アサルトライフルとハムエッグ
「そういえば。あの『侵略者』が使っていた武器は創造端末で作れないんですか?」
「なるほど。…どうでしょう?作れなくは…ないけど」
コトさんはぼんやりと考え込んでいる。
例の『侵略者』達を倒すにあたって何が必要なのかを考えてみたのだが、彼らが使っていたものと同じものが沢山あれば戦えるのかな?と思ったのだ。
「…そもそもがですね。創造端末で作れるものって僕が一度創造で作ったことがあるものが登録されるって感じの仕組みになるんですが。」
「ほうほう」
なるほど。
一度作ったことがあればその後同じものは簡単に作れるというのはかなり便利だ。
「僕は『侵略者』の武器を作ったことがありません。」
「まあそうですよねえ。」
「しかもどう見ても複雑そうな装置なので…現品があれば複製?は出来るかもしれないですが…中の細かい仕組みまで再現するとなると難しい…かもしれないですね…?」
「まあまずは何にしても現品を手に入れてからでないとわからないって感じですかねえ」
コトさんは考え込んでいる。
「…ああ。そういえばいくつか武器はありますよ?」
「ほほぅ。」
「一度偵察のために『侵略者』がいる世界に入ったことがありまして…ミヨさんがいろいろ拾ってたような…。」
さすがはミヨさんの好奇心だ。
ちょっと危ないんじゃないかな?と思わなくもないが過去の事にどうこう言っても仕方ない。
「おお。それじゃあ…。あとでミヨさんに聞いてみましょうか。」
ちなみに今はまだこの時間はミヨさんは起きてきていない。
ミヨさんが起きてくるのはもう少し後だ。
不思議なことだがこの場所には朝と夜という概念はある。
白い部屋ではあるが時計は各部屋にちゃんと存在していて時間はわかるようになっている。
朝になると部屋全体が明るくなるし夜になると部屋は暗くなる。
部屋には灯りが備え付けてあるのでちゃんと夜でも明るいが夜っぽい感じになる。
今はまだ朝7時少し前でありミヨさんはいつももう少し遅い時間に起きてくる。
ロクスケさんはもうすでに起きていて日課の朝稽古をしている。
私も「師匠も一緒にやるぞ!」と声をかけられたが「コトさんに相談することがありますので…。」と逃げてきた。
明日からはどうやって断ろうかなあ。
でもまだ体に違和感があるし私も稽古をした方がいいのかなあとは思わなくもない。
かといってロクスケさんのような人と同じペースで稽古をやりたいとは思わない。
よし。私も自分のペースで勝手に稽古をすることにしよう。
「そろそろミヨさんが起きてきてご飯を作ってくれる時間なので私も一緒にご飯作ってきますね~。」
「はーい。いってらっしゃいー。」
まあ『侵略者』の武器の話は後からでもいいだろう。
私が厨房についたころにはまだミヨさんはいなかった。
調理器具やオーブンなどを用意しながらミヨさんを待つことにしよう。
暫くするとミヨさんがのそのそと起きてきて厨房に入ってきた。
「ふぁ~。メルナさん、おはようございます~。」
「おはようございます。ミヨさん。今日は何を作りますか~?」
「ん~どうしようかなぁ。それじゃあサラダとハムエッグは私が作りますのでメルナさんはスープとパンをお願いしてもいいですか~?」
「わかりました~!オーブンはもう温めてありますので後は焼くだけですよ!」
「用意周到!さすがはメルナさんですねぇ…!」
「うふふ。それじゃあスープを作りますね…。トマトを使ったスープにしましょうか…。」
「いいですねぇ。メルナさんが作ってたスープとっても美味しそうでしたからねえ。」
「えへへ。それじゃあ作っていきますねえ。」
それから二人で楽しくご飯を作った。
一人で効率を考えながらご飯を作っていくのもそれはそれで楽しいが他人と一緒に用意していくのはすっごく楽しい。
二人で作業分担しているので料理はすぐに出来上がった。
「ああそうだ。ミヨさんにお願いがありまして…『侵略者』達の武器をミヨさんが持ってるかもってコトさんから聞いたんですけど…」
「『侵略者』…?ああ2万年たった時に出てくる宇宙人さんの事ですね!」
「はい。さっきコトさんと話していてミヨさんなら持ってるかもしれないって聞いたので…」
「確か部屋に置いてありますよぉー。取ってきましょうか?」
「おお!ありがとうございます!それじゃあ私は食事を用意して食堂に運んでおきますのでその間にミヨさんは取りに行ってもらってついでに他の人達に声をかけてきてもらっていいですかね?」
「かしこまり!それじゃあ探してきますね~。」
「いってらっしゃいませ~」
そういうとミヨさんはぴょこぴょこと部屋を出て行った。
パンはもうすぐ焼きあがるし他の物からもう配膳していって大丈夫だろう。
料理をそれぞれ食堂に運び込んでパンを運んでいたらミヨさんが他の二人を引き連れて食堂に入ってきた。
「皆さんおはようございます~もうご飯できてますよ~」
「ああ。おはよう。っつーかなんだこれ。いきなり呼びつけられて持たされてんだけど。」
「おはようございますー。僕がメルナさんとミヨさんに頼んでおいたんですよ。」
「うふふ!宇宙人さんの色んな道具ですよ!」
「ロクスケさんが持ってきてくれたんですねえ。まあまずは食事をしてからにしましょう。」
「おう。そんじゃこいつらは端っこの方に置いとくぜ。」
「あー。壊れたらダメなので丁寧に置いてくださいね!」
「はいはい。仰せのままに。お嬢様。」
「うむ!苦しゅうないですよ!」
あの二人もなんだかんだで仲良くなっている。
ロクスケさんも面倒見いいしなあ。戦闘狂ってだけで。
それからみんなでご飯を食べた。
「おう?今日のこれは何だ?」
「それはハムエッグですよぉ!ハムとエッグのコンテンポラリーアートなのです!」
「ハムエッグ美味しいですよねえ。ロクスケさんの世界だとハムは用意できないし卵も安定して用意できなかったからこっちで食べるの楽しみだったんですよねえ。」
「今日はお二人でご飯を作ったんですね。このスープはメルナさんが作ったんですか?とっても美味しいですよ。」
「えっへん!そうです!メルナさんが作った料理もとっても美味しいんですよ!パンも絶品です!」
「師匠の料理は美味しいよなあ。ただ嬢ちゃんが作った他の料理もめちゃくちゃうめえぞ。」
「そうなんですよ!ミヨさんが作る料理って本当に美味しくって!私いつも食事の時間楽しみなんですよねえ。」
「ミヨさんの料理をほめるとメルナさんが喜んでメルナさんの料理をほめるとミヨさんが自慢している…お二人とも本当に仲良しですよねえ…。」
みんなで楽しく談笑をしながら朝ごはんを食べていく。
やっぱりミヨさんが作る料理はとっても美味しい。
ハムエッグもジューシーで卵はトロトロだしサラダもシャキシャキで味付けもさっぱりとしている。
私の作った料理はどうかなと不安だったけどミヨさんは私の料理を美味しい美味しいと食べてくれるので私はとっても嬉しくなる。
楽しくておいしい食卓だったが気が付いたらみんな食べ終わりつつある。
「あ。私お茶入れてきますね。」
「ありがとうございますー。それじゃあこっちはお話の準備をしておきますね。」
私は厨房に戻りお湯を魔法のケトルですぐに沸かしながらお茶を煎れる用意をする。
このケトル水を入れてスイッチをカチッと押すだけで数10秒でお湯が沸く。
魔法ってすごいなあ。
お茶を人数分淹れて食堂に持っていく。
コトさんはミヨさんが持ってきた『侵略者』の武器?や道具?を手に取りじっと見ている。
「ん~。これって…ミヨさんこの道具って何に使うものかわかります?」
「えーっと。鑑定したら『レーザーチャフ』って出てきましたねえ」
「なるほど…それじゃあこっちの細長いのは…。」
「『アサルトレーザーライフル』ってありますねえ。」
「それじゃあ。これをコピーしてみようかな…。」
「何が何だかわかんねえけど…それって武器なのか?」
「そうですね…それじゃ分析して…内部構造めちゃくちゃ複雑だなぁ…。」
コトさんは細長い…よくわからない何かを指で触りながら中空を見つめている。
「…コピー自体は出来そうですが…それなりに魔力を使いそうですね…。」
「えっと。どれくらい使いそうなんですか?」
家も作れるような機械なのでそんなに大きくない武器は簡単に作れそうだけど…難しい顔してるなあ。
「だいたい…メルナさんが集落に立てていた建造物の…10倍くらいですかね…?」
「10倍!!??」
「まあ一個作るくらいなら…まあ問題ないので…作ってみましょうか…。」
コトさんは左手で武器を持って右手で端末を操作して…。
おう。いつの間にか右手に左手に持っている武器と同じものを持っている。
「完成しましたね!それじゃあこれを…!」
「…ああ。だめですね…これは…。」
「ええ?うまく作れていると思いますけど…同じものを作れなかったんですか?故障していたとか?」
「いや…同じものを作れましたし…構造上の損壊もないし故障してる訳じゃないんですけど…」
「この武器を起動するエネルギーが全くないので…やっぱり…仕組みと原理を理解しないとこれは使い物にならないですね…。」