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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

のっぺらぼうさん

作者: 猫饅頭

初投稿です。

感想や改善点大歓迎です。

よろしくお願いしますー

子供のときから僕は人間に嫌われている。

仲良くなりたくて、一緒に遊びたくて近づいてもいつも石を投げられる。

僕はただ仲良くなりたいだけなのに……


なぜ人間は僕に石を投げるの?と、母さんに一度だけ聞いたことがある。


「それは私達がのっぺらぼうだからだよ。人間たちは自分とは違う生き物がいると忌避するからね。」母さんはそう答えた。


「でも僕は、仲良くなること諦めないよ。」


そう僕が言うと母さんは、


「そうかい、それなら私もお前のことを応援するよ。お前は優しいからきっと叶うさ。」


と言った。


ある日、僕は村の人に山に山菜を取りに行こうと誘われた。

僕は誘われたことが嬉しくて喜んで着いて言った。

山の中に入りしばらくすると村の人達が立ち止まった。

まだ山菜が生えてるとこから大分遠いよ?と言おうとした時僕の頭に鈍い痛みがはしった。


…………目が覚めると外は真っ暗だった。

どうやら僕は村の人に頭を殴られ気絶してたようだ。

どのくらい気を失ってたのだろうか?まだ痛む頭を抑えて村の方へ帰ると…………僕の家が燃えていた。

燃える家の周りを村の人達が取り囲んでいる。

けれどそこに母さんの姿はなかった。

村の人が僕に気づく。僕の頭に何かがあたった。石だ。

村の人は言う。早くこの村から出ていけと。さもないとお前も母親と同じようにするぞと。

そう言って村の人が見せてきたのは、母さんの生首だった。


怖い怖い怖い。逃げないと逃げないと逃げないと。


僕は耐えきれずに村の外へと、森の方へと走り出す。村の人が追いかけてくることはなかった。

けれど僕は走り続けた。


どのくらい走っただろうか?

だんだん足が言うことを効かなくなってきた。

走るのをやめとぼとぼと歩いていると目の前に布切れが落ちていた。

なんだろうと思い近づくと布だと思ったものは僕と年が同じくらいの人間の女の子だった。

酷く衰弱している。

正直人間はしばらく見たくない。

僕は倒れている女の子のそばを通り抜けた。でも数歩歩いて戻った。


人間のことは許せない。

けれどこの子にはなんの罪も恨みもない。

それに、ここで見捨てたら死んだ母さんが悲しむと思ったからだ。


僕は女の子を抱える。ひどい熱だ。

どこかいい場所を探し歩き続けると山小屋があった。

長い間使われてなさそうだ。

ここなら大丈夫だろうと思い僕は小屋に入り女の子を床に横たわらせる。

近くの川に行き自分の服を破り、それを濡らして女の子の額に置く。

しばらくすると苦しそうな息が少しマシになった。

ひとまずは大丈夫そうだ。

そして僕は疲れた体に押し寄せた睡魔に負け眠ってしまった。


朝になり目が覚める。

ここはどこだろう?そうだ、僕は昨日……

寝ぼけた頭が徐々に鮮明になる。

昨日起こったこと、母さんが死んだこと、その悲しみをぐっと抑える。

そうだ、あの女の子は?

ふと、思い出した僕は女の子の方を見る。

すると僕は目を覚ました女の子と目が合った。


僕は固まってしまった。

どうしようどうしよう?逃げないといけないかな?

僕は確かにそう思った。

けれどつい口から出た言葉は


「大丈夫?」


という言葉だった。

女の子は動かない。じっと僕を見つめてる。

ああ、やってしまった。

きっとこの子は僕が怖くて動けないんだ。

僕は女の子のためにここから立ち去ろうとする。


「まって!」


僕の足がピタリと止まる。

聞き間違いかな?でも確かに聞こえた。

僕は後ろを振り返って見た。

すると女の子が近づいてくる。


「あたま、怪我してる。」


あ、そういえば僕は村の人達に石を投げられた。きっとその時に切ってしまったのだろう。


「大丈夫?」


女の子は心配そうに言う。

人間に心配してもらうのは初めてだ。

心がなんだかポカポカする。


「大丈夫だよ。ちょっと切っただけだ。それよりも君は僕が怖くないの?」


僕はおそるおそる聞いた。


「だってあなたは私を助けてくれたんでしょう?そんな人が怖い人なわけないわ。」


女の子が言う。

その言葉が嬉しくて、初めてで、僕は泣いてしまった。


「!!」


僕が泣いてるのを見て女の子が慌てる。

心から心配をしてくれているのがわかる。

僕はしばらくの間泣き続けた。


しばらくしてようやく落ち着いた。

女の子が布をくれる。

僕は涙を拭きながら


「ごめんね、急に泣いちゃって」


と謝った。


「大丈夫。誰にでも辛いことはあるからね。それよりもあなたの名前を教えて欲しいな?」


「僕に名前はないから好きに呼んでくれていいよ。」


「そうなの?じゃあ……のっぺらぼうだからのっぺらくんね!ちょっと安直すぎるかしら?」


そう言い首をかしげる女の子はなんだか可愛くて、僕は思わず笑ってしまった。


「急に笑うなんて失礼だわ!ふんっ」


「ごめんごめん、ねえ、君は……」


「私の名前は楓よ」


「楓はなぜあんなところで倒れてたの?」


「……私ね、村の人柱になるはずだったの。でも怖くて儀式の前日に逃げ出してずっと飲まず食わずで歩き続けてた。そしたらついに限界がきちゃったの。」


「じゃあ帰るところはないの?」


「うん。残念なことにね。」


そう言って笑う楓はとても悲しそうだった。


「それなら僕と一緒だ。僕も村から追い出されたんだ。」


「そうなの?」


「うん。」


そう話したあとしばらくの間、僕と楓の中に沈黙が訪れた。

もし、楓が帰る場所が本当にないのなら僕と一緒にいてくれるだろうか?


「「あのさ、」」


二人の声が重なる。僕は楓に先にどうぞと言った。


「私ね、考えたの。もしのっぺらくんが良ければ私と一緒にいてくれない?二人で旅とか楽しそうだし……」


楓が照れくさそうに言う。まさか僕と同じことを考えているとは。


「僕も同じことを考えてたんだ。楓が一緒にいてくれたらなって、でもいいの?僕はのっぺらぼうだよ。僕といると楓がひどい扱いを受けるかもしれないよ?」


「全然いいの。それにもしそんな人がいたら私がやっつけてやるわ!」


「あはは、楓らしいや」


「でしょ!……じゃあ決まりね」


そう言い楓は僕に手を差し出してくる。僕はそれを迷わず握り返す。


「よろしくね、のっぺらくん」


「こちらこそ」


そんな人やり取りをして二人は笑い合う。

どんなに辛いことがあっても楓と一緒なら乗り越えられる気がする。


数年後、優しいのっぺらぼうと人間の女の子が旅をしている、そんな話が噂になることを二人はまだ知る由もない。


最後まで読んでいただきありがとうございました(*' ')*, ,)ペコリ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前半はシリアスで可哀想でしたが、 後半ではのっぺらくんと楓ちゃんが仲良くなったところが良かったです! 人間と妖怪の絆、まさに鬼太郎や妖怪ウォッチみたいですね!
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