179話 いつか見た光景
レジョンでリーシャを始めとする青髪族の仲間を助けた俺たちは、一度アルスに帰還することにした。
……その前に、気絶させてティール島に送っておいた鎧の天使の核の衛兵たちは、レジョンに《転移》で帰してあげた。
気絶しているだけだと伝えると、ウテリアは涙を流しお礼を述べた。衛兵たちを使い捨てにするつもりだったのだろうが、よく分からない人物だ。
ウテリアをどうするかはあとでユリスに聞くとしよう。レジョンの鉱山にあるルクナイトもどうするかは、ユリスと相談するつもりだ。
そうして俺たちはアルスに帰還した。
転移柱のある広場では、ユーリたち元々いた青髪族とリーシャたち新たに加わったサイクロプスの魔族たちが互いに再会を喜んでいる。
「皆!! 本当に心配したんだからね!!」
「まったく大げさね、ユーリは」
一見人間のように見えるユーリと、サイクロプスのような見た目のリーシャ。ユーリたちも魔族だったときはリーシャたちのような巨躯だった。
中には、姿が変わったことで分からなかった友人同士もいるようだ。
それでも青髪族たちは合流を喜んでいた。ユーリがここまで喜んでいるのは久々に見たかもしれない。
無理もない。ほとんど家族のような者たちだったのだろう。
他の眷属たちは、その様子を温かく見守っていた。
「チュー!! 今日は青髪族さんたちの仲間が来た宴会を開くっすよ!」
ティアの掛け声に、他の眷属たちもおうと声を上げた。早速というか、今夜は宴会とするそうだ。
「まったく、なんだか毎日宴会してる気がしますね」
エリシアは呆れるような顔したが、すぐに微笑みを浮かべた。
いつもと変わらない様子だ。アリュシアとは特に会話はなかったが、寂しくなかったのだろうか。
そんな中エリシアが俺に顔を向けた。
「アレク様、いかがされました?」
「いや、アリュシアのこと」
「あの方と会えば、色々ハッキリするでしょう」
エリシアが目を向けると、そこには鏡の前で必死に己の体を確認している筋骨隆々のオーク──エルブレスがいた。
アリュシアのことを聞いたのだろう。娘に会えると興奮しているようだ。
一方のエリシアは淡々と答える。
「私はどのみち、ほとんど彼女との記憶はないですから。私へのお気遣いはありがたいですが、それよりもアレク様のほうが心配です」
「俺は大丈夫だよ。むしろユリスと話せて、展望がずっと明るくなった」
「それはよかった。確かに、お顔も明るいです。 ……しかし、青髪族との合流がここまで大変なことになるとは」
「ああ。ウテリアにユリス……決戦の日が来るとしたら、あれの比じゃないんだろうな」
思いがけない戦い。それも激戦だった。今後もああいうことが起こりそうだ。
「今以上に精進いたします。アレク様の手を煩わせることがないぐらい、強くなります!」
「そこまで気負う必要は……いや、俺も負けられないな。さっきユリスにも言われたけど剣も学んでおきたい。エリシアやセレーナに稽古をつけてもらいたい」
「私ならいつでもお相手いたします。セレーナより、私のほうが相応しいかと」
「いいや、私のほうが相応しい!」
後ろを振り返ると、そこには何故か水着姿のセレーナがいた。その隣には龍の姿をしたラーンがいる。二人の手には人の背丈ほどの大きさの魚を引きずるようにしてあった。
「セレーナ、ラーン。その魚は?」
「宴会の魚です! セレーナさんと一緒にちょっと遠くの海から獲ってきたんです」
「大物でしょう!」
自慢げな顔で言うセレーナ。リーシャたちを歓待したいのだろう。
「チュー! でっかいっす! でも、リーシャさんたちなら一口でいけちゃいそうっす!!」
「むむ。確かに……あ、というか」
セレーナが言葉を漏らすと、ユーリも気が付くように言う。
「そうそう、まだアレク様の眷属になってなかったね。昨夜も聞いたけど、大丈夫でしょ?」
昨日、洞窟で彼らの意思は確認している。俺の眷属となって姿が変わっても問題ないとのことだった。
リーシャは大きく頷く。
「もちろん!」
リーシャはそう言って俺の前で片膝を突いた。他のサイクロプスの魔族たちも同様に俺の前に片膝を突く。
「……アレク様、私たちを助けてくれるだけでなく、こうして迎え入れてくださりありがとうございます。これからはアレク様のために仕えさせてください!」
「仕えるなんて大げさな。この島はもうお前たちの家だ。これからは自由に暮らしてくれ」
「はい!」
リーシャがそう言うと、俺とサイクロプスの魔族たちとの間で光が交わされる。光が収まると、そこにはやはり一糸まとわぬ姿の青髪の者たちがいた。
俺はすぐに目を瞑って言う。
「成功したようだな。じゃあ服を」
新たな青髪族たちは自分たちの新たな姿に夢中のようで、俺の言葉は届いていないようだった。
メーレの声が隣から響く。
「本当に不思議。魔物みたいな姿が人に。悪魔の眷属は、悪魔に似るというけど」
「やはり俺が人間だから、人間に近くなっているのかもな。ティアたちは鼠人になった際、そんなに姿は変わらなかったが人間のように立って喋れるようになった。まあ、甲羅族やモノアたちリンドブルムはほとんど変わらなかったが」
「魔族には人の血も流れている。でも魔物は違う……そういうのも影響しているのかもね」
「その可能性はあるな」
メーレの言う通りかもしれない。そして先程のユリスの言葉も踏まえれば、やはり俺は人間だ。
ただ、この紋章がおかしいだけ……それがはっきりしただけでも今日は嬉しい。
「すごい! ちょっと頼りないけど、小回り利いて良さそう!」
リーシャの声のあとに、ユーリの声も聞こえてくる。
「でしょでしょ。ってアレク様。せっかくのリーシャたちの新しい姿、ちゃんと見てあげてくださいよ」
にやつくユーリの顔が脳裏に浮かぶ。
しかし俺もユリスとのあんな記憶やこんな記憶を思い出した今、裸の一つ二つなんとも感じない……多分。
「……ともかく、風をひかないように早く服を」
「了解です! さあ皆、これ着て」
しばらくして俺は目を開く。するとそこには服を着たリーシャたちの姿があった。
皆、やはりというか青い髪。それ以外は人間にしか見えない。
「ふうん。なかなかいい服じゃん」
リーシャは長い青髪を手で梳かしながら言った。
前の巨体はどこへやら、そこにはユーリと同じく引き締まった体の女性がいた。青色のロングヘアー、前髪が少し長く右目が隠れている。黒いブラウスと黒のタイトなズボンが彼女のクールなイメージとよく似合う。
ユーリが得意げな顔で答える。
「着心地もいいでしょ? ズボンはデビルスネークの革を使っているのよ。もちろん見た目も完璧。馬子にも衣装ね!」
「そんなことを言えるのも今のうちよ、ユーリ。私のほうがいいのを作れるんだから!」
「言ったわね。じゃああとでユリスさんたちが持ってくる角、どっちがよく加工できるか勝負よ」
「望むところよ」
顔を突き合わせる二人。リーシャたちの鍛冶技術も大いに期待できそうだ。
「チュー! それじゃあ正式に眷属になったところで、宴会を始めるっす!!」
ティアがそう言うと他の眷属たちもおうと声を上げた。
そうしていつもの祝宴が始まった。
とはいえ、新しい宴会が開かれる度にさらに食べ物や酒が豪華になっている気がする。料理のバリエーションも増えてきた。そういえば、楽器を吹く者も増えて、しかも演奏が上手くなっている。アルスが豊かになった証だ。
俺は目の前の光景に心が和らぐ気がした。自分が理想としていた安住の地。それに着実に近づいてきている。
まもなくして、夕暮れ時に転移柱の周囲に修道衣を着た二人が現れる。ティカとネイトだ。
「アレク様。ユリス様がエネトア商会に来られました」
「他の二人も一緒。アリュシアとセルナ」
「そうか。俺が直接案内する。皆は祝宴を続けてくれ」
そう言って俺はエネトア商会の中庭へと《転移》した。
一階の店舗部分に行くと、ちょうどアリュシアとセルナが邪竜の角を商会の青髪族に預けているところだった。
「ユリス、来たか」
「ええ。それで、ここからどうアルスに行くの? ちゃんとこうして旅支度も整えてきたけど」
「いや、それはいらない。こっちについてきてくれ」
「? 分かったわ」
俺はユリスを中庭へと連れていく。そこには噴水と転移柱が聳え立っていた。
「飛竜でも飼っているのかと思ったけど──これは」
ユリスは転移柱の近くで突然消えたり現れたりする眷属に目を奪われる。
「まさか……そう。さっきも瞬間移動していた。悪魔も使っている魔法を使っているわけね」
「そういうことだ。柱に《転移》の魔法を付与してある。これでアルスに行くんだ」
「さすがに驚いたわ。いえ、さすがというべきかしら」
そう答える割にユリスの顔は無表情のままだ。本当に驚いているかはちょっと分からない。
「ともかく、アルスに行こう。念じるだけでいい」
俺はそう言って、アルスへと再び《転移》で戻った。隣を見ると、ユリスたちも現れる。
「こ、これは……」
「て、帝都じゃないよねここ? 周りが海で囲まれているし」
アリュシアとセルナは唖然とした様子で周囲を眺めていた。
「アルス島……この周辺の魔鉱石は私も手に入れようとしたことがあるけど、労力に見合わなくてやめたわ。あの転移柱といい、ここの魔鉱石を使っているのね」
ユリスは何度もやり直しをしているからか、やはり察しが良い。
「しかしそれ以上に驚いたわ。まだやり直しが始まって一年経たないのに、これだけの仲間を集めるなんて」
ユリスは宴会をしている眷属たちを見てそう言った。
そんな中、アリュシアが口を開く。
「ユリス様。とりあえず私とセルナは、邪竜の角の件を」
「ああ、角はあの青髪のユーリに話してくれ。島のことや俺たちのことは、エリシアやセレーナに聞いてほしい」
俺は少し離れた場所に立つエリシアやセレーナを見て言った。
「承知、いたしました」
アリュシアはそう言うとセルナと共に、エリシアたちのほうへ向かった。
ユリスが言う。
「アリュシアとあのエリシアのことは気になるけど、私たちは私たちで話さないとね。あなたがこれからどうしようとしていたか」
「ああ。ユリスにも聞いてほしい」
そうして俺とユリスは近くの岩のベンチに腰かけながら、今までのことや今後のことを話した。
「……なるほど。ユリスが邪竜を優先して倒すのは、邪竜が最も厄介な相手だからか」
「ええ。悪魔より強い一方で、悪魔よりも見つけやすい。積極的に悪魔側の戦力を減らせるわ」
「そうか。ルクス湾の邪龍とか、本当に強かったしな……」
「あの邪龍……今回はいつも以上に強かったわ。あの時、あなたは私を助けてくれたわけね」
ユリスはルクス湾に現れた邪龍に挑み、気絶する事態に陥った。
「……おそらくは、俺はラーンたちをアルスに逃がしたり眷属にしたからだ。ラーンは子孫である自分たちが離れると暴走すると言っていた。ユリスは、あの邪龍を倒したことはあったのか?」
「ええ。基本的には、こっちが準備の整う数年後に倒していたけど、現れたこの年で倒したこともあったわ」
「すごいな……」
「あなたの協力もあったからよ。聖油を備えた船を口に突っ込ませたりとか、色々なやり方をあなたは考えついた。それを私が次のやりなおしで使ったりね」
「俺が……」
「ええ。あなたは魔法が使えなくても頑張っていたってことよ」
ユリスの声に俺はどこか嬉しくなる。闇魔法を使わなかった俺も戦力になっていた。
一方で、今の俺はあまり頭を使っていないのかもしれないな……
「ともかく邪竜は倒すのは大変だけど、その分成果も大きいし効率がいい。一方で闇の紋章持ちを全員保護するのは現実的じゃなかった。人里に紛れている悪魔は炙り出しに時間がかかりすぎる」
「人里に隠れている悪魔……じゃあ」
ユリスが深く頷く。
「ええ。あなたが見つけてくれた拝夜教団は確実に存在するはずよ。名前があることは知らなかったけどね」
「リュセル伯爵のこともか?」
「知らなかったわね。彼は王都の人々のために最後まで戦うところしか見たことがなかった。でも、あなたが言うように地下で倒したリュセル伯爵と、地上のリュセル伯爵がいるなら……話は変わってくるわね」
「ああ。だが、残っているリュセル伯爵にまったく怪しいところはない」
「警戒しておくことに越したことはないわ。あのメーレという子の姉も気になるわね。黒衣の女……」
ユリスは何かを思い出そうとしているのか目を瞑る。
「見たことはあるか?」
「悪いけど……正直、決戦の時はとても悪魔の識別なんてできる状況じゃないの。皆、だいたい黒っぽいしね」
「確かに……ただ、どのみち俺はその黒衣の女も」
「ええ。最後には倒している。リュセル伯爵もね。もちろん、人間でなくなったあなたの話だけどね」
「決戦の前になんとか対処できるといいんだがな……それと、俺の中の悪魔もどうにかしておきたい。悪魔が俺の体を乗っ取る、というわけじゃなさそうだが」
「どうかしらね……天使も悪魔も見つけては殺していく。悪魔があなたの制御を乱している可能性はあるわ」
俺と悪魔の意識が混じったのが、あの異形だとしたら……
「となると、やはり悪魔の件もなんとかしておく必要がありそうだな」
「ええ。それも含めて、やはりあなたは今の計画を進めていくべきよ」
「ミレスに行き、リュセル伯爵を監視しつつ、自分の中の悪魔をどうにかする、というわけか」
「ええ。ミレスで悪魔や闇魔法についてあなたが知る以上の知識を得ることは難しいと思うけど。それが理にかなっているわ」
「俺もそう思う……だけど、邪竜退治や各地の拝夜教団の調査もしないといけない。魔王軍も悪魔側に呼応するはずだからある程度対策を練らないといけないし」
「それは私がやる」
俺が「でも」と言いかけると、ユリスが続ける。
「魔法は確かにあなたのほうが強いでしょう。でも、帝都の外は、私のほうが詳しい。場所も人も、やり直しごとに記憶してきたわ」
ユリスの言う通り、やり直し前帝都から出てこなかった俺とユリスでは、外界の知識は雲泥の差だ。
「そこに、あなたの仲間の協力、そしてあなたたちが作った魔道具が加わる。私に怖いものはない。やり直し前も、外回りはアレクじゃなくて私の領分だったし」
戦闘経験もユリスのほうが豊富。俺が超えてきた以上の修羅場を何度も経験しているはずだ。先程のユリスとの戦いも思い出せば、何の心配もいらない。
ここはユリスの心配より自分を心配すべきか。
「……分かった。俺は自分の計画に集中する。だけど、必要なことがあればすぐに言ってくれ」
「ええ。あなたも私にしてほしいことがあったら何でも言って」
俺は深く頷いた。
ユリスはふうと息を吐いて、宴会が開かれているアルスの広場を見る。
「まだまだ共有しないといけないことはあるけど、決戦の日まではまだだいぶ時間がある。その都度、計画を立てていきましょう」
俺たちはまだ子供。やり直し前の最後の年になるまでは、あと十二年ある。だからそれまでに……いや、待てよ。
「そういえば、その日……決戦の日はいつなんだ? いつも同じ日に起きているのか?」
「いや……多少前後するわね。私が知る限り、二年ほどずれた時もある」
「つまり、決まった日じゃないってことか」
その日は、あのルスタフが生きていた千年以上前の時代からすぐに来るかもしれないと言われていた。
「天使側は受け身。だから、悪魔側次第なのは間違いないわ。早ければ悪魔が少ないというわけでもないから、なんとも言えないけど」
「ということは、状況次第ではそもそも止めることも」
「できる、そう思うわ」
「そうか。なんというか一気に緊張感が……いや、油断しちゃいけないな」
「ずっと気負ってばかりじゃ、いざというときに力が出せないわ。適度に休みなさい」
「そう、だな」
俺は頷く。ユリスはいわば、何百年も生きているのと同じ。本当に様々な面で頼りになりそうだ。
ユリスは再び宴会、アルスを見ながら口を開く。
「ここは落ち着く……休むのにはもってこいね。あなたと再会して色々驚いたけど……一番はこの光景ね」
「アルスのことか?」
「もちろん島は綺麗だけど、あなたの仲間のことよ。皆、楽しそうに暮らしてる」
ユリスはやはり魔族や闇の紋章持ちを嫌う人物ではなかった。俺にも優しくしてくれていたのだから当然か。
ユリスはどこか懐かしむように眷属たちを眺めていると、やがてこう切り出した。
「……実はね、何度か同じような光景を見てるのよ」
「俺が領主に?」
「領主というよりは、辺境の開拓者ね。そこに魔族や闇の紋章持ちの人たちと一緒に街やら村を建てたりしたの。こんなにたくさんはいなかったけど、楽しく暮らしていた」
「そう、だったのか」
「だから、やっぱりアレクは変わらないんだなって」
俺も宴会をする眷属たちを見て言う。
「自分がこういう境遇だったからかもしれないな……俺はここを魔族や闇紋章持ち、いや誰もが心安らぐ地にしたかったんだ。そして今、その理想に近づいてきている」
「素晴らしい光景よ」
ユリスの言葉に俺は満たされる気がした。記憶はない。しかしユリスはずっと俺の理解者でいてくれたんだ。
俺はユリスに本心を打ち明ける。
「だから俺は、皆をその日から守りたい」
ユリスはこちらに無表情の顔を向ける。
「……覚悟はできている。異形になっても皆を守れるなら何の悔いもない。だからその時は」
「……悪いけど、何度もそんな感じのセリフ聞いたわ。私が聞きたいのはそんなセリフじゃない」
ユリスは少し強い口調で返してきた。尻を叩かれるような、そんな言葉だった。
そうだ……最良の結果を目指さなければ、守れるものも守れない。
俺が死んだら皆がどうなるか、という懸念も残る。セレーナは他者を襲う鎧に戻ってしまうかもしれない。エリシアだけじゃなく、皆悲しむだろう。
俺は頷いて答える。
「……皆で無事に乗り越えたい。そして皆でずっと平和に暮らすんだ」
ユリスは深く頷いた。
「その意気よ」
そう答えるユリスはどこか嬉しそうにも見えた。笑顔ではないが、なんとなく気持ちが伝わってくる。
その日を乗り越えれば、ユリスを笑わせることができるだろうか?
「……そのときはユリスも一緒だ」
「ええ。私もいい加減、こういう綺麗な場所でゆっくりしたいもの。こう見えて、おばあちゃんどころの年じゃないんだから」
ユリスはそう言って腰を叩いた。ユリスなりの冗談だろうか。
「チュー! 二人とも、難しい話は終わったみたいっすね! 二人の席も用意したっす!」
ユリスは少し口角を上げて言う。
「今日はお祝いなのね。なら、私も祝わせてもらおうかしら」
「ああ。ユリスたちの再会……同盟祝いもしよう」
「そうね」
「アルスの魚は美味しいんだ。説明するよ」
そうして俺とユリスは一緒に食事をすることにした。表情は硬いが、ユリスはアルスの魚を気に入ってくれたようだ。
俺たちは新たな、そしてとても強力な仲間を得るのだった。
長くなってしまい申し訳ありません……
次回から六章、六章の主な舞台はミレスです! 引き続き読んでいただけると幸いです!