理想の部屋
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レオン団長と木下くんが出てきた幸せな夢から目が覚める。カントリー調の家具、レースのカーテン。小さな薔薇の花の模様をしたベッドカバー。信じられないくらいリリア好みの部屋に寝かされていた。
「わ、夢にみた憧れの部屋そのものが今ここに?!」
何故眠っていたのかは思い出せないが、リリアは幸せな気持ちでいっぱいになった。
――――ガチャ
ドアが開く音がして振り返ると、レオン団長が入ってくるところだった。
「……目が覚めて良かった。その様子だと気に入ってくれたみたいだな?」
そう言って手を差し伸べてくれたレオン団長は、やっぱり困ったように見えてしまう笑顔でこちらを見ている。
「レオン団長……」
ということは、この部屋を用意したのはレオン団長?いったいここはどこなのか。
「体は大丈夫か?」
「そう……。私は大丈夫。レオン団長と木下くんの夢を見ていたから」
そのままレオン団長に手を引かれてリリアはベッドから起き上がる。どこも痛くないし気分もそれほど悪くない。
「リリアが寝てる間に、着いちゃったんだよ。レーゼベルグ。三日も寝てるから……何度あいつ、始末しようかと思ったことか。なのにその度に小出しにしてくる情報がどれも重要すぎて」
そしてそのまま抱きしめられた。
「情報も課題も山積みで、こんなこと思っている場合じゃないのに、俺の夢見てたなんて言われたら」
唇と唇が近づく。ピーコックブルーの瞳が目の前に見えてきて、リリアは思わず目を瞑った。
――――ぐぅ。
レオン団長に聞こえてしまったようだ。クスッと笑われた。なんだかとてもお腹がすいている。三日も食べてないなら当然か。
「お腹すいた?レーゼベルグはなんと、米が主食なんだ。お粥作ってあるから温めてくる」
そういえば、レオン団長はエプロン姿だった。似合いすぎてて違和感がない。たぶん騎士団のみんなが見たら、騒然としそうだが。
レオン団長が行ってしまったので、リリアは窓辺の小さなテーブルと二つの椅子があるスペースに行ってみた。少しふらつくが、特に痛みもない。
(それにしても椅子ひとつまで好みピッタリというのはどういうことなの)
リリアが自分で揃えても、ここまで好みの部屋に仕上がるとはとても思えなかった。
レーゼベルグに着いた。なんだろう、何かとても大きな事件があった気がするのに。
「あっ、襲撃されたんだった!黒い装束の」
「……呼んだか」
呼んでない!って答えそうになった。なんにせよ、男には相変わらず気配がなかった。
「もう、危害を加える気はないから安心しろ」
男はなぜか騎士服を着ている。それに覆面もせず、思ったより幼い金髪にアメジストの瞳の素顔を晒している。
(でも、この声も気配も。あの黒装束の男に間違い無いよね?なんでここに?!)
「警戒するなというのは、無理な話か。聖女様を攫って帝国に連れて行こうと思ったんだが、団長さんが本気出したところ見たら強いのなんの」
「帝国……?」
「ああ、あちらの皇帝の配下になっていたんだが、強さは団長さんには負けるな?――俺はとにかく強い人間の配下にしかならないと決めてるからな」
たぶんまた、レオン団長は無理を通そうとしたのだろう。リリアを守るために。
「カナタ。リリアには近づくなど行ったはずだ」
「挨拶しただけだ。我が主の姫様にな。俺も護衛してやるんだありがたいだろ?」
「…………そうだな。だがリリアの半径五メートルに近づくな」
「うわ。ちょっと引くレベルだな。わかったよ。じゃ、天井裏からでも護衛するかな」
そう呟くとカナタは再び姿を消した。どういう仕組みなのかリリアは不思議に思う。
「驚いただろ。なんか成り行きで配下になった」
(成り行きって!)
そう言いたかったリリアだが、テーブルにレオン団長が座って、スプーンに掬ったお粥を差し出してきたので黙った。
「少し冷ましてあげようか?」
ふーっとレオン団長が冷ましたスプーンのお粥。お粥なんて、この世界に来てから初めて食べる。
「ほら、食べて?」
「自分で食べられるよ?」
「俺が食べさせたいんだけど、三日間も目を覚さなくて不安だったんだよ。ダメ?」
結局、お粥を全部食べ終わるまでレオン団長が口に運んでくれた。
カナタ「姫さんの護衛している間、ずっとこんなの見せつけられるのは俺にしては珍しい想定外だ」
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