癒し手前衛に
今回は、ある意味リリアの初陣です。
誤字というか、名前間違い修正ありがとうございます。いつもすみません…本当に助かります。
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「リリア、今日からは基礎訓練だけでなく騎士団の訓練に混ざれ。魔力の残量は意識しなくていい」
「え?いいんですか?!」
「……不服だが。おそらくトーナメントで8位をとったパールと戦ってもいい線いくだろう。参加させない理由がない。不服だが」
(不服って二度言っている……)
デートの翌日から、リリアは基礎訓練だけでなく騎士団の訓練に参加できるようになった。
「癒し手と言って侮ると、あっという間に追い抜かれるぞ。それでいい奴以外は死ぬ気で頑張るんだな」
リリアが参加する時に、レオン団長は団員にそんなことを言っていた。一瞬静まり返ったことでリリアの背中を冷たい汗が流れる。
(エリートの騎士達に失礼なのでは)
しかしそれも杞憂に終わった。
「「やってやるぜぇ!!」」
「「ついでに団長も打ち倒す!」」
「「リリアを我が隊に!」」
そのあと皆んなの雄叫びが響き、熱気が高まったのを感じる。
レオン団長の冗談と受け取ったのか不思議な叫びも多かったが、皆んなの士気は高まっていた。
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「さ、リリア。行きましょうか?」
「はい!アイリーン隊長と一緒で嬉しいです」
訓練には、調査や小規模な討伐など、依頼を兼ねた実践的な内容もある。リリアがどの隊に入るかは、だいぶ検討に時間がかかったようだが、今回はアイリーンの隊に入れてもらえた。
「ふふ。もちろん私もよ。団長と副団長不参加とはいえ、争奪戦勝ち抜くの大変だったんだから。親衛隊の奴ら、ここで新しい戦法をぶつけてきやがったし」
後半はよく聞こえなかったが、何か問題でもあったのかとリリアは顔を上げた。すると楽しそうに口元が綻んだアイリーンと目があった。
「え?」
「いいのいいの。ふふっ。さ、西の洞窟に出たという魔物調査、行きましょ?」
アイリーンの隊は、そのスピードから斥候の役目をすることも多く、団長の直属部隊よりもフットワークが軽い。このため、調査や先発隊に指名されることも多いと聞く。
「なあ、魔力がうまい魔物だったら頂いていいか?」
「今日は、調査だけだからアイリーン隊長に確認してからね」
「なんならぜーんぶ倒してやるのに」
ロンは小さい羽をはためかせながら、何故かここまでついてきた。
(この可愛い見た目からして、あまり戦力になりそうにはないけど?)
しかし、レオン団長に相談したら連れて行った方がいいと言っていたので、何かしら爪を隠しているのかもしれない。
「リリア殿。大丈夫ですか?」
「ゲオルグさん。大丈夫です。基礎訓練で鍛えられてますし、いざとなったら身体強化使うので」
アイリーンの隊に所属している騎士達は、隊長の性格に影響を受けているのか皆んな気さくだ。
「アイリーン隊長って、いつもあんな感じなんですね」
「……隊長はいつもあんな感じですよ」
チラリと見ると、また1匹リリアに引き寄せられたらしいはぐれスライムを倒している姿が見えた。
「リリア!また倒したわよー」
アイリーンはぶんぶん手を振っているが、ルード副団長がいない今、叱ってくれる人間はいないようだ。
一瞬、ゲオルクが疲労感を滲ませたが、余計な質問をしたリリアは、笑顔で誤魔化すことにした。
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調査する洞窟は、流石に薄暗かった。
「リリアは、魔物に狙われやすいから私の近くにいてね」
「はい」
道中のテンションからは信じられないほど、今のアイリーンは真剣な顔をしている。アイリーンなりに、仕事に対する線引きがあるようだ。
リリアの前に、パタパタと羽ばたきながらロンが出てくる。何かに警戒しているのか尻尾がピンと立っていた。
「おい。リリア、ここかなりの数の魔獣がいる」
「そう、なの?」
「しかもリリアの魔力の香りに惹かれてこっちに出てくるぞ」
「えっ?!大変!」
洞窟に入る前に、大量の魔物が飛び出してきてしまった。
(私……調査任務は向かないみたい?!)
次回、アイリーンが活躍してくれます。リリアの初実戦はどうなるのか?お楽しみに。
ゲオルグ「癒し手殿には指一本触れさせません!」
リリア「いや、そろそろ私にも戦わせて?」
アイリーン「まあ、ゲオルグはあの会の会員ナンバー、一桁だからね。」
リリア「なんの話ですか?!」
もちろん『リリア見守り隊』の話です。




