お子様ランチと家族計画
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「なんて言うか、俺が抜けたせいでやっぱりギアスのやつに目をつけられて、悪いな?」
「カナタさんのせいじゃないわ。何だか戦場でレオン団長と因縁対決があったようだし」
カナタは、リリアの横で難しい顔をしている。今日は、レオン団長の命令でカナタはリリアの隣にいる。
命令がないと、すぐに屋根裏に消えてしまうから、リリアがレオン団長に頼んだのだ。
「ところで、我が主はなぜエプロン姿なんだ?」
アメジスト色の瞳を瞬いたカナタが困惑したように呟く。背が高く普段威厳を醸し出しているレオン団長のエプロン姿に違和感があるようだ。
(可愛く見えて良いと思うけど)
「カナタは育ち盛りだからな。もっと食べろ?」
そんなカナタの目の前には、山盛りのお皿。ハンバーグにエビらしきもののフライ。フライドポテトにオムライス、プリンも添えられている。
(このラインナップ、お子様ランチじゃない?)
「いや……どこのお貴族様の食事だよこれ」
「レーゼベルグ伯爵様のだが?」
「いや、お貴族様は自分で調理したりしないと思うんだよな?」
「そうか?人それぞれだろう。とにかく食べろよ、命令だ」
渋々と言った感じで、一口食べたカナタだったが、そのあとは無言でバクバクと食べ始めた。それを微笑ましく見ているレオン団長。
「……子どもが生まれたら、こんな感じなのかなぁ」
そう思わず呟いたリリアを信じられないような目でレオン団長が見つめる。
カナタは、一瞬だけ手を止めたが、目線を向けるのもツッコミを入れるのもやめることに決めたらしい。さっきよりも勢いよく食べ始めた。
「あの……リリアさんそれは」
「――――!?」
リリアは急速に頬に熱が集まるのを感じる。たぶん、今リリアの顔は真っ赤になっているに違いない。
(今、私は何を言ったの?子どもが生まれるってそういう……そういうことだよ?!)
「分かってる。リリアはそんなつもりじゃないって。でも、期待してしまうのは仕方がないと思うんだ」
「――――ウジウジするな。男だろ?」
何故かモゴモゴと何か言っているレオン団長を焚き付けるカナタ。
「ふ――――。ま、そうだな?リリア」
「あ、あの……レオン団長?」
リリアの赤く染まっているであろう頬を、そっと手のひらで撫で上げるレオン団長。そのままリリアの髪に口づけを落とす。
先ほどの焦る初々しいレオン団長はどこかに消えて、今は余裕たっぷりの大人のようにリリアには見えた。
「俺もリリアが聖女の力を失わないために自制してる。でも、あまり不用意に煽ると、どうなるかわからないよ?」
「あっ、あのっ。あのっ」
――――ガタンッ
いつもは決して物音を立てないカナタが、勢いよく立ち上がった。
「御馳走様。命令は完遂したから俺は行くから」
(しまった、カナタさんがいたのにこの状況!居た堪れない)
「あと、一つだけ言っておく」
それからカナタは勢いよく二人を振り返る。
「俺は、子どもじゃない!!」
珍しく消えるのではなく走り去ったカナタ。そんなカナタを、リリアの髪の毛から手を離さないままで微笑んでみているレオン団長。
「カナタはまだまだ、可愛い子どもだな」
やっぱり、レオン団長なら素敵なお父さんになるのかな。リリアはそう思ったが、流石にそれを口に出すのはやめておいた。
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