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62・精霊さん達にもう一度会いに行きましょう

 あれから。

 上級ポーションについては、ロベールさんとナイジェルが話し合った結果、ひとまずいくつか騎士団の方で備蓄し、残りは信頼の出来る商人に流すことになったみたいだ。


 それが決まってから、ナイジェルとこんなやり取りをした。



「エリアーヌ。頼みがあるんだけど……」

「はい、分かりました。定期的に魔法研究所に行って、ポーションを作る手伝いをさせてもらいますね」

「助かるよ。エリアーヌには頭が上がらない。嫌になったらすぐに言ってくれればいいんだからね」

「そんなことありません……私も人のお役に立てることは嬉しいですので」

「そ、そうかい。でもどうしてそんなに表情が暗いんだい?」



 だって私の理想としていた薬師像とはかけ離れていますもの!

 薬師はもっと……なんというか、ゆっくり時間が流れているようなイメージだったのです。

 それなのにいきなり上級ポーションを作ってしまうだなんて……私の中の薬師像からはほど遠い。

 だけど人のお役に立てることは素直に嬉しいことだ。気を落とさず頑張りましょう。


 というわけで、研究所に行っては上級ポーション作りの手伝いをする日々を送っていたけれど——ふと思い立った。


「そろそろ精霊の村にもう一度行って、料理を振る舞いましょうか」


 とある日。

 ラルフちゃんに鰹節をあげながら、私はそう声に出した。


『うむ、そういえば精霊達と取引したそうだな。相変わらず聖女はスケールが違う』

「はい。まあ取引だなんて大層なことではないと思いますが……」

『精霊から物資を貰う代わりに、聖女が料理を作るのか……うむ。妥当な取引ではないだろうか』


 ラルフちゃんはキリッとした顔で言った。


「ポーション作りで忙しかったですが、それも落ち着いてきましたし良い機会だと思いまして」


 前々から少しずつ作っていた()()もようやく完成した。

 きっとフィリップ達も気に入ってくれるはずだ。


 とはいえ森までは馬車で三日はかかる。また長旅になるので、ラルフちゃん達には留守番をお願いしなければならない。


 そう考えていたら……。


「ほう、なかなか面白い話をしているではないか。我も混ぜろ」

「きゃっ!」


 後ろから急に声が聞こえたので、反射的に悲鳴を上げて私は振り返る。


「ドグラス! 気配を消して、急に話しかけるのは止めてください! ビックリするじゃありませんか!」

「ガハハ。良いではないか。エリアーヌは相変わらずびびりであるな」


 ドグラスが愉快そうに笑った。


「前にも聞いたが、精霊共と知り合いになったみたいだな。ドラゴンの我とて、精霊はなかなか会えぬ存在だ。久しぶりに会ってみたい」

「まあ……それは別にいいんですが……」


 その間、国を守る役目は誰に任せればいいんだろう?


 私の心配を先読みしたのか、


「なに、心配するではない。ナイジェルに話はつけてある。我がいない間は、あの男がしっかり国を守っておくということだ。それに元々この国は我とエリアーヌがいなくても、比較的平和であったからな。唯一の脅威は王国だったそうだが……あやつ等はそれどころではないだろう。安心するがいいぞ」


 と腰に手を当てて言った。


「話はつけて……って、さては最初から精霊の森まで出掛けるつもりでしたね?」

「細かいことは気にするな」


 自信満々のドグラスの顔。


 でも彼の言うことにも一理ある。


 それに防衛のためだからといって、ドグラスをこの国にずっと閉じ込めておくのも可哀想だろう。

 これでは王国が聖女の私にしてたことと同じことをしているのだから。

 別に私がこの国を離れるからといって、結界が消滅するわけではないですし、考え過ぎでしょう。


「分かりました。では今回はドグラスと行きましょうか」

「決定だな」

『むふー、ラルフは今回もお留守番か』


 ラルフちゃんの尻尾が悲しそうに垂れ下がった。


「ラルフちゃんも一緒に来ます?」

『なあに、問題ない。それにドラゴンと神獣であるラルフが一緒に行けば、いくらなんでも精霊達も驚くだろう。彼等は元来、臆病な性格なのだ。それにエリアーヌがいなくてもラルフは寂しくないぞ』


「寂しくない」って……そういう顔には見えないが……。

 まあラルフちゃんがそう言ってくれるなら、悪いけど留守をお任せしよう。


「少し用意をしますから……ドグラス、手伝ってくれますか?」

「おう」


 いくつかのものを持っていくために、ドグラスに収納魔法を使ってもらった。

 こんなすごい魔法を、ちょっと大きいバッグに詰め込むような感覚で使うのもどうかと思いますけれど……細かいことは気にしないのです。


「では行きましょうか」

()()()

「任せろ……? えっ?」


 馬車を用意してもらおうと思ったら、急にドグラスが私をお嬢様抱っこする。


「な、なにをするおつもりですか!?」

「前みたいに我が汝を抱えて走った方が早いだろう。ドラゴン形態になってもいいが、あれは加減が付かん。街が騒ぎになっても億劫だしな」


 ドラゴンが現れた!

 なんて目撃情報が多くなれば、みなさんを慌てさせることにも繋がりますからね。


 でも……今はそういう問題じゃない!


「ば、馬車でゆっくり行きましょう! 急ぐ旅でもありませんので!」

「なにを遠慮しているのだ。それにゆっくり行くなど我の性分ではない。すぐにその森に到着するだろうから、寝ておくとよいぞ」


 私の反対意見を聞かず、ドグラスは勝手に走り出した。


 は、早い!

 それにドグラスに抱えられていて、胸の鼓動が早くなる。

 こうなるのが分かっていたから、前はドグラスに頼まなかったのに!


 ドグラスの言った通り、途中で休憩しながら向かっても村までは半日もかからなかった。


 けれど……当たり前ですが、寝ることは出来ませんでした。

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