旅は道連れ世は…
ミヨさんに似た人は走り去っていったので追いかけて捕まえた。
「あの!」
「うえぇっ!な、なんですかぁ?!」
肩をつかみ近くにあった壁まで引き寄せた。
「えっと…。」
「…あの…なんでしょう…?」
勢いあまって壁に手を突き威圧するような感じになってしまった。
「…そうです!名前を教えてください!あなたの名前を!」
「え、ああっと。そうですね。助けていただいたのに名前も言わずに去るのは確かに失礼かもでした。」
よし。何とか誤魔化せたぞ。
「私の名前は…ルミナスって言います。この街の出身で…今は急いでこの街を出ようと思っています。」
「なるほど。町の外に出たいんですね。協力しますよ。」
「それでは…って、ええ?協力…してくれるんですか??何でですかぁ!?」
おっと。いきなり理由も聞かないで協力するのは確かにおかしいのかもしれない。
「なぜ…ですか?えっと…まずルミナスさんはなぜこの街を出ようと思ったんですか?」
「えっと。私気が付いたらこの街にいたのですが…訳も分からないままに沢山の人に監視されながら生きていてですね…。」
「なるほど。話は分かりました。ぜひ協力させてください。」
「それで…えぇっ?もう話が分かったんですかぁ?」
「えっと…なんでそんなに何も聞かないで親切にしてくれるんですか…?」
「私の…お友達にそっくりなんです…。えっと…放っておけなくてですね…。」
「はぁ…そうなんですかぁ…うーむうーむ…どうしようかなぁ…」
ミヨさんにそっくりなルミナスさんと名乗る少女は考え込んでしまった。
そしてしばらく考えた後ににっこりと笑ってこちらを見た。
「おねーさんがどういう風で助けてくれるのかはよくわからないですけど…それじゃあ助けてもらっちゃいます!おねーさんはきっといい人なので!きっと大丈夫でしょう!」
「やった…!それじゃあよろしくお願いします!」
こうしてルミナスさんが仲間になってくれたようだ。ヤッタネー!
「えっと。それじゃあ私他にも…3人ほど仲間がいますのでまずそちらと合流してもよかったですか?すぐ近くにいると思いますので。」
「おぉ!お仲間さんがいるのですね!頼りになります!」
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んー。どうすっかな。
師匠全然戻ってきやがらねえ。
しかも待ってる間に街の中も賑やかになってきやがった。
この状況であんまり長く待ってもいられねえし…まあいざとなったら一人で外に逃げるのもありか。
「あっ!ロクスケさーん!おまたせし…まし…た…?」
「おう!おか…え…り…?」
「え?どういう状況ですか?」
「いやそっちこそどういう状況だよ?」
「えっと…こちらこの街の住民でルミナスさんという名前らしいです。街の外に出たいらしいので協力してあげようかなと…。それで…何ですかこれは…?」
師匠は驚きながら縛られて物陰に倒れているスカラとブランの姿を指さした。
「あぁ。こいつら師匠いなくなって服選んでたと思ったら突然俺に襲い掛かってきたんだよ。」
ブランはまあ俺一人なら何とか勝てると思ってたのかもしれねえけど。
「素手の俺に勝てたからって刀持ってる俺に勝てるわけねえだろ。」
「…まあそうですよねえ。刀持ったロクスケさんってでたらめに強いですからねえ…。」
「まあ返り討ちにして縛ってやったけど…あぁ。頭こつんとやったから気を失ってるだけだ。殺しちゃいねえよ。」
「ええ。…うーん。できればすぐに起こして話を聞いてみたいものですけど…。」
「ふぉっ!なんで!人が倒れてるんですかぁ!」
「んー。どうする?師匠?…っていうか結構まずい状況じゃねえかこれ?」
この…ルミナスとか言う嬢ちゃんを追っているのか人が大勢こちらに集まってきた。
「あー。ロクスケさんそのお二人担いで逃げれそうですか?」
「うーん。流石にこの人数に追われながら二人担いで逃げんのは難しいかな…。」
そもそもこいつら担いで逃げんのは色んな意味でリスクたけえと思うんだよなあ。
「まあ仕方ないですね。3人で逃げますか。」
「貴様ら!手を挙げてその場に伏せろ!」
「うわ!囲まれちゃいましたよぉ!どうするんで…うわぁぁぁぁぁぁぁあ!」
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よし。ひとまず街の外に出られた。
ロクスケさんも…まあ姿は見えないが大丈夫だろう。
ルミナスさんを担ぎながら走っているのであまり無理はできないから少し遠くまで来たらロクスケさんとの合流を優先しよう。
とりあえず道沿いに歩いていればロクスケさんも見失うことはないはずだ。
今後の事を考えながら走っていたら自動車がすごい速さで私達の方へ走ってきた。
ああ。しまった。そうだ。自動車で追いかけられてしまったらかなりまずい。
道を逸れるか?でもそうするとロクスケさんを置いて行く事になっちゃうけど…。
考えているうちに自動車は私の隣を走っていた。
…あれ?この自動車ってもしかして…?
「おう!師匠!ブランの車かっぱらってきたぞ!はっはっは!やっぱりこれ速えな!」
窓を開けてロクスケさんがこちらに手を振りながら運転をしていた。
「…あれ?これってなんか動かすのに鍵が必要じゃないでしたっけ…?」
「おう。それも念のためにブラン気絶させたときにもらっといた!それじゃ適当に止めるから乗り込めよ!」
そういうとロクスケさんは自動車を停めたので私も急いでルミナスさんと一緒に乗り込む。
ちなみにルミナスさんは少し急いだからかぐったりとしている。
「ふう。…ひとまず行けるところまでは自動車で走っていきましょうか。」
「それで。これからどうすんだよ。そもそもその嬢ちゃんどうすんだ?」
「えっと。どうしましょうか。…ルミナスさんはなにかやりたいこととかありますか?」
「そうですねぇ…ひとまずあの街さえ出られれば良かったのですが…その後のことは何も考えてなかったのですよねぇ…。」
「そういえば…急いでいたので聞きそびれちゃったんですが…どうしてあの街を出ようと思ったんですか?」
「それはですねぇ…。嫌になっちゃったんです。」
「いやになっちゃったんですか。」
「ええ。私はあの街の一番大きい建物の…実験施設にいたんですが…。」
「ほう…実験施設なんてあったんですか」
「その場所で…私だけでなく沢山の私みたいな人がいたんですけど…毎日毎日実験で一人ずつ人数が減っていっちゃったんですよね…。」
「え…?それは…?」
「私も毎日色んな実験をされておりまして…。いろんな事をされたわけなんですけれども…。このままこの場所にいたら…もしかしたら私もいなくなっちゃうんじゃないかなって不安になっちゃいまして…。」
「…。」
「怖くなって…他の人を置いて逃げ出しちゃったんですよ。」
「…そうなんですか。」
「本当だったらみんなで逃げないといけなかったのかなって思うんですけど…でも他の人たちはたくさんいて…。私だけは何とか逃げ出せたんですけど…。」
「はい。わかりましたよ。ええ。全部わかりましたとも。」
「えっ?」
「ほかの残ったみんなも助けに行きたいんですね?」
「…あの。…でも…。」
「ロクスケさん。いいですか?」
「はっはっは!ダメって言ったらやめるのか?やめねえだろ?」
「…そうですね。…私は…できれば…助けてあげたいです。」
「そんな…そこまでやってもらう理由がないですよぅ…。」
「理由ですか。そんなものルミナスさんが悲しそうな顔をしているからってだけで充分ですよ。」
「まあ。俺としても暴れられるんならそれでいいしなぁ。」
「よし。それじゃあ今すぐに戻ってルミナスさんのお仲間を救出しましょう!」
「いや。待った師匠。なんにしてもまずは報告と相談は必要だと思うぜ?嬢ちゃんの事もまず旦那に言わないとだろ?」
「それは…そうですね…。」
「よし。それじゃあ適当なところに車止めるからまずは相談して来いよ。」
そうだ。何はともあれコトさんに相談しないといけない。
今後どうするかについても。ルミナスさんの仲間を助けに行くのかどうかについても。
そもそも…。
ルミナスさんは本当にミヨさんとは別人なのかどうかも私たちにはわからない。
コトさんの話を聞く必要がある。