義母と娘
✳︎ ✳︎ ✳︎
リリアは、騎士団女子寮の自室の机に座りため息をついた。
机の上には、招待客へ送る手紙が山ほど積み重なっている。通常、手紙は両家の母親が手伝って書いてくれるのだが、リリアの母は庶民であり、そういった手紙の作法には疎い。
せめて最低限リリアが恥をかかないようにと結婚式でのマナーの習得に力を入れてくれている両親に、これ以上の負担を強いるわけにもいかなかった。
マナーについては努力家の父と母のことだ。侯爵家からも優秀な講師が派遣されている。特に心配はないと思うが。
レオン団長は、忙しく領地と王都を往復する日々を送っている。本当であれば領地である程度の地盤を固めるためにとどまった方が良いのだが「リリアに会えないなんて死んでも嫌だ」と言って、遠い道のりを帰って来るのだった。
往復に付き合ってくれているロンにも申し訳ないが「魔獣の森を放っておくと、また騒ぐやつらがいるからな。リリアのそばにもいたいから、ついでにレオンを乗せてやるだけだ」と言っていた。本当に時々とても男前の竜だ。
「さ、続きを書かないと間に合わないよね」
リリアが、手紙と向き合いペンを握った時に少し慌てた雰囲気でドアが叩かれた。
「リリア!大変よ?!」
「どうしたの?」
「お客さんなの!とにかく来て!」
いつもおっとりと構えていることが多いパールが、こんなに慌てるなんて珍しい。
リリアが階下に降りると、そこには黒髪に黒い目をした優しい雰囲気の女性が立っていた。
初めて会うのに、すぐにわかってしまう。切れ長でまつ毛の長い瞳、少し薄い唇、黒い髪……。
(本当に、お母様似だったのね。レオン団長は)
いかつい雰囲気の閣下とは、瞳の色だけが似ているレオン団長。
しかし、目の前にいる女性は優しい雰囲気ではあるが、本当にレオン団長に似ていた。
(それに、聖女の力を失ったって聞いていたのにこれは……)
「はじめまして、あなたがリリアさんなのね」
「はじめまして。リリアです。お母様……とお呼びすることをお許しいただけますか?」
「うれしいわ」
そう言って微笑んだレオン団長の母親。まるで一面に美しい花が咲いたように錯覚しそうだった。
(レオン団長は、横に並ぶのが辛いほど美形だけど、お母様のこれは……。女神、女神なの?!閣下が溺愛するのもわかる気がするわ)
陛下はリリアとの約束を守ってくれたようだ。
「あの、閣下やレオン団長とはお会いになりました?」
「まだなの。一番にここに来てしまったから。でも大丈夫、きっとすぐに来るわあの人。それよりも、招待状に苦戦しているのではないかしら?」
「え?すぐに来る……?」
その直後、後ろで扉がすごい勢いで開いた。
「リーナ!!」
唖然としているパールとリリアには目もくれず、将軍閣下がリーナお母様に抱き着いた。
「会いたかった。リーナ、まるで時が止まっていたかのように君は相変わらず美しいな」
「閣下……」
「――――リーナ。もう、エディとは呼んでもらえないのか?」
「エディ……私も、会いたかったです」
甘い!義理の両親二人の空気が甘すぎる!
そして、閣下の台詞が持つ雰囲気はあまりにレオン団長のそれと酷似していた。これを、周りに振りまいていたのかと今更ながら気づいてしまったリリアは赤面する。
今度から、人前ではレオン団長の空気にのまれないように自粛しよう。
リリアはそう心に誓った。
最後までご覧いただきありがとうございました。
『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるととてもうれしいです。




