2人の朝
前回シリアスだったので、今回はゆるくいきます。
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明るい日差しに目が覚めると、ベッドに寝ていた。なんだか、ハーブシトラス系の良い香りがする。
(レオン団長の香り。んー?ここどこ……)
寝起きがあまり良い方ではないリリアは、ぼんやりした頭で考える。
「膝、枕……」
急速に目が覚めて、途端にリリアの顔が朱に染まった。
(大胆なことをしてしまった!それにしても……)
いつのまにか、ベッドに運ばれていたようだ。一度眠ると眠りが深いリリアは、全く気づかなかった。やはり疲れていたのかもしれない。
「ドレスのまま寝ちゃったよ。あー、シワシワ」
リリアは、昨日休日に王宮に呼び出されたので、今日は非番にしてもらっている。レオン団長は休めない仕事があると嘆いていたが。
意外と広い騎士団長の私室。寝室のドアを開けると、なんだか甘い香りが漂っていた。
「おはよう、リリア」
何故か騎士服にエプロンをつけたレオン団長に出迎えられた。
「あ、うん。おはよう?」
「パンケーキ焼けたよ。起こしに行こうかと思ってたところ」
テーブルの上には、フルーツとクリームが添えられたパンケーキ。ヨーグルトとカフェオレ。
「……おいしそう」
「さ、食べて?」
小さなテーブルの向かいの席に座ったレオン団長がニコニコ見ている。
「あの、団長室ってキッチンあるんだね」
「そ。簡易的なのだけどね。たまに作るよ」
「朝は、レオン団長は食べないんだよね?」
「ん。食べさせてくれるなら?」
(しまった。これ、この前の続きだ!)
「ロ、ロンは……」
「さっきまで来てたけど、今度は取られないように先に食べさせたよ。先に女子寮に帰った。よく食べるよな、あいつ。……ん」
なんだか今回も口を開けたままレオン団長が待っている。
(こ、これはやるしかない流れ!?)
――――バーンッ
「「!!」」
――――ドンドンドン
団長室のドアが勢いよく開いた音と、私室のドアを叩く音がした。
「はあ、アイリーンか。分かりやすいな」
レオン団長がドアを開けると、大きめの袋を持ったアイリーンが立っていた。
「あら、リリア。その格好……?ざんねんだわ。レオンは本当に踏み込みが甘いわね」
「何しに来た」
「リリアの着替え持ってきてあげたの。このままじゃ帰れないでしょ?……あら、良い匂いね」
「くっ。アイリーンも食べるか?」
「ふふ。じゃあ、お言葉に甘えるわ」
アイリーンは笑顔になるとリリアの目の前に座り、そのままリリアの口元にフォークに刺したパンケーキを運んだ。
「はい。冷めちゃうわ。リリア、アーンして」
――――パクッ
「美味しい……!」
思わず食べてしまったリリア。しかし、ふわふわのパンケーキは口の中で溶けて消える。クリームの甘さも控えめで絶品だった。
「私にも食べさせて?」
――――パクッ
「ふふ。リリアに食べさせてもらうと、さらに美味しいわ」
口を開けてきたアイリーンに条件反射でリリアも食べさせてしまった。
「あら?悔しそうな顔。ふふっ。そろそろ仕事に戻るわ。レオンも休みじゃないんだから、仕事しなさいよ」
嵐のようにきて嵐のようにアイリーンは去っていった。再び2人だけになった空間に静寂が訪れる。
「解せぬ……」
レオン団長の心からの呟きが室内に響いた。
アイリーン「ふふっ。やっぱりまだ、だったわね。あの2人の焦ったい感じ。初々しくてたーのしいっ。」
アイリーンはスキップしながら出勤したのを、ルードに見つかり「隊長の品位に欠ける。」と叱られた。




