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37・宝石店に入るとそわそわする

「次はどこに行こうか」


 喫茶店を後にした後、私達は市内をぶらぶらと歩き回っていた。


「うーん……私、まだリンチギハムに来て日も浅いですし、よく分かりませんわ。ナイジェルのオススメのところをご紹介していただければ嬉しいです」

「だったらショッピングでもする? オススメのお店をいくつか紹介してあげるよ」

「是非お願いします」


 ナイジェルの後をついていくと、とある宝石店の前で立ち止まった。


「もしかしてここですか?」

「ああ、よく来させてもらうんだ」


 なんかすごい高そうなお店なんだけど!


 王国にいる頃はほとんど給金を渡されていなかったので、貧乏気質が抜けきらない私。

 でもナイジェルはなんでもなさそうに、自然な動作で宝石店に入っていった。


 私もすぐその後を追いかけた。


「いらっしゃいませ」


 外観から予想していた通り、店内には高そうな指輪やネックレスが置かれていた。


「とても高そうですわね」

「まあほとんど買ったことはないけどね。国庫をあまり無駄遣い出来ないからね」


 とはいえ第一王子ともなれば、他国の要人と出会うのにみすぼらしい格好で行くわけにはいかないだろう。

 だから彼がこういうお店を知っていても不思議ではない。


「でもこうやって見ているだけでも楽しいだろう?」

「は、はい」


 やっぱり私だって女の子だ。こういうキレイなものには憧れる。


 だけど……。


「値札が付いていないようですが?」

「それは店主に聞かないとダメなんだ」


 あー、これって! 値札なんか見ずに良いと思ったら買うパターンだ!

 つまり値段なんか気にしないほどの、お金持ちしか来ないってこと!


 こんな高いもの、うかつに触れることすら出来ませんわね……間違って床に落としてしまったら、大変なことになりそうだし。


「どうしたの、エリアーヌ。なんかすごく緊張しているみたいだけど」

「そ、そんなことありませんわ!」


 嘘だけどね!

 足が震えているのが、自分でも分かるけどね!


 でもそんな私の様子を見て、ナイジェルは首をかしげた。


「これなんかどうだい?」


 棚に置かれていた指輪を、ナイジェルはひょいっとつまみ上げた。


 なんと危ないことを!


 私が内心ハラハラしていることも知らずに、ナイジェルは続ける。


「君に似合うと思うんだけど……」

「え、ええ。似合うかどうかは分かりまんせんが、とてもおキレイですわね。女性として憧れますわ」


 ふと、ナイジェルに指輪をはめられている自分の姿が思い浮かんだ。


 ……って、私はなにを考えているんでしょう!?

 これじゃあまるで婚約指輪を選んでいるようではありませんか。


「ふむふむ……エリアーヌはこういう指輪が好きか」

「ナイジェル?」


 なにか考え込むように呟いているナイジェルを呼ぶと「な、なんでもないさ」とさっと彼は指輪を元の場所に戻してしまった。


 ナイジェルにしては少々慌ててたみたいだけど? 

 なにを考えていたんだろうか。


「うー……でもなんだか落ち着きませんわね」 


 見るのは楽しいけれど、こんな高いものに囲まれていたらそわそわしてしまう。

 やっぱり私にはこういうお店は似つかわしくないんだ。

 ナイジェルには悪いけど、そろそろ退店しよう。


 そう思ってナイジェルに話しかけようとすると、


「あれ?」


 とあるものが目に入る。


「おっ、お嬢様。お目が高いですな」


 私のそんな反応に、宝石店の店主が近寄ってくる。


「これは……」

「ええ、最近仕入れたネックレスなんですよ。とても良い宝石が使われているでしょう?」


 確かに店主が言った通り、このネックレスに付けられている宝石は見るからに高そうだ。

 社交パーティーなんかでこれを付けていけば、一躍注目の人になれるだろう。


「うん。確かに良い品だね」


 ナイジェルも覗き込んでくる。


「さすがは殿下の連れてきた女性。良い宝石を見極める眼も持っていますな」


 店主が親しそうにナイジェルと会話をする。

 当たり前かもしれないけれど……彼がこの国の王子殿下であることは、承知の事実らしい。


「最近仕入れたっていう話だけど?」

「ええ。最近リンチギハムに新しい商人が現れましてな。よく取引させてもらっているんですよ」

「新しい商人?」


 ナイジェルの眉ねがピクリと動く。


「はい。身分は詳しく明かさないのですが、持ってくる品は確かなものです。それにそれほど高い金額を吹っかけてきたりもしません。なので私以外にも、最近ではその商人と取引しているお店も多いんですよ」

「そうなんだね」


 ナイジェルは店主の話を聞き、頷いている。


 宝石のことはよく分からないけれど、ナイジェルと宝石店の店主が言うほどだ。

 もの自体は良いものなのだろう。


 だが。


「あの……落ち着いて聞いてくれますか?」


 私が言うと、二人は「ん?」と顔を向けた。


「このネックレス、すぐに手放した方が良いでしょう」

「どうして?」

「ネックレスに『呪い』がかけられています。しかもかなり強い」

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