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5.離れて

短期連載中



 ミラマシェーリは秘密倶楽部に新しい私書箱を作った。


 以前ほど頻繁ではないが思いついたことを手紙に書き知らない誰かと交流する楽しさはいい気分転換になった。



 Y専用になっていた私書箱は閉じてしまいたかったがその為には閉鎖の理由を事務局に言わなければならならず、禁止されている直接の対面をしたこともあり閉鎖を見送った。放っておいてもはっきりと別れを示したのだから恐らく彼からの手紙は今後来ないだろう。


でも、私書箱に自分宛ての手紙を取りに行く時ふと、もう一つの私書箱が気になってしまう。


でもそれは見ないと決めている。

何故かというと中が空だときっと落ち込んでしまうから。

そう仕向けたのは自分だけど。




 二か月ほど経ったある日。


 ミラマシェーリは出かけた帰りに私書箱を覗いて自分宛の手紙を取り出した。差出人はここ二回ほどやり取りしている相手だ。

 

 当たり障りのない話をしているだけで恐らくソロソロ手紙のやり取りも終わりそうだ。今も手紙は続けているが、Yとの手紙の様に長続きはしなくなった。大体一二度で終わる。そういう関係の物ばかり。


 (やはりYの様な宝物のような人物はそう相違ないな)


 少し寂しく思いながら部屋を出て行こうとした彼女を事務局の人間が呼び止めた。


 「少しいいかしら?」

 「はい?」


 ミラマシェーリは呼び止めてきた職員の女性を見つめた。

 

 「333の番号の私書箱、貴方の所有よね?」

 

 Y専用にしていた私書箱の事を言われてミラマシェーリはドキリとした。


 「何かありました?」

 「手紙、溜まってるわよ。忘れずに回収してね」


 そう言って軽くポンと肩をたたかれて一気に力が抜ける。


 「手紙がたまっているって……どういうこと?」



 ミラマシェーリはここ一か月くらいは存在を忘れようとしていた私書箱の前に久しぶりに立っていた。それは隙間からも見えるくらいに白い封筒が詰まった箱。


 「何これ?」


 彼女は恐る恐る一枚とって中身を確かめる。

 

 そこにはあの最後に見た男性特有の筆跡で、その日に食べた夕食の感想が書いてあった。ミラマシェーリはもう一枚開けてみる。次は天気の話。その次は読んだ本の感想。全てが他愛のない雑談の様な物だった。それが何枚も何枚も入っている。


 「これを私に、どうしろと?」


 ミラマシェーリは箱に入った全部の手紙を抱きしめて小さく呟いた。

明日最終話です。

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