2人の距離感
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「レオン、お前リリアと何があった」
昼下がり、団長室でレオン団長はルード副団長に詰め寄られていた。レオン団長は、顔を下に向けたままボソボソと呟いた。
「リリアに、俺には回復魔法が効かないことを気付かれた」
「は?……バレてからの展開は大体想像ついたけど、むしろ今まで何で言ってなかったんだ」
「リリアが気にして距離取られたらとか、泣かれたらとか考えると、な」
「そういうのって、大概逆にややこしくなるんだからな?!」
レオン団長は、机に突っ伏して呟いた。
「……よくそれで泣かれたから知ってる」
その様子を見ていた、ルード副団長が短くため息をついた。
「今度久しぶりに飲みに誘うか」
時々情けないところがある騎士団の同期とは、昔から良くそうやって飲みに出かけていた。
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白い壁と、赤やピンクの可愛らしいもので埋め尽くされた店内。リリアの目の前には、小さなケーキがいくつもお皿に盛られ、フルーツの香りの紅茶が湯気を立てている。
赤い髪の色気を感じる美女が、金髪と青い目をしてお人形のように可愛らしい少女とその店で隣り合って座っている。
「ね。レオン団長となにがあったの?パールも心配してたわよ?」
「レオン団長が、回復魔法が効かないっていうこと、知らなくて……」
「……そう。あいつ、まだ言ってなかったのね」
リリアの大きな目からボロボロ涙が溢れてくる。
「これ、使いなさい」
アイリーンが差し出したハンカチには、紫色の小さな花が刺繍されていた。素朴な印象のハンカチはアイリーンの持ち物にしては少しそぐわない。しかし、その事を聞いてみる前にアイリーンに優しく涙を拭われてしまった。
「それ、リリアにあげる。今日は、私とこのまま出かけましょう?1人で悩んでいても、事実は変わらないわ」
アイリーンが連れて行ってくれた店は、どこもあまり行ったことがない大人の女性の雰囲気があるお店ばかりだった。
リリアは、淡いピンクの口紅と、今まで買ったことのないセットの可愛い下着をアイリーンにすすめられるままに買った。
そしてリリアは次の日、淡いピンクの口紅をそっと塗りながら、一つの決意をした。
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リリアは、団長室の前で深呼吸をすると、覚悟を決めてドアを叩く。
ここ数日間、気まずかったり、顔を見ると泣いてしまいそうになるから、任務に必要なこと以外ではレオン団長を避けていたという自覚はある。
普段だったら、リリアの様子が少しでもおかしいとすぐに距離を詰めてくるレオン団長も、今はそっと見守っているようだ。
「リリア?」
書類に目を通していたレオン団長が顔を上げたが、リリアの決意を宿した瞳に、予想外のものを見たかのように瞠目した。
「レオン団長。私、この世界の医療をもっと先に進めることにします」
「……いつも想定を超えた答えを持ってくるね」
「ごめんね。避けていて。でも、今度から私が泣いちゃうとしても、あんな秘密はなしにして欲しい」
「リリアが、そう望むなら」
でも、リリアは分かってしまう。そう言っても、レオン団長は、リリアが泣いてしまうようなことはこれからも出来ないのだろう。たとえそれで自分が傷ついても。
そんな優しさはうれしくない。木下くんにも、よくそれで七瀬は逆に泣かされた。
だけど、それで泣くのも終わりにする。と、リリアは心に決めた。出来ないことばかり見つけても前には進めない。
久しぶりに夢を見た。教室で七瀬が笑っている。その横には木下くんがいた。2人は何かを話し合いながら、楽しそうに笑っていた。
七瀬「昨日のドラマ見た?あんな看護師にあこがれる。」
木下くん「七瀬ならいい看護師になるんだろうな。」
クラスメートたち「相変わらず仲いいなあいつら。あれで付き合ってないとかウソだろ。」
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