65・上級ポーションは超級でした
フィリップから貰ったサビた剣は、一旦ナイジェルに預けることになった。
「ボクにはただのサビた剣にしか見えないけど……精霊達に代々伝わってきた剣だ。大事に保管させてもらうよ」
とナイジェルは言っていた。
彼に任せておけば、まず間違いないでしょう。
そんなある日、私とナイジェルは魔法研究所に呼び出された。
なんでしょう?
「ロベールさん。それとナイジェルまで」
所長室に行くと、所長のロベールさん。それとナイジェル王子が大量のポーションを前に立っていた。
「エリアーヌ様に作っていただいた上級ポーションについて、お話がありました」
ロベールさんはそう話を切り出し始める。
ああ、ポーションですか……。
この時の私はすっかりポーションに対する情熱をなくしてしまっていた。
いきなり薬師としての極地に辿り着いてしまったのです。
昔から、なにかをやり遂げると飽きる性分でしたし……私、飽きっぽいのでしょうか。
「確か備蓄するのと、残りは商人に流すだとか……」
「はい。とはいっても今まで上級ポーションを量産したり、効果を正確に計らなければなりませんでしたからね。値段を付けたり、商人を探す暇がありませんでした」
「ああ、そういうこと……」
「エリアーヌ。あまり興味がなさそうだね?」
私がロベールさんと喋っていると、ナイジェルは不思議そうに首をかしげた。
「そんなことありません。わたし、ぽーしょんづくりがだいすきですもの」
「随分棒読みに聞こえるけど……」
ナイジェルにじっと見つめられていたら嘘を見透かされてしまいそうだったので、さっと視線を外す。
「それで……上級ポーションの効果についての研究内容を発表いたします」
固唾を呑む……というのは嘘だけど、変にロベールさんが溜めるものだからつい前のめりになってしまう。
『上級ポーションだと思っていましたが、間違いでした!』
と言われないだろうか……。
また「すごい、すごい」と騒がれるのは、嫌な気分にはなりませんが、なんだか落ち着きませんし。
しかし私の期待は裏切られることになった。
「おめでとうございます。この上級ポーションはまさしく上級ポーションに位置づけされるものでした」
……ですよね。
そう言われるのはなんとなく予想が出来ていた。
だが、それだけではなかったようで……。
「しかも上級ポーションの中でも、さらに優秀な部類に属することが分かりました。超級ポーションとでも呼びましょうか」
話がさらに大きくなっていた。
「わー、うれしー」
「やっぱり棒読みじゃないかな!?」
ナイジェルがツッコミを入れるが、今の私は虚無だ。嬉しいも悲しいもなにもない。
「でもエリアーヌはすごいね。治癒や結界だけじゃなくて、ポーション作りも一流だったなんて」
「いえいえそんなことありませんよ」
虚無の目でナイジェルに言う。
ロベールさんが話を続ける。
「そしてもう一つ。この超級ポーションの今後ですね。前にも言っていた通り、いくつかは商人に流そうと思います。それでよろしいでしょうか?」
「はい。ロベールさんの好きにしてください」
ここにナイジェルがいるということは、そのことについてもう話し合いが済んだということでしょうからね。
私個人としては値段はあまり重要ではない。
原材料は水なだけだし、いくら精霊達に対価を支払っているとはいえ、なんならタダでもいいくらい。
しかしここで適切な値段が付けられなければ、他の品物が値崩れを起こしてしまう可能性がある。
タダは素晴らしいことだけれど、決して全てが美徳なわけではないのです。
「それで……商人に流す時の値段はこれで……」
私がロベールさんから聞くと、その値段に思わず私は目が飛び出てしまいそうになる。
「こ、こんなに!?」
「はい」
ロベールさんは表情一つ変えずに言う。
彼から聞いた値段はそれこそ、超級ポーション一つで家が建つくらいの破格なものであったから。
「そんな値段で売れるんですか?」
「これでもお客が殺到すると思いますけど? それに信頼の出来る何人かに声をかけると、すぐに手が挙がりました。なんなら少し安いくらいだと思いましたが、ひとまずこれで一旦様子を見ます」
いくら超級とはいえ、ポーション一つだけなのに大丈夫なんでしょうか……。
これを買うのは貴族ではなくて、冒険者が中心になりそうですからね。
貴族ほど資金的に余裕がない彼等にとって、たかがポーションにとても手が出せない値段だと思いますが。
まあ、あまり売れすぎても需要に追いつかないでしょうし、これくらいが適切なのかもしれませんね。
——しかし私はこの時甘く見ていた。
私が作っていたポーションは、自分が考えていたものより遥かに優れたものだったことを。
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