甘い空気と乱入
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レーゼベルグに着いたと言うなら、ここはどこなのか。レオン団長は、忙しいのではないのか。ここにいて良いのか。
「あの、ここはレーゼベルグのどこなの」
「俺たちの屋敷だよ」
(俺たちの……)
「――っ――――?!」
「リリアの部屋だけは、住みやすいように全部揃えておいた。他の部屋はこれから手をつけるけど、リリアの好きにしても良いよ?ちなみに、執務室と繋がってるから。いつでも会えるよ」
夫婦の寝室同士が繋がっているというのが、普通じゃないのだろうか?いや、まだ夫婦じゃないから繋がっていても困ってしまうのだが。
つまり、騎士団の団長室の奥にあるプライベートスペースをリリア用に改造してしまったと言うことなのか。
(というより、これは執務室を通らないと出入りできないやつなのでは?)
「――――リリア、いつもそばにいたいのは事実だけど、リリアの安全のためだから?」
「――また、相談もなく」
安全と言われれば、思い当たることばかりのリリアは黙るしかない。少しだけレオン団長の瞳が真剣なものになる。
「相談しようと思ってたら、寝たまま起きないから。……リリアが好きそうな感じにしてみた」
「……ごめん、また心配かけたね」
それにしても、なぜリリア以上にリリアの好みを理解しているのかという謎は解決しない。
記憶力……の勝利なのだろうか?
「カナタは寝てるだけだから平気って言ってたけど、もしかしたら、もう、目を覚まさないかと、思った」
レオン団長の声が震える。色が変わるほど強く握りしめられたレオン団長の大きな手。
そっと添えてみるリリアの手は重ねると子どもの手に見えてしまうほどだ。それでも、リリアは小さな両手でレオン団長の手を包み込む。
「リリア。ちゃんといることが分かるように、レオンって、呼んで」
「……レオン」
それを聞いて、少しだけ切ない溜息のような一呼吸をした、どこか苦しそうな、レオン団長の笑顔。二人の間に流れる甘い空気。
――――バァン!!
「リリアッ起きた?!」
相変わらず、ノックもせずに唐突なアイリーンの乱入。
甘い空気は霧散した。
カナタ「…………なんだか、砂糖吐きそうだ」
カナタさんは天井裏から見ています。
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