竜と人
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「やっと来たの?リリアとついでにレオン。遅いよ。あと、その背後の人だれ?」
銀色の竜が倒れるその前に一人立つのは、オレンジの髪に金色の瞳をした青年。
歳の頃は、リリアと同じ16歳くらいだろうか。振り返った顔は少し垂れ目がちで、しかしその瞳は強い意志を宿しているように感じた。
「ちっ、お前……」
「レオン?こういう時は、おめでとうって言うもんだろう?」
レオン団長と青年は、旧知の仲のように見つめあっている。いや、睨みあっている?
「あー。めでたいことなんだな?……おめでとう」
レオン団長が、髪の毛をグシャッと崩しながら言う。なぜか内心穏やかではなさそうだ。
「ありがとう、レオン?でも、もう少し焦った方が良いかもね」
「……どういう、意味だ」
「だって、俺たちは番と認めたら相手に対してひどく執着するもの」
リリアの方を振り返った青年は、満面の笑みだ。はっきり言って、その容姿はかっこいいというよりまだ幼く可愛い。背丈もリリアと同じくらいだ。
「なっ…………?!」
ひどく慌てた様子のレオン団長が制止する間も無く、青年がリリアに抱きついてきた。
「えっ?!」
「会いたかったよリリア!レオンは強いけど、たまに頼りにならないから、リリアのこと心配してたんだ」
こんな風に、リリアとレオンについて語る相手を、リリアは一人しか知らない。いや、一頭しか。
「……まさか、ロンなの?」
「そうだよ。……すぐに分からなかった?」
大きく少し垂れた金色の瞳が、リリアを上目遣いに見つめてくる。あざと可愛い。反則だ。
「だって、まさか人間になるなんて」
「え?上位の竜が人になれるなんて常識だろ?」
「…………え?」
「…………え?」
二人はそのまま見つめ合う。視線が交差するその真ん中にレオン団長が割り込んできた。
「たしかに、上位の竜は番を見つけて大人になると人に変身できる。だが、ロン……」
「なに、レオン」
「上位の竜自体が、今の時代滅多にいないんだよ。だから、常識ではない」
「……それでも、レオンは知ってたのにリリアに教えてなかっただろ」
レオン団長が、顔を手のひらで覆ってしまった。
(あ、図星指されたのね)
「ふんっ。レオンは俺がライバルになると思って、リリアに言わなかったんだろ!」
「うぐぐ……」
今度は、リリアの腕に自分の腕を絡めてしがみつくロン。そのまま、自慢げな顔をしてレオン団長に挑戦的な目を向ける。
「一般的に言って心の狭い男は、嫌われるんだぞ!な?リリア」
「そ……そうかもね?」
たしかに、一般論として心は広い方が良いだろうとリリアは思う。
そして、それよりも前世でも今世でも一人っ子だったリリアとしては可愛い弟が出来たようで、密かに嬉しかった。
カナタ「あれ?我が主の婚約者じゃなくて、姫は上位竜の番……なのか?では、あの二人の甘さはなんだったのか。幻だったのだろうか??」
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