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協力者

どうしてこんなことになってしまったのか。


「いやはや。メルナさまという方の偉大さを僕はありありと見せつけられてしまっていますね。素晴らしいという賛辞ではもはや語りつくすことなんてできるはずがない。そうは思いませんか。いやいやいや。メルナさんのような慎み深い方にこんな質問は愚問。まさしく愚かなる問いであることは重々承知ではあるのですが僕のような愚かな愚者が愚考する内容はメルナさまにとっては全てが愚問であると言わざるを得ないですのでどうか僕が愚かであることを真に真に御容赦いただきたいのです。」


「はあ。」


「理解と御容赦ありがとうございます。では愚かなる不肖このスカラが現在の状況を整理させていただきます。」


そういうとスカラさんは姿勢をピシッと正して敬礼?をしながらこちらをまっすぐに見つめながら解説を始めた。


「現在我々は『白の街』と『黒の街』両方の勢力と敵対中。両勢力からの追っ手から華麗に逃れ中立地点である『灰色の森』に滞在中。白の街に捕まったミヨ様と黒の街に捕まったロクスケ様両御方の救出が今後の目標ということでよろしいでしょうか?」


「…そうですね。」

そう。今の状況はかなりまずい。

現在は『灰色の森』という名前ではあるが至って普通の色をした普通の森をスカラさんと歩いている。

その事自体は大した問題ではない。

一番の問題はもちろんはぐれてしまったロクスケさんとミヨさんの事である。

そして、2人のことも気にはなるが。

この世界の()()()()()()()()が。()()()()()()()が全く分からない。

それが、今はかなりまずい気がする。


「ミヨ様ともロクスケ様とも僕は全く面識はないのが大変残念ではありますがきっとお二人とも大変立派なお方なのでしょうね。なにせメルナさまのお知り合いでいらっしゃるのですから。ああ。その理屈で言えばこの僕スカラも立派であるということになってしまいます。大変失礼いたしました。この愚かが服を着て歩いているともいわれるほどの愚者である僕が『メルナさまとお知り合い』であるというだけで立派を気取り、愚かさを手放せるのかと言われましたらそれはそれは有り得ないと。そうなりますね。だがしかしきっとミヨ様もロクスケ様も大変立派な方なのでしょう。なぜならメルナさまがこのお二人を助けるために尽力なされると。そういった覚悟が見て取れるからです。嗚呼。なんと素晴らしき人間性なのでしょう。僕はこれまでどうしてメルナさまのような立派なお方と出会うことができなかったのでしょう。いいえ。そんなことを嘆いていても何も始まりませんね。なぜなら僕はメルナさまと出会うことができたのですから。出会うことができない可能性も十分にあったと言いますかむしろ出会えてしまったことが奇跡であると。そう思うわけですよ。ええ。ええ。そんなメルナさまがお二人を助けたいとそう願うのであればこの僕スカラは協力を惜しみません。ええ。尽力を惜しむ理由などどこにありましょうか。僕の知識時間肉体精神人生そのすべてを捧げメルナさまの為に惜しまず使い潰す覚悟がありますとも。ははは使い潰すだなんてああなんと誇らしいのでしょう。きっとメルナさまはお優しい方ですので僕のすべてを使い潰すような事に遠慮してしまうのでしょう。しかし僕の幸せというのは今ここですべてを使い潰していただく事になると。そう確信してしまうほどにメルナさまを信頼してしまっているわけです。信頼などという押しつけがましい表現をしてしまいまして大変申し訳ございません。しかし愚者たる僕にこれ以上に適切な言葉を見つけることはできないのです。御理解いただけますでしょうか?ああ、重ね重ね申し訳ありません『御理解いただけますでしょうか』などと聞きようによってはメルナさまが愚かであるから理解できないのではないかと心配しているようにも取られてしまいますね?いいえいいえ。勿論そんなわけがございません。メルナさまは大変に立派なお方であり大変に聡明なお方であり大変に思いやり深いお方であるので『だからこそ』僕の愚かな発言を理解できないのではないかと。愚かにもそう考えたわけですね。いうなればそこらを漂う羽虫に大空を飛ぶドラゴンの偉大さが理解できないでしょう?はい。むろん僕が羽虫でありメルナさまこそが偉大なるドラゴンです。つまりは偉大であるが故に愚問を理解できないとそういったケースもありますのでもし万が一そんなことがあってはいけないとそう愚者が愚かにも愚考したわけでありまして。」


「そうですね。ひとまずどこか安心して身を置ける拠点があると助かりますので…どこかいい場所はありませんか?」

スカラさんは放っておくとずっと喋っている。

最初は頑張って聞いていたが途中からはあきらめてほとんど聞き流している。


「なるほど。何をするにもまずは拠点であると。しかしこの『灰色の森』には人は誰一人として住み着いてはおりません。なのでメルナさまという立派な御方が腰を落ち着けるにふさわしい例えば城や高層ビルなどはおろか住居となる家や小屋や等の建物はこの場所には全く存在していないのですよ。」

「それじゃあある程度の広さがあって周囲の見晴らしがいい場所なんかはありませんかね?」

「ああ。それでしたらこの先しばらくまっすぐ進んだ場所にありますとも。ぜひともご案内させていただきたいのですがよろしかったでしょうか?」

「はい。よろしくお願いします。」


「ではでは愚かなる不肖(このスカラ)が案内をさせていただきます。ただ一つ歩きながらでいいのでメルナさまに質問させていただくことを許可していただきたいのですが。その見晴らしのいい場所に行って一体何をなさるおつもりなのでしょうか?いえいえ心配などしているわけでは…いえ。ここはあえて正直にはっきりと言いましょう。僕はメルナさまを心配をしているのです。そんな建物も何もない場所に行ってもしかしたらメルナさまはそのままその場所で野宿をされるのではないのかと。ええ。きっとメルナさまですから例えばそこで野宿をするということになったとしてきっとそれはそれは立派に野宿をされるのでしょう。愚かなる不肖(このスカラ)が思いもよらないような素晴らしい手段を用いて思いもよらないような立派な野宿をされるのでしょう。ですが『灰色の森』には恐ろしい魔物が沢山ございます。その野生の魔物がメルナさまに関わるということが。そのことこそが僕にとって心配であるとそう言いたいのです。」


「んー。まあひとまず着いてから説明しますね。」

どうやらスカラさんは私のことを心配してくれているらしい。いい人だなあ。


「なるほどなるほどなるほど。愚かなる不肖(このスカラ)理解しましたとも。ええ愚かではありますがメルナさまの立派にして明朗にして快活なる説明を受けまして心配する必要など全くないと。そう理解させていただきましたとも。流石はメルナさまだとそう唸らざるを得ませんね。情報というものはその多寡によって価値が決まるわけではないと。そういう事ですね。ええ。ええ。そうでしょうとも。いや愚かなる不肖(このスカラ)にとってはメルナさまが仰られる一言一句そのすべてに金銀財宝以上の価値があると。まずそこは理解していただいて。メルナさまが沢山の事を語っていただけるならそれは愚かなる不肖(このスカラ)にとって大変に光栄なことであると。そう前置きをした上で。その上で多すぎる情報は混乱を招く。それは紛れもない真実であり箴言でありこの世の摂理なのでしょう。嗚呼。愚かなる不肖(このスカラ)のようにたくさんを語りすぎることは愚かであると。それは愚かなる不肖(このスカラ)も愚かにもそう愚考は致しております。しかしながらメルナさまと会話すること。その多大なる栄光を言葉で表現しようとなれば愚かなる不肖(このスカラ)愚かであるがゆえに。メルナさまのように偉大で立派で聡明ではないがゆえに多くの言葉をもってして語らなければ語り尽くすことができないのですよ。ええ。そうですとも。確かにメルナさまのすべてを語り尽くすなど思うこと自体が恐れ多いことこの上ありません。メルナさまのすべてを愚かなる不肖(このスカラ)が一生をかけたところでどうして語り尽くすことなどできましょうか。きっと火を見るよりも水を見るよりも明らかで不可能なことなのでしょう。しかし天の星に手を伸ばすがごとく。背伸びをして手を伸ばして両足で跳躍をするがごとく。光り輝くその栄光に手を伸ばさずにはいられましょうか。偉大なる栄光というのは例え手が届かなくとも手を伸ばさざるを得ない。そういうものなのです。ああ。メルナさまに唯一。そう唯一その人生に至らぬ点があるというならばそれはメルナさまほど立派な方となればメルナさま以上に立派な方がいないのであなた様には僕が憧れるメルナさまのようなそんな憧れる存在がいないという事なのでしょうね。それはきっと川が上流から下流に流れるがごとく太陽が落ちて夜になったならばその後にが朝が来て太陽がまた昇るのと同じように決まりきった真実である事と同じくらい揺るがしようのない事実としてメルナさまよりも立派な人物などこの世界にいるわけがないのでしょう。しかしそうなれば愚かなる不肖(このスカラ)の考えを理解していただくことは難しいと。そう言わざるを得ませんね。ああ。申し訳ありません長々と心の底から考えていたことをずっとお話してしまいました。ええ。そうですね愚かなる不肖(このスカラ)が行うべき事は長々と話をすることではなくメルナさまのお役に立つことであったとやっとその真実に思い至りました。そうなれば愚かなる不肖(このスカラ)。愚直に愚鈍に愚かにメルナさまの事を案内させていただきますとも。」


「はい。ありがとうございます。」

どうやら案内はしてもらえるようだ。


しかしありがとうと言ったことでまた何かの琴線に触れたのかスカラさんは目的地に到着するまでずっと何かよくわからないことを話し続けていた。




─────────────────────────────



無骨な牢獄の中で何度も考える。

どうしてこう頭のいい奴って言うのは話が回りくどいんだろうな。


「名前は…タタラ・ロクスケ。年齢は…42歳。性別は…男性で。身長198㎝。体重93㎏で…。右目に深い損傷が有り視力はほぼ喪失している…。何か相違はないかい。」


「ああ。何一つ間違っちゃいねえよ。」


「ああそうか。それは重畳だ。立派な身体じゃないか。親に感謝するといいよ。その右目はどうして視力を失うことになったんだい?」


子供(ガキ)の頃に修行だっつってドラゴンを見かけてちょっかいだしたときに爪でざっくりとやられたんだよ。」


「ほう。子供のころからそんな過酷な修行をしていたのかい。それだけ立派な体を持っていて小さな頃から過酷な修行を続けていたんだ。君はきっととっても強いんだろうね。」


「いや。大したことはねえよ。俺は仲間のうちでは一番よええからな。」


「ははは。謙遜なのか真実なのか判断が難しいところではあるが…きっと君は自分よりも弱い相手を強いということができないのと同じくらいには自分よりも強い相手を弱いということもできないような性分なんだろうしその言葉はきっと真実なんだろうね。」


「はっ。付き合い短いのに分かったようなことを言うじゃねえか。」


「そうだね。私と君が共に過ごした時間はまだとても短い。だか今までどうだっかよりもこれからに目を向けるべきだよ。これから私と君とは長い付き合いになるんじゃないかとそう私は考えているさ。」


「勘弁してくれよ。俺は今すぐにでもここを出て行きたいんだ。」


「ふふふ。それは出来ないんだよ。申し訳ないね。君には聞きたいことが沢山あるんだ。なにせ私は君の事をまだほとんど知らないだろう。私はね。色んな事を理解したいという欲求が人よりとても強いのさ。それにきっと君は私が知らないことをたくさん知っている。そうだろう?」


「どうだろうな。俺はあんまり頭がよくねえからあんたが知らない事を知っているとは思えねえけどな。」


「『あんた』だなんて他人行儀はよしてくれ給えよ。何度も自己紹介しただろう。私の名前はデント・ブラン。私の友はみんな『ブラン』とそう呼んでくれるよ。君にもぜひそう呼んで欲しい。」


「そうか。じゃあブラン。俺と友達になりてえってんならまずはこの手錠と足枷を外してはくれねえかな。動きにくくて仕方がねえよ。」


「ああ。残念ながらそれは無理なんだ悪いね。ああそうだ君が私の事をブランと呼んでくれるなら私も『君』だなんて他人行儀な呼び方をしていては失礼にあたるね。タタラかロクスケかなんと呼べばいいかな?」


「友達だっていうのに俺の望み一つ叶えちゃくれねえのかよ。寂しいな。そうだな。それじゃ俺の事はタタラって呼んでくれよ。」


「ああ。申し訳ないね。ふふふそれじゃあ君の事はこれからロクスケとそう呼ぶことにするよ。きっと君の反応から察するに君の親しい人はみんなそう呼ぶんだろう?ああそうだこの場所から出すこと。その手足の洒落たアクセサリーを外してあげることはできないしそれ以外にも多くを叶えてあげることはできないけどそれ以外に何か一つだけ君のいう事をかなえようじゃないか。さあロクスケ。いくつか希望を言ってみてくれ。きっとそのうちの一つを叶えてあげられるだろうからね。」


「そうだな。それじゃあブラン。答えられる限りでいいから質問に答えてもらえると助かる。いくつか質問をするから答えられることだけ応えてくれ。」


「いいとも。答えるさロクスケ。嘘も方便もなしだ。嘘や方便で誤魔化しては今後の我々の友情に支障が出てしまうだろうからね。ただし、答えるのは一つだけだ。だから考えて質問をしてくれ。だって友情というものはお互いに信頼を積み上げていくものだろう?まだ短い関係ではあるが今後の我々の友情の為にもきっとこの質問は大切な一歩になるだろう。」


「…俺の連れはどうなった。」


「ふふふ。そんな質問でいいのかい?自分を取り巻く状況よりも他人の心配だとはロクスケはとてもやさしい人間なんだね。しかし私という友人を目の前にしてそんな別の友人を心配しているというのはほんの少しだけ妬いてしまうね。」


「いいから早く答えてくれよ。ブラン。」


「ふふふ。どうやらロクスケは私の扱いを心得てきたようだね。私がどうすれば喜ぶのかを理解してくれてきたようだ。心の奥底がほんのりと暖かくなるのを感じるよ。それでは。友の為に誠心誠意質問に答えるとしようか。」


「ああ。頼む。」


「…知らない。わからない。それが私の答えだよ。」


「はぁ?そんなのありかよ?」


「いいや。これは嘘でも誤魔化しでもなく本当に私は知らないんだ。私は他の二人がどこに行ったのかは知らないし本当にわからない。知っていたならロクスケと友情をはぐくむために事細かに説明していただろうさ。ああ。無知である事がこんなにも悔しいことだなんてね。私もとても残念だよ。」


「…そう思ってくれてるんなら他の質問に答えてもらってもいいか?」


「ふふふ。それはダメさロクスケ。なぜなら私はちゃんと情報を君に渡したんだ。『私はあの二人がどこに行ったのかわからない』という立派な情報をね。私が何を知っていて何を知らないのかという情報は君にとって大変に価値がある情報だろう?それなのにさらに君を甘やかしてしまってはきっと君と私の友情は長続きしないだろう。」


「まあ…。それはそうかもな。俺としてもブランに信用してもらって一刻も早くこの手足のアクセサリーをもっと軽くて動きやすい物に替えてもらいたいからな。」


「ああ。お互いに信用を積み重ねて行けば君と私はいつかとっても仲良しな親友というものにだってなれるはずだよ。ふふふ。流石に親友だなんて少し照れてしまうけれどね。」


くっそ。なんなんだこいつは。だが一刻も早くこの場所を出なくちゃならねえ。この世界は何かやばい。


「ああ。俺とお前は親友って奴になれるさ。きっとな。…楽しみにしてるよ。」




─────────────────────────────



柔らかいベッドの上で目を覚ます。ここは…どこだろうか。

部屋を見まわしてみるとそこは少女趣味全開のケーキの上に更に砂糖菓子をたくさん乗せたほどに甘ったるくかわいらしい部屋だった。


部屋の趣味に気を取られて気付くのが遅れたがわたしの隣に黒い髪のかわいらしい少女が仰向けに寝ている。

こちらがベッドをぎしりと揺らしたことでその少女は目が覚めたようで目をぱちぱちとさせた後でわたしの事をを見つけたようでこちらを不思議そうに見つめる。

「えっと…あの…ここはどこですか?」


そうは言われても私もこの場所に見覚えはない。

「あの…わたしもここがどこなのかわからなくって…あなたもわからないんですか?」

正直に答えるも黒髪の少女はばっと起き上がり少し距離を取った後に訝しげにこちらを見つめる。

「…えっと。私はミヨという名前で…こちらの国には来たばかりで詳しくないで…。もしよければあなたの名前も教えてもらえますか?」

警戒しながらも黒髪の少女は私に自己紹介をしてくれた。

どうやら黒髪の少女はミヨさんというらしい。


「…私の名前は…ええっと…シャーロット・ノエル…です…ええっと…あれ?」

「ノエルちゃんですか…どうかしましたか…?」

「えぇっとあの…思い出せなくって…」

「えぇ?何がですか…?」


「わたし…自分の名前以外…なにも思い出せないです…。」


わたしは。

自分が何者なのかもこれまで何をして生きてきたのかもこれから何をしなければいけないのかも。

何もかもが思い出せなかった。


「あのぉ…大丈夫ですか?」

「あっ。はい大丈夫です。どこか痛かったりとか苦しかったりだとかは…何もないです。」

「でもぉ…。ノエルちゃん…。」


わたしは大丈夫だ。そう、きっと大丈夫。

記憶がないからなんだ。すぐにきっと思い出せる。

そうしていたら急にミヨさんが私に近付いてこちらを覗き込んでいた。


「えぇっ…。何ですか?」

「なんですかじゃないですよぅ…どうしてそんなに…涙を流しているんですか!」

言われて初めて気が付いたが私の目からは涙があふれて止まらなかった。


わたしは…どうやら自分でも気が付かないうちに泣いていたようだ。


「えっ。あっ。なんででしょう。わからない…です。」

泣いていることを自覚してしまったら急に胸が苦しくなってきた気がする。

「あの…えっと…」

だめだ。何とか止めようと思っても涙が止まらない。

涙を止めようと一生懸命目元をぬぐっていると。

ミヨさんはわたしを慰めるようにぎゅっと抱き着いてきた。


「大丈夫ですよ。何も思い出せなくて不安なんですね…。」

何故この人は初対面の私にこんなにも優しくしているのだろう。

不安なのかすらわたしにはわからない。

「あの…でも…。そんな…初めて会う人に…ご迷惑をおかけ…するわけには…」

ぼたぼたと涙があふれてくる。

どうしてこんなにも私は泣いているのだろう。

わたしはわたしが泣いている理由がわからない。


「ノエルちゃん…大丈夫です。私に任せてください。」

「…あの…私は…大丈夫で…。」

「私はミヨであなたはノエルで…お互いに名前を知っていたらそれはもうお友達です。」

「ええ…?」

「お友達を助けるのは当然のことですよ。全部私が何とかしますから…!ミヨさんは安心して全部任せてください…!まずは…この部屋から出ましょう!」


ミヨさんは小さな体で一生懸命私の事を慰めてくれた。

何で泣いているのかも理解しないままにずっとわたしは泣いていたけれど。

わたしに抱き着いていたミヨさんはなんだかとっても体温が高かった。


そしてわたしはそれが何故だかとても鬱陶しかった。

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