85・逆襲開始です
「な、なんだお前は!? どこから現れた!」
「おい、ちょっと待て……この魔力、もしかしたら……」
二体の魔族が慌てているうちに、
「つまらん」
ドグラスが拳で二体をあっという間に吹き飛ばす。
魔族はそのまま壁に叩き付けられ、気を失ってしまった。
「エリアーヌ。無事か?」
「ええ」
いつもに増して、ドグラスが大きく見えた。
「あまりゆっくり話している時間はありません。ここにいる魔族は他にもいるそうですし……」
こうしている間にも、複数の足音がこちらに近付いてくる。
異変に気付いたんでしょう。
ですがもう遅いのです。
「ドグラス。ここがどこか分かりますか?」
「うむ。そう街から離れていないな。ナイジェルにもこのことを伝えた。騎士団を率いて、直に合流するだろう」
良かった。
念話が届く範囲でしたから、遠い場所ではないと思っていましたが……それだったら問題なしです。
「私はラルフちゃんとすぐに精霊の森に向かいます。ドグラス、ここを任せてもいいですか?」
「無論だ。最近運動不足だったからな。丁度良い」
ドグラスが肩を回す。
そして私の後ろにいるラルフちゃん、そして子どもとそのお母さんにも目を向け……。
「その二人は?」
「この方も魔族に捕われた人達です。守りながら戦うことは可能ですか?」
「ガハハ! 無論だ。魔族とはいえ、相手は下級のようだしな。鼻歌混じりでも突破することは出来る」
ドグラスの力は強大だ。魔族達も私が彼を召喚出来るとは思っていなかったんでしょう。
「しかし……問題は遠くから監視するような魔力も感じる。こちらの異変に気付いて、なにか仕掛けてこないとも限らんぞ。援軍で上級魔族が来た場合、我でも少々手こずるかもしれん」
「それについては大丈夫です」
ドグラスの言うような魔力は私も感じていた。
どう対処しようかについても考えている。
「これを置いておきましょう」
私は先ほどまで閉じ込められていた牢屋に手をかざし、とあるものを作り出す。
それは私と瓜二つの人形。
「ほう……分身か。まあ少しの間なら、これで誤摩化すことは出来るだろう」
ドグラスが感心する。
ロベールさんにも披露した私の分身である。
とはいえ一人でに動くなんて真似は出来ないけれど……目くらまし程度なら十分でしょう。
「ここは今は使われていない、古ぼけた塔の中らしい。あそこの窓から飛び降りれば、すぐに外に出ることが出来るだろう」
大きい窓を指差すドグラス。
私はそこから下を見るが……地面までは遠い。ドグラスはそう言っているものの、私一人で飛び降りればただでは済まないでしょう。
だが。
「ラルフちゃん。私を乗せて、ここから飛び降りられますか?」
『可能だ。やっとラルフのカッコいいところが見せられるな。ラルフを信頼しろ』
ラルフちゃんが私の前に立つ。
ちょっと怖いけれど……そんなことを言っている場合ではない。
そうこうしている間に、他の魔族達も私達のところに雪崩れ込んでいた。
「ではドグラス! あとは任せましたよ!」
「うむ!」
私は最後に子どもとお母さんに「この人と一緒にいれば大丈夫ですから」と言い残し、ラルフちゃんに乗った。
「おい、あの女を絶対に逃がすな!」
「バルドゥル様にあとでなにを言われるか分かったもんじゃない!」
魔族が私を捕まえようとするが、ドグラスがその前に立ちふさがる。
「我に構うな! 早く行け!」
「ラルフちゃん! ゴーです!」
「わおーん!」
ラルフちゃんが声を上げ、窓から飛び降りる。
ふわっとした浮遊感。だんだん地面が目の前に迫ってきた。
だけどラルフちゃんはすたっと地面に着地。私には着地の衝撃すら襲ってこなかった。
塔の外に出て、すぐさま探知魔法を発動する。
探知魔法はあまり得意ではなかったので、魔法を阻害されている塔の中では発動することが出来なかったのです。
するとドグラスの言った通り、ナイジェル達のいる街からあまり離れていないことが分かる。
街からここまでの道のり。そして精霊の森までの道を計算して……うん。これでしたら、近くの村まで行けばナイジェルと合流することが出来るでしょう。
まずはナイジェルと合流することが先決。
私一人では、魔族相手に戦うのはちょっと厳しい。
「ラルフちゃん! ここから東に向かってください!」
『心得た!』
そのあと私の目論見通り、騎士団を連れて精霊の森に向かっているナイジェルと合流出来た。
「エリアーヌ!」
ナイジェルが私を抱きしめる。
離れていた時間は少しだけ……でも不思議とこうされていると、なんだか泣きそうになってきます。
ですが。
「ナイジェル。ドグラスから聞いているかもしれませんけれど、精霊さん達が大変みたいです」
「うん、そうみたいだね」
ゆっくり再会の余韻を味わっているわけにはいきません。
「すぐに向かいましょう」
『ラルフに乗れ。そちらの方が早いだろう』
とラルフちゃんがナイジェルに背中を向ける。
その意図を汲み取ったのか、
「そうさせてもらうよ。じゃあアドルフ……まずは先にエリアーヌと精霊の森に行くよ。あとから追いかけてきてくれるかな?」
と後ろにいる騎士団長のアドルフさんに指示を出した。
「分かった。しかし大丈夫なのか? 相手は魔族なんだろう。お前とエリアーヌだけで……」
「大丈夫。前のアルベルトの時を忘れたのかな? エリアーヌと一緒なら、どんな相手でも倒せる」
「それもそうだな。お前等のことを信頼しているぞ」
女神の加護が完全に適合しているナイジェルと一緒なら、たとえ相手が上級魔族でも負ける気はしない。
私とナイジェルはラルフちゃんに乗って、精霊の森に急いだ。
◆ ◆
——そして精霊の森に到着して。
「せいじょー!」
子ども精霊のアルとマーズが私達のところへ駆け寄ってくる。
「むらがたいへん!」
「このままじゃ王がしんじゃう!」
「はい。なにが起こったか、全て分かっていますよ。すぐに助けに行きましょう」
アルとマーズはパニックになっているみたい。
怖くなって、村の外まで出てきたんでしょう。
私達はアルとマーズに結界を解いてもらい、急いで村の奥へ向かう。
すると中央広場にフィリップ、そして魔族らしき女?(男にも見える)が対峙していた。
「もちろん、他の精霊達にも遊んでもらうわね」
「……わ、分かっ——」
フィリップが魔族の条件を呑もうとした時——。
「その必要はありません!」
二人の前に私達は躍り出たのです。
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