2人は離れない
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「いい加減リリアを離せ」
「離している間にリリアに何かあったらどうするんだ。」
「レオンお前、さっきから回復魔法は効かなくなって、自己治癒能力もない中途半端な状態でまだまだ重症なんだぞ?!」
「いやだ!」
(耳元でうるさいなぁ……それになんだか狭い。暖かくて心地よいけれど)
あまり働かない思考の中、リリアは薄目を開ける。なんだか、ぎゅうぎゅう抱きしめられているようだ。
そっと目を開けると、バッチリ目が合った。
「リリア!よかったやっと目が覚めたか」
「レオン団長……私」
(なんで一緒に寝ているんだろう)
「ほら、離れろレオン。リリアが困惑してるぞ」
「そうだな。だが体が動かない」
「お前な。気を失ってる間もリリアを離さないし、無意識なのに近づくと攻撃しようとしてくるし、リリアの治療するの大変だったんだぞ?」
「すまない」
リリアはぼんやりした頭で順に思い出していく。
(聖女の儀式をして、襲われて、レオン団長が…)
「レオン団長?!怪我は!」
レオン団長が矢に貫かれた場所は、肝臓のあたり、明らかに大出血するであろう急所だった。
「ちゃんと生きてるよ」
「良かった」
今度はリリアがぎゅうっと抱きつく番だった。
「うぐっ」
「え?痛いの?!」
「…………なんともない」
笑ってみせたのはさすがとしか言いようがないが、冷や汗をかいている姿を見ると、明らかに嘘なのがバレバレだ。
リリアも身体中が痛かったが、全く動けないほどではない。回復魔法を誰かがかけてくれたようだ。
布団を捲ると、レオン団長の腹部には痛々しいほどに包帯が巻かれていた。まだ、右側の腹部の包帯は上までだいぶ血が滲んでいるし、顔色も悪い。
(さっき、回復魔法も自己治癒力もないって聴こえた。これは確かにしばらく動けなそう)
「でも、生きてる」
起き上がったリリアはペタリとレオン団長の頬に触れた。
「レオン団長が、死んじゃうかと思った」
「うん。俺も死ぬのを覚悟した……のに。運が良くて助かっただけだリリア。もう、あんな無茶するな」
「その言葉そっくりそのまま返します」
今更、身体中が震えてくる。一緒ならまだいい。でも、もし自分だけがまた取り残されたら。こんな時には七瀬の記憶が強く蘇る。
「私だけ残ったら、またあの色が消えた時間を過ごすんだよ。一人で」
「リリア、それでもリリアが危険な目にあっていたら、何度でも同じ選択しかできそうもない」
(それなら私も何度でも)
――――きっと生きている限り何度でもその手を繋ぎ止めて見せる。
ルード副団長が、ひとつ咳払いする。
「リリアも全身の骨折で危なかったんだから、まだ無理するなよ。レオンは少なくとも魔力が回復しなければ、まだ危ないんだから」
「魔力……」
「2人が寝てる間にテオドール殿下が来てくれたよ。多分、ポーションに加えてリリアの光の魔力を受けたことで、一時的に闇の魔力が中和されているんだろうと言っていたよ」
「テオドールには、大きな借りができてしまったな」
話し始めた二人を横目に、リリアはそっとレオン団長が寝ているベッドを降りて、大人しくレオン団長の隣のベッドに移って横になる。
落ち着いてきてみれば、この状況には赤面するしかない。
リリアが大人しく横になったのを確認したルード副団長がこめかみを押さえながら、またひとつため息をついた。
「それからリリア、聖女の儀式での出来事は、総力を挙げて秘匿した。だけど、あの時リリアとレオンから立ち昇った金色の光の柱。神殿の屋根を越えて空まで届くのを多くの国民が見てしまったんだ」
「えっ」
「大聖女の再来って言われてるぞ、リリア」
ルード副団長の言葉が、静かな部屋に響いた。
リリア回復のための一コマ
親衛隊グリーン「リリアを回復しようとしたら、レオン団長が意識ないのに斬りかかろうとしてくる!うわっ危なっ!!」
レッド「おい、レオン団長を全力で抑えろ?!」
ブルー「リリアを助けるため命をかけろ副団長イエロー!」
副団長イエロー「なんだよイエローって。とにかく早く回復魔法かけてくれ!」
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