竜騎士団創設
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リリアが領主の屋敷に着いたところ、飛竜たちは再び地に降りて羽をたたんだ。そのまま動く様子はなく、人が近づいても攻撃してこなくなったそうだ。
「飛竜たち、私が乗っても攻撃してこないの!それどころか擦り寄ってきて可愛いから魔獣の肉で餌付けしてるの!私、竜騎士になることにするわ」
アイリーンは、また無茶なことをしたようだ。だが、レオン団長は頷くとアイリーンに命令を下す。
「では、アイリーン。竜騎士団創設はお前に任せる」
「任せられたわ」
リリアは、信じられない気持ちでレオン団長の方を振り向く。
「大丈夫だ。アイリーンが飛竜程度に遅れをとるはずがない。であれば、やってみるべきと判断した」
真面目な表情のレオン団長。冗談ではないようだ。
『竜騎士に俺はなる』
(んん?いま木下くんの声が脳裏に浮かんだけど?)
「あの……レオン団長?」
「昔の話は今は聞きたくない」
そうだ、木下くんは七瀬が騎士物語の続編の竜騎士物語にハマった時にそんなことを叫んでいた。
「あの、もしやまた七瀬の余計な一言が尾を引いてるんですか?」
「余計じゃない!可愛い七瀬が竜騎士と一緒に竜の背中に乗ってみたいと言ったら叶えたいと思うのは当然だ。俺だってリリアに言われたら即実行だ!」
(レオン団長は、騎士団の強さをさらに高めようと言うだけでアイリーンに指令を下したわけではない気がしてきた)
昔の話を自分からしてしまったレオン団長は、少しだけ目元を赤くしてリリアから目線を逸らした。
それに、この世界には本当にドラゴンも飛竜もいる。やると言ったら、レオン団長ならやりかねない。
(ロンなら頼んだら乗せてくれそうだけど)
それにしても、七瀬が読んでいた物語が、魔王とのラブストーリーとかでなくて本当に良かった。
もしかしたら、ここにいるのは騎士団長ではなく魔王だったかもしれない。
(いや、流石にそれはない。ない……よね?)
竜騎士団が創設される。でも、これは現状、レオン団長直属、レーゼベルグ伯爵領の私設部隊だ。
「あの、レオン団長?過剰戦力では」
どこと戦おうと言うのか。
「……戦争は嫌いだ。だが、帝国からリリアを守るためなら俺は準備を怠ったりしない。それに、ここは魔獣があふれる最前線であることを忘れるな」
平和に慣れてしまっていると気付かされるリリア。人の生き死にには七瀬として関わってきたが、そこには機材も人手もあった。
リリアが5歳の時に、帝国との和平が結ばれた。リリアは戦争を知らない。その戦争に、今のリリアと同じ、わずか16歳のレオンが参加していたのに。
「そうだね。幸せな毎日に、そんなこと思いもしなかった。私も騎士団の一員なのにね」
「……リリアには、ずっとそのままでいて欲しい。そうであるように全力を尽くすんだよ」
レオン団長は、飛竜に近づくとその頭をそっと撫でた。
アイリーン「燃えてきたわ!初代竜騎士団長の座は私のものよ!」
その頃、王都で書類業務と戦うルード。
ルード「アイリーンがまた無茶をしているような予感がする」
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