第一騎士団長の願い
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ふわりふわり。歩くたびにドレスのスカートが揺れ、すれ違った人たちが思わず振り返る。
「やっぱり目立ちすぎじゃない?このドレス??」
「まずい、リリアが可愛すぎて今回も王宮中の人間が恋に落ちる」
リリアは、別に騎士服でも良かった。あんなに贈り物をもらっては、逆に気が引けてしまう。
「あ、今回は受け取ったけど次あんなに贈ってきたら、もう一緒に買い物行かないからね?」
「うっ。悪かった。どれもこれも似合うと思ったらつい」
エスコートしてくれているレオン団長は、今日も騎士の正装だ。なかなか私服を拝む機会はないが、おそらく何を着ても似合うのだろう。
(いい。今度、私も山ほど紳士服を送りつける)
アイリーンとマダムシシリーに、声をかけよう。きっと喜んで相談に乗ってくれるに違いない。
私服に身を包んだレオン団長と、もらった服を着て歩いている姿をリリアは想像してみる。それだけでも、とても楽しい気分になった。
「リリア殿、レオン殿。お待ちしていました」
やはり爽やかな好青年という印象のディアス団長が2人を迎えに来た。
「まあ、招待したのはリリア殿だけだったのですが」
「団長として、貴重な癒し手を引き抜こうとでもされたら困るからな」
「レオン団長が、彼女にご執心という噂は、あまりに有名ですからね」
「……」
こんなところまで、噂が広がっているのかとリリアは項垂れた。
「しかし、この可憐さ、癒し手としての優秀さ。それも理解できるというものです。改めまして、リリア殿。第一騎士団団長ディアスと申します」
再びディアスはリリアの手に口づけを落とした。
(うわ。いつか読んだ物語の中の騎士が今ここに?!)
ディアス団長は、木下くんに貸してもらったラノベに出てきた騎士団長そのものだった。
(なんていう本だったかな。……あれ?何かが引っかかるような?)
ふと、視線を感じて見上げるとレオン団長と目があった。レオン団長は、いつも訓練中に見せているような少し冷たい印象の表情をしていた。
「……それで、ご用件というのは?まさか、リリアに会いたいがためだけに、王命まで使って呼んだわけではないでしょう」
「ここでする話でもない。部屋を用意してもらっている、行こう?」
今日も見えない火花が2人の間に散っているようだ。
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「急に呼び出して悪かったな」
案内された部屋には、将軍閣下が待っていた。
「このタヌキ……」
レオン団長が、呟いた一言にリリアは冷たい汗を背中に感じながら、聞こえてませんようにと願った。
「レオン、あまり機嫌が良くないようだな?単刀直入に言おう。リリアを一週間、第一騎士団に借り受けたい」
第一騎士団は、魔獣の討伐の他に災害からの復興も担っている。しかし、今回のドラゴンや飛竜発生の被害のせいで、癒し手の数が足りないそうなのだ。
飛竜討伐時の死者ゼロという実績や高い光魔法の能力から、リリアに打診が来たというわけだ。
(この世界の災害復興。参加してみたい)
そう思ったリリアが、レオン団長の方を見上げると、やはりその表情は冷たい印象の仕事中のものだった。
「依頼内容はわかりました。ところでこれは、命令なのでしょうか?」
「……第二騎士団としても、癒し手が貴重なのは理解している。選択権はそちらにある。明日までに返事をもらえるか?」
「そういうことでしたら。……明朝返事させていただきます。これで失礼しても?」
「ああ、良い返事を待っている」
リリアとレオンは、王宮を後にした。
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帰りの馬車の中、レオン団長は下を向いて、何かを思案しているかのように黙っていた。一緒にいるのに珍しい静かさに耐えられずリリアが口を開いた。
「レオン団長?」
「……リリアは、行きたいんだよな?」
顔を上げたレオン団長が、ポツリといった。
「迷ってる」
そこでようやく、レオン団長がいつもの微笑みをリリアに向けた。
「行って来たほうがいい」
「え?」
「今回の依頼はリリアのやりたいことなんだって、顔に書いてある」
そんな顔していただろうか?とリリアは思う。
でも、木下くんと同じ大学か、看護学部のある大学に進むかで悩んでいたときにも、やはり木下くんは背中を押してくれた。
いつも過保護で、リリアや七瀬を大事にしすぎで、時々引いてしまうほどのことをやらかしてしまう、木下くんとレオン団長。
それでも、ここぞという時、絶対背中を押してくれる。
(……やっぱり、好きだな)
リリアはそんなふうに、自分の気持ちを再認識した。
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