねえんだけどな。


まあ今んとこほぼ一方的な弱いもんいじめみたいにはなってる。

んー。なんっか違和感あんだよな。

追い詰められてる奴らってのはもうちょい必死さだったりなりふり構わねえ感じだったりがあるもんじゃねえの?


一応スカラの阿呆にも話しておいたが。

「は?言ってる意味が分からん。何を言っているんだ馬鹿なのかお前は。」

と言われて終わった。

まあ指揮を執ってるのはあいつなんだから耳に入れておく必要はあるがそれを聞いてどう判断するかもあいつの…あの阿呆の自由だ。


それにしても…毎日毎日どんどん食事が豪華になってくな…。

師匠もやることねえから暇なんだろうな。

どうやらコトの旦那に毎日愚痴をこぼしているらしい。

まあメンタルケアは旦那の仕事ってことか。


それにしても…んー。考えねえといけねえことがまだまだたくさんあるな。

どうしたもんかねえ。




─────────────────────────────


最近私はワショクというコトさんの故郷の料理にはまっている。

特にニモノという繊細な味付けの料理はいろいろな食材のうまみが出るのでとても面白い。

乾燥させた魚の加工品や海藻などからスープを作りそれにショウユというソースで味を付けていくのだが毎回毎回同じように作っても具材やその日の気候などによって味に変化が出るので大変に奥が深い。


ロクスケさんに「今日はどうでしたか?」と聞いても毎回「ああ!うまかったぞ!」としか言わないのであの人間は多分味の変化とかはまったく気にしていないんだろう。

全くあの男は…戦うこと以外に本当に大して興味がないんだろう。


毎日毎日戦闘のために出かけて行って楽しそうに帰ってくる。

本当に戦闘狂なのだあの男は。

きっといまだに私をこの拠点に閉じ込めているのも自分が楽しく戦闘したいからに違いない。

おのれ…滅ぼしてやろうか…。


話がそれたが毎日大量の料理を作る必要があるので大鍋で一度に作れるニモノはとても重宝しているのだ。

私の料理は結構みんなに評判がいいので頑張って作っている。

日に日に作る量が増えていくので大変だ。


評判がいいのはカレーやハンバーグなどでその日は食堂から歓喜の声が聞こえてくる。

…みんなが喜んでくれるから毎日作ってるけど…もしかしてこんなに大量の人に食事を用意する必要はないのでは?

もともとは自分たちで食べていたわけだしわざわざ私が作らなくともきっとそれぞれ勝手に食事をするだろうし…。


やることがなくなってしまったのでまあ折角だから料理くらいは…と頑張っていたが…あれえ?

まあいいか。料理を作るのは楽しいしみんなも喜んでくれているのでそこまで気にすることもないだろう。

それにしても…私はいつまで閉じ込められているのだろうか…。


…ルミナスさんの件は、いまだにあまり整理はついていない。

この現世(ウツシヨ)の人達は…いや『新人類』と呼ばれる人たちはルミナスさんのように最後砂になって死んでしまうらしい。


新人類って…一体何なんだ?


新人類がいるということは旧人類がいるということだろうけど。

…誰かに話を聞く必要があるなあ。




─────────────────────────────


「なるほど。それで私に話を聞きにきたと言うわけだ。」


「ふふふ。私を頼ってくれてとても嬉しいよメルナ。」


「それで。君はどこまで理解しているんだい?」


「いや知識のすり合わせをしようかなと考えたが確かに君達は我々の事を詳しくは知らないし我々は君たちの事を詳しく知らない。」


「そうだね。『新人類』に『旧人類』に『端末』これらを知っていて前に私とスカラが話した内容を知っているくらいか。」


「ではまず何から話そうかな…今この世界には我々のように『新人類』と呼ばれる者達と『旧人類』と呼ばれる人達が混在している。」


「それらの割合は…そうだな…大体90%以上が新人類で旧人類の人数は実はあまり把握されていないんだよ。」


「だから我々新人類はあまり旧人類について把握していないんだ。」


「何度か見かけたことはあるし任務で接したこともあるが…あまり気分のいいものではなかったね。」


「だって彼らは…あまりにも醜いじゃないか。」


「…いや。見た目で判断すると言うのはあまりいいことではないね。ただ彼ら旧人類は我々新人類と比べても…」


「顔は皺だらけだし。肉体はたるみきっているし。中には腰が曲がっている人もいる。」


「我々新人類は…生まれてきてから死ぬまで容姿が変わることはないからね。あまりにも我々と彼等とでは見た目からして違いすぎる。」


「…驚いたかい?ああ。私は死ぬまでこの美しい容姿を保ったままなのさ。」


「いや。私が生まれた時には…ちょっと違うね。」


「そもそも…。少し話は逸れるが…この世界は白の街と黒の街に分かれているだろう?」


「それぞれの街が得意としている産業は理解しているかい?」


「ああ。そうだね。黒の街は機械産業がさかんで白の街は…動物を育てるとは可愛らしい表現だね。」


「白の街の得意な産業は…正確には生体改造だよ。」


「そうだね。実際に見てもらったほうが早いか。」


「うん?背中を向けてどうしたんだい?服を脱いでいるだけじゃないか。あはは。耳まで真っ赤じゃないか。」


「何を恥ずかしがることがあるんだい?私とメルナの仲じゃないか。さあ。服を脱ぎ終わったからこちらを見てくれ。」


「ふふふ。そんなにもまじまじと見られると照れてしまうね。私も顔が赤くなってしまいそうだよ。」


「珍しいかい?そう。黒の街の産業は機械産業。つまり黒の街に住む私の体も半分くらいは機械で出来ているんだよ。」


「それじゃあ次は触ってみてくれ。そんなに恥ずかしがっていては話が進まないだろう?…ふふふ。そう皮膚の感触は柔らかく作ってあるからね。生体の部分とほとんど変化はないのさ。」


「大体首から上はほとんど生体のままだね。ほとんどと言うのは顔は少しずついじっている人がほとんどだが脳だけは流石に機械で作るわけにもいかないからね。」


「白の街はどうしているんだろうね。向こうはもしかしたら脳をいじっていたりするのかもしれない。」


「不思議そうにしているね。身体を改造(イジる)のがそんなに不思議かい?」


「さっきも言っただろう?我々は生まれてきてから死ぬまで全く姿が変わることはないんだ。」


「そうだよ。我々は生まれてきてから死ぬまで成長という事は全くしない。」


「旧人類は小さな猿のような姿で生まれてくるらしいね。昔資料で見た事があるよ。」


「生まれてきてから死ぬまでずっと同じ姿なのさ。しかも親が身体を改造してなければ親と全く同じ姿で生まれてくるんだ。ほとんどの新人類は身体を改造しているよ。」


「それじゃあ子供はどうやって生まれてくるのかって?それぞれの街に研究施設があるだろう?そこに結婚すると決めた2人は一緒に行って生体情報を渡したらその2人の子供が支給されるのさ。」


「ちなみに。私やスカラなどの『端末』は少し事情が異なる。」


「私達『端末』には両親はいないのさ。」


「いや、実際には親となった人物はいるのだろう。ただ私達は両親はいないものとして特別な施設で生まれ教育を受けて育つのさ。」


「メルナやロクスケも…きっと旧人類なんだろう。旧人類は男女が睦まじく触れ合う事で子を成すと聞いた事があるが。それはきっと素晴らしいものなんだろうね。」


「ああ。正直に言えば妬ましい気持ちもあるさ。何せ私達には生殖機能と呼ばれる生き物に普通に備わっている機能がないんだからね。」


「愛する人と交わって…その身体に子を授かると言うのは…どう言う気持ちなんだい?」


「ああ。メルナにも子を成した経験はなかったのか。ふふふ。それじゃあ私と同じだね。」


「そして私達が死ぬ時には先日のルミナスのように砂になる。」


「我々は最後に。美しい石となってその生涯を終えるのさ。石というのはずっと残るだろう。つまり我々はずっと美しいまま世界に生き続けるんだよ。」


「そうだね。たとえば世界が滅んだとしてもずっとさ。」

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