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転生したら幼なじみが騎士団長になっていました  作者: 氷雨そら
異世界で幼なじみともう一度

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落とし子

ご覧いただきありがとうございます。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「何をしている。そんな体たらくではレーゼベルクの魔獣に一撃でやられてしまうぞ!」


 最近のレオン団長は気合が入っている。騎士団員たちから、鬼団長の称号を奪還したぐらいの勢いだ。リリアも、もちろん地獄の訓練に参加している。最近は、癒し手としての訓練だけでなく、騎士たちの訓練に混ざって同様の苦しみを味わえるようになった。


「「「リリアにだけは負けたくない」」」


(なんだかみんなにライバル視されてる?嫌われているわけではなさそうだけど)


 特にリリアが加わった班の騎士団員たちの熱意がすごい。何としてもリリアよりも早くゴールしたいと、地獄の持久走を全力で走り抜けた騎士団員たちが今だって死屍累々の状態で倒れこんでいた。


 身体強化を使っていいなら、リリアだって持久走で負けはしないだろう。でも、基礎訓練での光魔法の使用はレオン団長から相変わらず禁止されている。そうなると、全力で走ってもやはり最後尾の方になってしまうのが残念だ。


「リリアが参加していることに意義があるんだよ」


 ルード副団長は相変わらずリリアのフォローに余念がない。


(やっぱりルード副団長、いい人だ)


 まあ、ルード副団長も訓練担当のときは冷酷教官という感じなのだが。


 そんな訓練の最中、珍しく団長室からお呼びがかかった。汗をぬぐって着替え、リリアは騎士団長室の扉を叩いた。


「失礼します」

「入れ」


 その声は、似ているけれどレオン団長のものではなかった。一瞬にしてリリアに緊張が走る。


――――ガチャ


「よく来たなリリア。まあ、座れ」

「はい」


 今日も当たり前のように将軍閣下がリリアをソファーまでエスコートしてくれる。


(この父親に育てられたからレオン団長はああいう感じに育ったのだろうか。いや、木下くんもそんなところがあったからやはりもともとなのか)


 そんなことをぼんやりと考えているうちに、リリアはいつの間にかソファーに座らされていた。


「レオンには少し所用を申し付けて離しておいた。ところで、リリアはレオンと婚約するということで異論はないか?」

「はい。私はレオン団長が良いです」

「ふむ。しかし、困ったことに神殿と王家からの横やりが強くて難航しているんだ。そこで、今度の伯爵の襲名式でリリアとレオンの婚約発表もしてしまおうと思っている」


(そんな大事な話、なぜレオン団長抜きで行うのだろう)


「まあ、ここまでの話は前段階で、レオンの了解も得ている」


 リリアの表情から、そんな思いを読み取ったのだろう。ピーコックブルーの瞳は同じなのに、人間観察力は将軍閣下のほうがまだまだ上手だ。


「単刀直入に言おう。リリア……お前も落とし子だな?」

「……閣下。……も、というのは」


 将軍閣下はテーブルに両肘をついてすべてを見抜くような視線でリリアを見つめている。ピーコックブルーのその瞳の前では、レオン団長に見られているような錯覚を覚えて、リリアも虚実は言えなくなってしまう。


「これでも父親だ。レオンが落とし子というのはさすがに気づいていた」

「そう、ですか」

「リリアと出会う前のレオンは、死地を探しているようなところがあったからな。あの変わりようを見れば、お前たちに以前から親交があったことはすぐにわかった。だが、リリアの素性を調べても説明はつかない」


 落とし子は、以前にもいたのだとロンが言っていた。その落とし子は聖女であったとも。


「レオンだけではリリアのことを守り切れまい。その証拠に先日も死にかけた。」


 それを指摘されてしまえば、リリアだってレオンを守り切れるとは言い切れなかった。


「陛下も疑問に感じておられる。聡明な陛下の事だ。結論にたどり着くまでそうはかからないだろう。あまり時間がない」

「陛下に忠誠を誓っておられる閣下のお立場で……」


 そうリリアが言うと、ニヤリと将軍閣下が口の端をあげた。レオン団長が悪だくみする顔にそっくりなその表情。リリアの肌が粟立った。


「まあ、それは事実だが。リリアは俺の娘になるのだろう?それなら、何があっても守るさ」

「――――っ」


 危うくリリアはそのピーコックブルーの瞳に恋に落ちるかと思うほどときめいてしまった。いやいや、これは父性を感じてしまったときめきに違いない。絶対的な風格を持つ閣下から守るなんて言われたら、すべての女性が同じ感覚になるに違いない。


「リリアを口説くのはやめていただきたい。閣下」

「口説くとは心外な。だが、良いところで邪魔するとは無粋だぞ」


 あまりにときめいてしまったため、レオン団長が後ろに立っていることに気が付かなかった。だいぶ不機嫌な声のレオン団長は、将軍閣下の前ではやはり取り繕うことができないようだった。


「お前のそんな姿を見られるのは、本当にうれしいよ」


 閣下は意地悪な言い方をした。それでも、リリアには穏やかな光をたたえたその瞳が本当にそうだと言っているように見えた。


「さ、本題に入ろうか。奴らも陛下も出し抜くための下準備だ」


 レオン団長の伯爵の襲名式。やはり、何事もなくは終わらないだろう。そんな予感がした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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