聖女と傭兵
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三日後、その日は快晴だった。リリアはレースとパールがふんだんに使われた白いドレスに身を包む。
(いつから用意していたのかしら)
そのドレスはプリンセスライン。サイズは完全にピッタリでどう考えても時間がかかるはずのオーダーメイドだった。
「リリア、とても似合う。大聖女と言っても、誰もが納得する神々しさだ」
「相変わらず言い過ぎだよ」
レオン団長の褒め方は、相変わらず大袈裟だ。リリアの開いた胸元には、魔石のペンダントが光っている。その色は、ピーコックブルー。指輪も外さずにつけている。
「一緒にいけないけど、必ず守るから」
魔石にレオン団長がキスをひとつ落とした。見つめる瞳と同じ色の魔石。きっとリリアを守ってくれる。
「うん。いつだって信じてる」
リリアの右脚には、いつものポーチと愛剣を忍ばせている。これだけは、手放すことはできない。
「リリア、私もあなたを守るから」
「パール先輩、ありがとうございます」
「ふふ。そろそろパールって呼んでくれないかな?仲間でしょ、私たち」
「……パール。ありがとう」
今日のパールは、やはり聖職者を表す白いドレス。戦いを意識して、スカート部分はスリットが入っている。あからさまな帯剣は許されないため、ショートソードをやはり右脚に忍ばせている。
聖女の儀式のために、神殿に入っていく。ここからは、リリアとパールしか中に入ることが出来ない。
(久しぶりに来た。まさか、こんな形で戻ってくるなんて、あの時は思わなかったな)
「リリア。待ってましたよ?流石に美しいですね」
ジル大神官に出迎えられる。ここから既に儀式は始まっているのだ。
リリアが診断に通っていたときに、固く閉ざされていた祈りの間のさらに奥にある重厚な扉。今日は開け放たれている。
(なんだろう、この感じ……何かが呼んでいる)
目の前には、大きな聖杯があった。少しだけ暗い中、その聖杯は黄金に輝いていた。
「さあ、聖杯に手を触れて」
「はい……」
その瞬間、リリアの体から黄金の光が溢れ出した。光は次々と聖杯に吸い込まれていく。軽い目眩と脱力感を覚えたが、そのうちに光が収まった。
「素晴らしい。こんなに魔力が溢れた聖杯を見るのは、初めてです」
(これで、終わりなの?)
その時、殺気を感じた。リリアを目掛けて、雷を纏った矢がまっすぐ飛んでくる。
――――パァンッ
その矢は、リリアの目の前で弾かれた。
(反応が間に合わなかった)
レオン団長にもらったペンダントが、たった一撃で砕け散る。
(上級魔法でも何回か耐えられるって言ってたのに。今の矢、どれだけの魔力が込められていたの?!)
「リリア、守れなくて申し訳ない。下がって」
ジル大神官が、光の障壁を創り出す。続く矢は、その障壁に弾かれていく。
「パール!」
「リリア、下がって」
抜剣したパールが、身体強化を発動して前方へと走っていく。
「え?!どこからこんなにたくさん」
パールが向かった先には、10人以上の黒い服の傭兵らしき男たちが飛び出してくる。
いつのまにか、3人は囲まれていた。リリアも脚から剣を抜き去り、ドレスの裾を引き裂いた。
「動きが素早い。全員相当腕が立ちます。ジル大神官、援護ください!」
「リリア!」
(全力で行くしかない。特に中央の人とさっきの弓矢。強さが桁違い)
黄金の光をたなびかせ、リリアが戦いに臨む。ジル大神官の光の障壁が弓矢を防いでいる。
(でもさっきの聖杯に思ったより魔力持ってかれてるみたい。そんなに長くは持たなそう)
扉の外からも、剣を打ち合う音が聞こえてくる。リリアを聖女にしたくない人間は、神聖な場所で神をも恐れないようだ。
「か……はっ」
リリアの小さな体が、中央の男に吹き飛ばされた。
(今、意識を失っては……だ、め)
「リリア!」
レオン団長の声が聴こえた気がしたが、リリアの意識は闇に落ちていった。
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