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白の街

見渡す限りの砂漠を越えて遠目に街並みが見えてきた。

最初に見た印象は…彫刻を所狭しと置いたような街だった。

空は青く砂漠は白くそこに沢山の彫刻のように美しく作られた建物があり街は全体が一つの芸術品の様だった。

近付いてみれば道も美しい装飾が掘られており街の全てが美しい芸術品で作られているようだった。


「うわぁ…!すっごくきれいな街…!」

3日間かけて白の街に到着した。

「彫刻のように作られた建物ばかりで…!なんというか壮観ですね!」


「メルナさま。この街の白い建物は砂漠の砂を加工して作られているらしいですよ。白い砂をたくさん集めて特別な加工をすると巨大な石になるそうでその石を切り出してこの街の建物は作られているそうです。」

「へえ…!砂を使って石を作ることができるんですねえ。どうやってやるんでしょうか?」

「ふふふ。白の街は化学都市だからね。物体の加工や特殊な薬品が得意なのさ。」

「ほぅ!これも化学なんですか!すっごく面白いですね!」

「ノエルが作った街だと思うと正直気分はよくないが…確かにメルナが言うようにこの街は美しいね。」

「俺にはよくわかんねえけど。作るのは大変そうだよなあ。石をこんなに大量に加工できるもんなんだな。」


「さあ。降りても大丈夫だ。降りるときは下が砂だから気を付けてくれ。」

ブランさんが自動車が沢山集まっているところに車を止めてくれたので私たちはベルトを外して降りていく。

「あーっ。なげえ旅だったな!全然体動かさねえで着くって言うのは変な感じだ!」

「そうですねえ。楽なような…なんだか物足りないような…。まあでもすっごく楽しい旅でした!」

「それはそうだなぁ。自動車での旅って言うのもいいもんだ。俺も運転できるように練習してみようかな。」


「さて。これからどうするんだい?ノエルがどこにいるのかというのは流石に私も知らないのだけれど。何かあてはあるのかい?」

そうだな。どうしようかな?

本来であればコトさんに連絡を取って場所を教えてもらうのがいいんだろうけど。

スカラさんとブランさんがいる時に通信を使うわけにもいかないのでどこかで一人になる必要がある。


「えっと。そうですね。まずは情報収集も兼ねて街の中を探索してみませんか?」

「まあ。妥当なところだな。場所がわかんなかったとしても情報仕入れといて損はねえし。」

「それでは。街を探索するとしましょうか。僕もこの街に来るのは初めてですので非常に楽しみですよ。ええ。もともと旅をしながら生活をしていたのですから。こういった見たことがない場所に来るというのはとても楽しみです。」


「ああ。その前に一ついいかな。メルナとロクスケ。」


「えっと。なんでしょうか。」

「なんだよ。」


「いやね。君たちの格好…流石にこの街の中では目立つだろうからさ。まずは服を調達しないかい?私が二人に会った服を選ぶし勿論代金は私が持つよ。」

「え…私達の服装…目立ってました…?」

「んーまあそうかもな。俺達の感覚じゃわかんねえし任せちまった方がいいか。」

まあ言われてみれば確かに私達はこの世界の常識を知らない。

そして情報収集をするにあたって


話がまとまりそうなところにスカラさんが一つの提案をした。

「では僕がメルナさまの服を選びますのでブランはその男の服を選んであげてください。」

「…逆ならば許可するが?」

またなんか険悪な空気になってきた。

…別に服なんて目立たなければどっちでもいいと思うんだけど…。


「なぜ僕がその男の服を選ばないといけないのですか?まったくもって意味がわかりませんよ。しかしメルナさまの服を選ぶという名誉はそう簡単には譲れません。どうしてもというならお互いに選んだ服からメルナさまに選んでもらうというのはどうですか?」

「ああ。わかった。その勝負受けて立つよ。」

…まあ二人が私の為にどんな服を選んでくれるのかというのは興味があるし二人とも私が知らない服を着ていてすごくかっこいいから2人が選んでくれるならきっと素敵な服を選んでくれるのだろう。


「そうですか。それじゃあ私少し街を見て回りますので。」

よし。一人になっても怪しまれないタイミングだ。

「えっ。待ちなよメルナ。君が主役なのだから君がいなくなってしまっては。」

「ええ。そうですともメルナさま。いなくなってしまわれたら困ります。判定をしていただかなくては。」


何か言っていたが私は特に気にしないでそのままその場を離れた。

ちらりとロクスケさんには目配せしたのでわかってもらえたと思う。

…早く人気のない場所を見つけてコトさんへ連絡しなければ。




─────────────────────────────


「という事でミヨさんがいるであろう白の街に着きました。このまま捜索しようと思いますが…ミヨさんがどこにいるか具体的な位置ってわかりますか?」

「メルナさん。ありがとうございます。その街にいるのはわかるのですが…結構位置を頻繁に変えられているので追い切れていない感じです…。こちらも必死に探してはいるのでメルナさんも何か手掛かりを見つけましたら…連絡をお願いします。」


ああ。いけない。感情的になっている。

本来ならばそれよりも優先するべきことがあるはずだ。

自分が冷静さを欠いていることは重々に承知している。

しかし。感情をコントロールできていない。


「大丈夫です!私がすぐにミヨさんを見つけ出してすぐにみんなで戻りますから!」

…メルナさんはやっぱり心強い。僕も見習わないといけないな…。

「この街にいるってわかれば私の方で何とかします。ミヨさんは私にとっても大切な仲間ですから!」

ああ。メルナさんは…やっぱり強い人だな。


どうして僕はこんなにも弱いんだろう。

本来であれば僕がやらなければいけないことをメルナさん達に沢山肩代わりしてもらっている。

僕は。

メルナさんやロクスケさんを見ていると。

自分があまりに無力であると思い知らされてしまう。

いや。…今はせめて弱気を見せないでおこう。

「はい。ありがとうございますメルナさん。でもミヨさんも大切ですがメルナさんやロクスケさんも僕にとっては大切な人たちですので決して無理はしないでください。」

「…はい。…コトさんはいつでも優しいですね。私も期待にこたえられるように一生懸命頑張ります。」




─────────────────────────────


無事通信は終わった。

やはり一刻も早くミヨさんを見つけ出さないといけない。

私はきっと気が抜けていたのだと思う。

ロクスケさんを助けだして。

スカラさんとブランさんが協力してくれることになって。

みんなと楽しい時間を過ごして。


これではいけないと思った。

そうだ。楽しむんだったらミヨさんも一緒に楽しまなくちゃいけない。

ミヨさんを一刻も早く助け出して。

コトさんに元気な姿を見せて安心してもらって。

その後にみんなで楽しく当初の予定通りに観光をするべきなのだ。


よし。気合を入れてミヨさんを探すことにしよう。

ひとまずみんなの所に合流して情報収集からだ。



…どうしよう。元居た場所がわからなくなっちゃった…。

こっちの方から来たと…思うんだけどなあ。

街のどこを見ても白い建造物ばかりなので今どこにいるのかもわからなくなっている。


…いや。焦ってはいけない。こういう時は焦るのが一番まずいのだ。多分。

えっと太陽の位置がこっちで…。私たちはずっと東に向かって走ってきていたから…。

多分西から入ってきたはずで…。今いるのは多分待ちの中央付近だから…。

まっすぐに西に進んだはずだが何故か目の前には壁があった。

あっれえ?


最悪壁くらいならいくらでも乗り越えるのだが流石に住民が沢山いるこの街でやるのは目立ちすぎる。

どうしたものかな。と考えていたら後ろからバタバタと足音が聞こえてくる。

振り返って見てみるもどうやら誰かが誰かを追いかけているようだ。


「おい!待て!逃げるな!くそ!向こうから回り込め!」

「待てって言われても待つわけないじゃないですかぁ!私は逃げますよぉ!」


あれ?

聞き覚えのある声が聞こえる。ような気がする。

複数人の男が少女を追いかけているように見えたが…。

これは…追いかけよう。


結構遠くの角で曲がっていったので追いつくまでに少し時間がかかった。


「よし…ハァ…ハァ…ようやく…追い込んだぞ…」

「うわぁ!どうしましょう!追い込まれてしまいましたぁ!こうなったら」

その黒い髪をした少女は

「だーーーれーーーかぁーーーー!!たーーーーすーーーけーーーてーーーくーーーだーーーさーーーいーーーー!」

大声で叫んでいた。


私は他に目もくれずその少女の元へ走り。

肩の上に担いだ。

「ふぇっ!いったい何ですか!え!なんですか!こわい!降ろして!誰ですか!!」

壁を登り建物の上を走り抜けて追いかけてきた人たちからの目を逃れた。


10分ほど建物の上を走り続け最初にこの街に入った所の近くで下に降りる。

ちなみに少女は途中までは叫んでいたが途中からは諦めたように静かにしていた。

どうやら追手は撒いたようだ。声も遠くからしか聞こえないし追ってくる影も見当たらない。

人気のない場所を選んで降りたので周囲に人影もない。

ふう。よかった。


「えっとあの。おろしてくださいませんでしょうかー?」

「ああ。ごめんなさい。降ろしますね。怪我とかありませんか?」

「はい!ありがとうございます!体のどこも痛くはありません!追手の人達も私達を見失ったみたいですね!よかったぁ!」

その少女の顔は見覚えがあった。黒い髪にくりくりっとした可愛い目。少し低めの鼻に柔らそうでほのかに赤いほっぺた。

「ミヨさん!無事だったんですね!」

その姿はどう見てもミヨさんだった。



「え…?ミヨ…?なんですか…?えっと…見知らぬお姉さん!助けてくれてありがとうございます!私はやらなくちゃいけないことがあるので行きますね!ありがとうございました。」


しかし。少女は私を見て他人行儀に頭を下げてそのまま走り去っていってしまった。

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