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エルフ子さん

私が人類最後の生き残りになってから1000年がたった。

1000年もたってわかったことは特にない。

あえて感想を捻りだすのなら1000年たったなあというくらいのものだ。

年数を数えているのもただの習慣でしかない。数える意味もないと思うがそもそも一人になったのだから意味も何も必要性を感じない。

世界に一人だと全部自己満足でしかないのだ。そりゃそうだそもそもの人類の価値観がもう私一人の物しかないのだから。


この1000年間で寂しさは特に感じなかった。


思ったよりも悲壮なものでもなく案外気楽で楽しいものだった。

最初の20~30年は世界を回って他の人を探してみたものだ。

結局どこまでも荒れ地と森が広がるばかりで楽しくもなく知識として知っていた以上の発見もなく当然他の人間なんかもいなかった。

たまには眺めのいい景色なんかもあったが感動もなく虚無感しか感じなかった。

もし集落のみんなが生きていたら私に一人旅なんてできないと言っただろう。

もし集落の皆が生きていたら私のこの行動力に驚いたことだろう。

まあそのみんなもつまらない(いさか)いで私以外は死んじゃったんだけどね。


残りの970年くらいは惰性で生きていた。

何か変わるんじゃないかなと期待しなかったわけではないけど。


念のために年数を数えながら。

念のために今みたいに日々の記録をしながら。

念のために食料を100人分くらい余裕をもって用意しながら。

念のために建物を複数用意して私好みの街を作りながら。

念のために遠くから見つけやすいように高い高い塔を作りながら。

念のために言葉を忘れないように色々なことを口にしながら。

期待しているわけではないと自分に言い聞かせながら。

そうやって1000年を生きてきたのだ。


そして1000年間というのは一つの区切りとなるので()()()()()()()()()()()と考えたのだ。

「まあ色々考えてはみたけどこれが一番確実だよね」

独り言は出来るだけ声に出すようにしている。

いつか誰かと会話することもあるかなって思っていたのだ。まあ必要なかったわけだけど習慣というものはなかなか変えられないものだ。

我ながらこんなに高い塔をよく建てたものだ。世界の果てまでも見えるような気がする。まあどこまでもなにもないんだけどね。

「こんなにも素晴らしい眺めを見ながら最後を迎えるっていうのも幸せなことだよね」

「色々あったけど結構充実した人生だったよ、うん」

「最後に大好きな木の実ケーキもたくさん食べたし満足だ」

「死んだ後のことを考える必要もないわけだしねなにせだれもいないから」

「まあ…そろそろかな」

「空を飛ぶのも初めての経験だし有終の美だともいえるねきっと」

「それじゃあ…えい!」

私は空を飛んだ

最後に生まれて初めての経験ができてよかったなぁと思ったあたりで


世界が黒く塗りつぶされた





─────────────────────────────

                        


白く広い部屋でこたつを囲みせんべいを食べながらディスプレイを見ている。

この白い部屋には他に何もない。

あるのはこたつと四角いやぼったいディスプレイとそれを乗せる小さな箪笥。

それと炬燵を囲う男女二人、僕ともう一人の少女だけだ。


まあ初めてならばこんなものだよなあと思っていたところに

「あー…滅んじゃいましたねぇ…何が悪かったんでしょうかねぇ…」

諦めたようにディスプレイをを見ながらぼんやりと少女が言う。

いや、少女というのは実際には見た目だけなのだが。


「案外難しいんですよ…わかっていただけました?思ったよりも長命種って使い勝手が悪いというか…うまいポジションに置ければいいんですけど増やし過ぎると破綻しやすいんですよね…。」

「そんなもんなんですかねぇ…コトさんはちなみに何年まではいったんですか?」

ジトリとした探るような眼をこちらに向けて少女は訊ねてくる。コトというのは僕の事だ。

「まあ最初はミヨさんと似たようなものでしたよ…たしか1万年ぴったりくらいで壮大な戦争が始まって残り10人くらいになってそっから50年くらいでしたねたしか…」

「そっか…!それくらいか…!まあそんなもんですかね…!」

ミヨさんは12890年だったので大変嬉しそうにしている。まあ実際は帝国ができてから1万年だったはずなので5000年くらいはこちらの方が長いが真実を告げると後々面倒なので放置しておこう。


「かなり良かったと思ったんですけどねえ最後に残ったエルフ子ちゃんすごかったし」

「確かにあの人すごかったですよね…一人になってからあんなに長生きするのはかなり珍しいししかも最期は自分で決めてたし特に絶望した感じもなかったですからね…」

「あの人が早い段階からいればよかったのになーーーー」

「じゃあ次はそれでやってみます?」

「え?」

「次もミヨさんの番でもいいですよ」

「持ち越しとかできるんですか!?」

「できますよ。まあまずはこちらに実体化してからですけど」

「やったーーこれで次は楽勝ですね!それじゃあ早速実体化おねがいします!」

「じゃあやりますね…それじゃこれをこうして…」

僕は端末を操作して実体化の設定をする。

肉体情報をコピーして細かい調整を行いそこに記憶などの情報もインストールしていく。

難しい作業でもなく初めてやるわけではないので手間取りはしない。


「よし。設定完了。あとは出力するだけですね。」

「すごいサクッとできるんですね…!まあでも世界を創れるわけですしカップラーメン作る感覚で人間も作れてもおかしくはないですよねえ。」

ミヨさんの時も似たようなものだったけどまあわざわざ言う必要もないので黙っている。

「それじゃあエルフ子ちゃんの誕生カウントダウンしましょうか!」

「カウントダウンの大役はお任せしますね」

「何を言うんですか!2人でやるんですよ!」

えーめんどくさ

「10!9!8!7!6!5!4!さん!にぃ!いち!ぜろ!」

ー生成スタートー


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