ドラゴンの親愛
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「ふふっ。楽しくなってきたわ」
出てきた白い虎の魔獣をまずは、アイリーンが踊るように倒す。一撃で勝負は決まった。
「隊長が指揮する前に突っ込んでどうするんですか!」
ゲオルグが、リリアを守る姿勢で叫んでいるが、アイリーンは聞こえないかのように魔獣を屠っていく。
だが、アイリーンが討伐するより早く、魔獣たちが押し寄せてくる。とにかくその数があまりにも多い。
「こんな沸くことあるのか?!」
(うわー。私のせいかもしれない)
リリアは、手の汗を拭って覚悟を決める。
「戦うと、決めた。もう守られるだけはやめるって約束した」
「え?何言っているんですか?!」
ゲオルグが止めるより早く、リリアは金色の魔力の尾を靡かせてすれ違いざまに魔獣を倒した。
「もう、迷わない!」
アイリーンの近くまで駆け寄っていく。その戦い方は、目に焼き付いている。
「私も、戦います」
「……強くなったのね」
アイリーンの剣は、円を描いて剣舞のように敵を薙いでいく。その横で、金色の軌跡を描きながら、戦うリリア。
ほんの一瞬、あまりに美しい2人の戦いを眺めていたゲオルグや騎士達も、雄叫びを上げその戦いに加わった。
「あー。リリアのやつ、確かに強いけど、ちょっと飛ばしすぎだ。慣れてないからなぁ。これじゃ、もう少し敵が増えたら持たないぞ?」
少し離れた位置で、戦いを見ていたロンが呟いた。
「まあ、隷属の魔法は、対象者がいなくなれば解ける。俺としては特に困ることない……けど」
あと少しのところで、急にリリアの動きが遅くなる。アイリーンが守りに入るが、それで余裕で押していた戦線が崩れかける。
「あー。言わんこっちゃない。……ちっ、リリア!」
✳︎ ✳︎ ✳︎
リリアの目の前に、美しいドラゴンが降り立つ。オレンジ色の体躯にほのかに輝く金色。
そこにいるだけでわかる圧倒的な強さは、見たものに畏怖を与える。
――――グオオオオオ。
ドラゴンが雄叫びをあげると、魔獣たちの動きがぴたりと止まった。
そこには、圧倒的な強者と弱者しか存在しない。
あるものは尻尾を丸め、あるものは耳を倒しながら魔獣たちが、洞窟の中へと駆け戻っていく。
「ちっ。こんな大物まで現れるなんて!」
アイリーンが、リリアを守ろうと立ちはだかる。
「まって!あの。あなたは……」
「リリアは、他のドラゴンの知り合いがいるのか?」
少し不機嫌そうな声色は、確かにロンだった。
「ロン。助けてくれて、ありがとう」
「ふん。ここで見捨てたら、地の果てまでレオンのやつが追いかけてくるだろうから。仕方なくだ!」
「えっ。ツンデレ尊い」
「……やっぱり普通に褒めてくれ」
「うん。すごくカッコよかったよ?」
ロンはそれを聞くと、リリアに背を向けてしまった。
(尻尾が嬉しそうに、揺れてるよ?)
「あらー。流石に将軍閣下に呼び出され案件よ?たぶん、リリアの初陣にあちらさん注目してるだろうし……」
「我々は、口を割ることはないですが、まあレオン団長ですら、本気でやってリリアに関する情報を握り潰す成功率五分って言ってましたからね」
アイリーンとゲオルグが、珍しくため息をついている。
(何やってるのレオン団長!?)
むしろそちらの方が衝撃的だったリリアだが、案の定、翌日には陛下のサイン入りの王宮への招待状がリリアの元に届いた。
個人的にはドラゴンのツンデレが一押しです。需要があるのかはわかりませんが……。




