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眼帯さん

ああ、つまんねえ。


どうしてこんなにつまんねえんだろうな。

俺よりも強いやつが誰もいねえからつまんねえのかね。

こんな城のてっぺんでふんぞり返って何をしてんだろうな。


俺はこの世界の人を取りまとめて国を作りその国の王様になった。

別になりたかったわけでもねえ。

じゃあなんで王様になったのかって。

なんでなんだろうな。

いや、最初は明確に王様になりてえ理由があった。

師匠と心置きなく喧嘩するためだ。


ただその師匠もヘルメスの馬鹿に殺されちまったしそのヘルメスの馬鹿はオレと喧嘩して死んじまった。

別にヘルメスの馬鹿を恨んで敵を取ってやったみたいな話じゃねえ。

師匠が見つからなくなって探し回ってた時にヘルメスの様子がおかしかったから問い詰めてやったらすぐに吐きやがった。

魔王がどうこうでアイツの嫁さんと揉めたらしい。

なんか言い訳がましく色んな理屈を捏ねてはいたが結局のところ師匠が気に入らねえから喧嘩売って師匠が殺されたってそんだけの話だ。

師匠がヘルメスに殺されたのはムカついたがまあそういう事もあるだろうって納得は出来た。


こっちは納得してんのに向こうは何が気に入らねえのかぎゃーすかぎゃーすか文句言ってきやがる。

暫くはめんどくせえから無視してたのにねちねちねちねちずーーっっと文句を言ってくるもんだから。

最終的にはうちの村とヘルメスの里で戦争をすることになっちまった。


…いやなんで戦争なんてしねえといけねえんだよ。

後々になって知ったのはどうやらヘルメスの馬鹿は俺を殺して王様になりてえみたいな話だったらしい。

言えよ!直接!そんでお前がやれよ!王様!

俺だって別に王様になりたかったわけじゃねえし代わってほしかったならいつでも代わったってのに。


そんで戦争することになったんだよ。

めんどくせえよな。

師匠が殺されたってんでヤスケと姉貴は「ヘルメスアイツ許せねえぶっ殺す」っつって張り切ってた。

ヘルメスの馬鹿は本音を言わねえしヤスケと姉貴は戦う気満々だし俺の村にこの二人に逆らえる奴はいなかった。


まあなんというか結果だけ言えば一方的な戦争だった。


ヘルメスの里のエルフたちはそもそもなんか全然やる気がなかったし。

いや…全くやる気がないわけでもなくなんか「あわよくば」って欲は見えたがどこか腰が引けていて自分以外のエルフが頑張ってくれたらなぁみたいなスタンスだったんだろう。

いっちょ前に剣やら弓やら構えて立ってたけどヤスケと姉貴が唸り声だか叫び声だか奇声を上げながら突っ込んでいって数人ぶっ殺したら散り散りになって逃げて行ってた。

…やる気のねえじじいばばあばっかりの里だったんだな…。


まあそのままほとんど素通りするみたいに相手の大将であるヘルメスの馬鹿のところまでたどり着いたらあの馬鹿が俺に一騎打ちを仕掛けてきてそれに俺が勝って戦争は終わった。


なんか信じられねえくらいに不毛な戦争だった…。

まあ最終的には「ヤマトの村の大切な客人に手をかけた上に王様になるのを阻止しようとした反乱分子であるエルフを王様自ら敵地に乗り込んで片っ端からぶっ殺して回った」みたいな話になって俺が恐れられる結果となった。

そうして俺が王様になることに文句を言うやつは誰もいなくなった。

どうやら王様をやるにも腕っぷしを見せることは必要らしい。よくわかんねえけど。


そんで俺は王様になった。

王様になって一番最初にしたことは魔王の討伐だ。

つっても魔王はもうとっくの昔にヘルメスの馬鹿が殺しちまってたからヤスケとクリフとオレの三人で仰々しく山を登って降りてそれっぽい証拠をでっち上げただけだが。

「あやつめ…死ぬ前に『我が死のうとも我が残した災害が消えることはない…!』と言っておった…!」

「吾輩思うんだ…!きっとこれからが魔王との本当の戦いなんだってさ…!」

「ああそうだ。俺達はこれからも魔王の猛攻に備えなけりゃならねえ。きっとこれからも戦い続けなきゃなんねえ。そのためにもみんな力を貸してくれねえか?」

俺達はつまんねえ三文芝居ばっかり上手くなっていた。

その日以降、国の皆はより一層団結して頑張ることを決めたようだ。


そっからはさらにつまんなくなった。

それまではある程度俺が出張って解決しないといけねえ問題があったがみんなが団結した結果国の皆の頑張りでそれぞれが問題を解決できるほど立派に成長を遂げていったのだ。

国民が優秀だと王様は暇でしょうがねえ。


「父上。稽古をつけてください。」

ただまあ…

「…ああ。いつか俺に勝てるように頑張れよ。」

子供(ガキ)達の稽古をつけてるときはまあ、多少は楽しかった。


「父上。剣をより早く振るにはどうすればいいですか。」

「力をつけろ。そんで無駄をなくせ。」

「父上。相手の攻撃を避けたり捌いたりするにはどうすればいいですか。」

「相手からぜってえに目をそらすな。そうしてたらいつかできるようになる。」

「父上。勝てない相手に勝つにはどうすればいいですか?」

「無茶をしろ。ドラゴンを相手に組手したりなんでもいい。他人に絶対に出来ねえって言われてることをやれ。」

「父上。父上に勝つにはどうすればいいですか?」

「絶対に譲れないものを見つけろ。俺を倒したらそれが手に入るっていうなら俺を殺してでも手に入れたくなるはずだ。」


俺の子供(ガキ)は優秀だった。

まあ俺と姉貴から生まれた子供(ガキ)だ。

そりゃつええに決まってる。


「父上。俺は今日あなたを殺して世界一強い剣士になり王様になることにした。」

「へえ。そうかい。なんだ、好きな子でもできたのか?」

「…ああ。俺なんかにはもったいない、すごくいい子だ。結婚も考えてる。」

「へえ?…あぁ?もしかしてお前が王様になったら結婚するみたいな話かぁ?」

「いや…そうじゃない」

「あぁん?」

「俺は…強いだけが能の男だから…その子と釣り合うためには…王様くらいにならなくちゃって思ったんだ…。」

「へえ?そうかい?…ま、いいんじゃねえの?」

「…怒らないのか?」

「あぁ?怒られてえのか?」

「…いや。そうじゃないが。不純な理由だと怒られるものだと思った。」

「不純ねえ。まあそうかもな。」

「ただまあ」

「お前が一生懸命王様になりてえって思ったんならそれでいいんじゃねえかなって思ったんだよ。俺は。」

「俺なんかぁ流されるままに王様になっちまった。仕方なくな。それに比べりゃ自分でつかみ取りてえって王様になるお前は俺なんかよりよっぽど立派だよ。」


「そうなのか…。それじゃあ父上。俺の為に死んでくれ。」

「ああ。いや?お前の為に死んでやる気はねえが。殺し合いくらいはしてやるさ。なにせ親子だしな。」

「そうか。ありがとう父上。」

「気にすんな。俺とお前の仲だろう?お前に稽古つけてるときはまあまあ楽しかったぜ。」

「そうか。ではいざ尋常に殺しあおう。」

「ああ!上等だ!」


そうして俺は目が覚めたら白い部屋にいた。




─────────────────────────────


さて。これからどうしようかな。

「あぁん?ここはどこだぁ?」

ぐわんと体のばねを使って眼帯を付けた男が立ち上がる。

「っつーかお前誰だよ?」

こちらを見て一瞬で臨戦体制に入った眼帯さんは警戒しながらこちらを窺う。

「えーっと。敵じゃないです。僕はコトと呼ばれていて…メルナさんのお友達です。」


「あぁ?メルナって誰だよ?」

ああそうか。メルナさんはあの世界では偽名を使っていたらしい。

「まあいいや。お前…ただ者じゃねえな。まずは俺と喧嘩しようや。」

「…断る事ってできます?」

「いんや。…まあ断るのは自由だがその場合は俺が一方的にお前に切りかかる事になるな。」

「まあ…そうなりますか。それじゃあまあ喧嘩しましょうか。」

「はっはっは!話が分かるじゃねえか!」

「その代わり条件があります。」

「ああん?」

「僕が勝ったら…僕のいう事には絶対に逆らわないでください。」

「ああ!いいぜ!その条件でいい!最高だ!」




─────────────────────────────


「ということで久しぶりだな!師匠!俺こいつと何回も勝負したんだけど一回も勝てなくてな!これからこいつのいう事にゃあ絶対服従ってことになっちまった!はっはっは!」

「ええ…一体何があったんですか?」


そしてこの男はどうしてそんなに嬉しそうなのだろう。


完全になにがなんだかわけがわからないが。

どうやら。タタラ・ロクスケさんは私たちの仲間になったようだった。ヤッタネー!

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