4.間違い
短期連載中
話の流れで短いです。
二日後、使用人のミーナがYからの手紙を持って来た。エルデバランとの事を告げる訳にもいかなかったのでミーナはいつもの様に私書箱を覗きに行ってくれたのだ。
しかし、まさかYから手紙が来るとは。
ミラマシェーリはゆっくりとYからの手紙を開封する。
書かれていた日付はあの日、当日。
彼はすぐに手紙を書いたのだろうか?
そこには明らかに男性の筆跡で先日の突然の行動についてお詫びの文章がしたためられていた。今までは几帳面な女性の文字だったから誰かに代筆をして貰っていたのだろう。
会う事が出来ないならせめて文通を続けたい。
もう少し君と話をしたい。
手紙の最後はそう締めくくられていた。ミラマシェーリは手紙を封筒に戻すとそっと手紙箱に入れた。
◇◇◇
一通の手紙がY宛に届いた。
差出人は勿論ミミ。
まさか返事が来るなんて。
エルデバランは使用人が持って来た手紙を受け取ってじっと見つめる。
使用人が退出したのを確かめて彼はそっと手紙を開いた。
《ごめんなさい、殿下。これ以上の嘘に私は耐えられないのです。ご存じのように私は元婚約者の無自覚な嘘に翻弄されてきました。やっと解放されたのにまた嘘をつかれたら、私は壊れてしまいます。だからごめんなさい。そして今まで支えてくれてありがとうございました。》
絞り出すように紡がれた文章にミラマシェーリの心の苦悩が現れていた。そしてエルデバランは自分がしでかした一番大きなミスをはっきりと理解した。
嘘。
自分はあの彼女の婚約者だった『ろくでなし』と同じことをしていたのか。
エルデバランは手紙を握りしめたまま暫く椅子から動けなかった